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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第124話 救済の英雄

お久しぶりです。長らくお待たせして申し訳ありません。ある程度忙しい時期が過ぎたので、本日から更新頑張れたらと思います。

 暗い意識の中、俺は暗闇の中へと落ちていく。


 ゆっくり、ゆっくりと、意識と共に落ちていく。


 気付けば、俺は立っていた。緑広がる花畑の上に。


 風が吹いて、髪を揺らす。


 まるで、その風と共にやって来たかのように、風が吹いて来た方向には龍がいた。


 炎を纏った赤い龍は、人間の言葉を話し始める。


「色々あったようだな」


 色々あり過ぎて、俺はもう疲れた。もうこのまま、静かに眠りたい。


「本当にそれで良いのか?」


 それはつまり、俺を待つ者がいると? 確かに俺は沢山の人に出会い、触れ合い、仲を深めてきた。だがらって今更、なんだって言うんだ。アレは"幻想"だったんだ。"夢"でも"幻"でも、そんな話はなかったんだ。


「なら、我はなんだと申す? 現にお主の体に宿り、お主の力となりし者。この他置いて、なんと申すか?」


 お前の事は、俺がよくわかってるさ。そして俺の事も、お前がよく知ってる。お前だって思っていただろう。俺の体は何かがおかしいとな。


「ふむ、確かにそうだ。日に日にお主の体から、違和感を感じ始めていた。ただの人間では無いとな。そして、あのニュクスとやらに出会ったとき、確信した。お主は人間ではない(・・・・・・)と」


 ——やっぱり、そうなんだな。俺はただの人間じゃない。造られた人間——人造人間。それも、自分が造られたとは知らなかった。これも、奴の仕業なのだろうが。


 これは俺自身に違和感を持たせない為だったのだろう。No.003というのも辻褄が合う。奴は試行錯誤を繰り返し、初めはある程度の記憶を持たせていたのだろうが、それは良くなかった。そして、俺には造られた時の記憶だけを抜き、人間としての知能を導入し、まるで普通の人間同様にしたのだろう。


 ニュクスが俺を妖夢に殺させたのは、混沌と絶望に陥れるためだったんだろうが、生憎俺は深淵に落ち過ぎた。だが、奴は俺の力を奪おうとするだろう。現に力が抜けていくのを感じている。


「——幻真よ、お主に選択をしてほしい」


 なんだよ今更。俺はもう終わったんだ。これ以上、何ができるって言うんだ。


「できる。"救済"と"永遠"……どちらかを選べ』


 救済と永遠だと? 一体なんの選択なんだ?


「感じ取れ、そして選べ。お主の歩む道を」


 俺の、歩む道……


 お前は、一体——




「我が名は古龍(エンドラ)。偉大なる龍なり——』








 現在、狼とフランドールはある者たちの捜索のために謎の空間内を駆け回っていた。そして彼らは、一人の人物を発見する。


「ニック、無事だったんだね」


 狼の言葉に反応する、彼が話しかけた人物——ニック。彼はどこか雰囲気が変わった狼を見て、問いかける。


「貴方から以前とは段違いの気を感じます。それより、私を探していたのですか?」


「うん。通信(テレパシー)は使えなくなってたし、本当は幻真たちを探している途中だったんだけどね。で、君は一体何をしていたのかな?」


 質問を投げかけられたニックは、戸惑いを見せる事なく、真実を述べた。


「虚飾の阻止……ですかね。貴方もお察しだろうとは思いますが、堕天使ルシファーは明らかに何かを企んでいる。虚飾の人形(・・)を使って」


「違う。僕が聞いていることはそれじゃない。君は一体、何を企んでいる?」


 フードでニックの表情がイマイチ見えなかった狼だったが、その口元だけ、少し緩んだのが彼の目に映った。


「何も企んでなんていませんよ。私はただの魔導師(・・・)なんですから」


 彼はそう言って、その場を立ち去った。狼は追いかける事なく、ただ彼の後ろ姿を眺めているだけだった。








 幻真の形見である真神剣を納める妖夢。その様子を、時龍は悲しそうな表情で見ていた。一方で、霊夢と喜響は怪我人を背負って、和正たちが待機する空間の出口へと向かおうとしていた。その時、彼らは大きな殺気を感じ取る。


 臨戦態勢を取った妖夢と時龍。彼らの目前には、見覚えのある人物が立っていた。その人物は彼らより一回り体が大きく、灰色の炎を纏い、更に殺気に満ちていた。


「この人はいったい……」


 何も知らない妖夢は、率直な感想を漏らす。先程この人物を目にした時龍は、言葉が出ずに冷汗を流していた。それもそのはず。あまりにも雰囲気が変わりすぎていたからだ。


 その様子を見た喜響は、肩を貸していた想起を直ぐに横に寝かせ、時龍たちの方へと向かう。先程の過ちを繰り返さない為に。


 その人物は拳を握り、そして振り上げる。足が竦んで動けない二人は、その猛威に振るわれようとして咄嗟に目を瞑る。しかし、何も起こらなかったが、何かがぶつかって壁に飛ばされた音が聞こえた。その方向には、先程動いた喜響が崩れた壁の下で倒れていた。


「喜響!」


「他人の心配より自分の心配をすることだな」


 その言葉を聞き、気付いた時には時龍はどこからともなく出現した大量の剣に串刺しにされていた。血が噴き出し、またその血は飛び散り、辺りを真っ赤に染めていく。



 ——このままでは全員殺されてしまう。



 そう悟った妖夢は意を決し、己の形見に手を掛ける。しかし、彼女は剣を抜くことができなかった。膝は酷く震え、立っているのも儘ならない。その様子に、仲間を葬った人物は失笑する。


「話にならんな。直ぐに楽にしてやる」


 伸ばされる腕。彼女の体は、その悪魔(・・)の大きな手によって握られ、徐々に強く握られていく。彼女は苦しみ、叫び、痛みを感じる。死に恐れ、溢れ出るのは己の涙。彼女は声を出すことすら叶わなくなった。


「終わりだ——」


 最後の一握りと、力を込めようとしたその時、突如として悪魔の腕は何者かによって斬り落とされた。


 解放された妖夢は、酷く咳き込んだ。そして、状況を理解しようと辺りを見渡す。目の前にあるのは、先程自分を握っていた大きな腕。そして、飛び回る()


「小賢しい。滅せよ」


 その龍に対して、斬り落とされた腕とは反対の腕で掌を向け、灰色の塊を作り出す。



 ——このままでは、あの龍が……



 座り込みながらも龍の心配をする妖夢だったが、抜けずにいた恐怖は救出の行動を拒む。そして、その塊は龍へと発射され、爆発を起こす。


 妖夢は爆風によって地面を転がり、壁に激突する。霊夢もまた、その爆風に耐えられず肩を貸していた二人と共に地面へと倒れる。


「さて、邪魔者も消えたところで——」


「誰が消えたって?」


 その声に驚く悪魔。同様に、耳を疑った妖夢と霊夢。それもそのはず。彼女たちはその声を、何度も聞いたことがあるからだ。


「まさか……!」


「よっと……待たせたな、妖夢」


 壁の下に座り込む妖夢の隣に、彼女の恋人の形見の剣である真神剣を手に取った男が、彼女の名前を優しく呼ぶ。彼女は目を疑い、同時に涙を流した。


「おいおい、泣くなよ」


 そう言って、泣き噦る妖夢を優しく抱きしめる男。しばらくそうした後、男は彼女を離し、彼女から取った真神剣に手を掛ける。


「色々邪魔が入ってしまったが、これで目の前の敵を討つことに専念できるな。さて……解放せよ、我が詠唱に呼応し、真なる力を解き放て。聖なる剣——界龍剣」


 彼の詠唱と共に姿が変わりゆく真神剣。その剣には、刃に龍の泳ぐような絵が描かれ、また、鍔には龍の顔が象られている。そして、剣身は水色へと変化した。


「手短に終わらせる。朧月」


 その掛け声の後、悪魔の視界に映る男の実態が霞んで見え始める。目を細める悪魔だが、いつのまにか背後に現れた男によって、背中を両断されてしまう。


「お゛の゛れ゛ぇ゛ぇ゛!」


 鈍い声で叫びながらも腕を背後へと振る。しかし、男に当たった感触は無く、その代わりに自身の体が空中へと投げ出されていることに気が付いた。


 すると、空中に投げ出された悪魔の目前に、例の男が現れる。


「なぜかって顔してるな。特別に教えてやるよ。この技術は相手から見える俺の実態が霞んで見えるだけでなく、影から影へと移動できるんだよ!」


 丁寧な説明の後、腹部を蹴り飛ばされ地面へと激突する悪魔。青い血を吐き出し、息を荒げる。そして、男へと問いた。


「貴様……一体何者だ……」


「俺は幻真。ただの人間(・・)さ」


 彼はそう言って、悪魔の首を打ち取った。


「終わりだ。七つの大罪を背負う悪魔たち……」


 彼はそう呟き、剣を納める。そして直ぐに、愛する人の元へと駆け寄った。


「幻真さん、本当にごめんなさい……私のせいで、貴方を殺めてしまった……」


「だから気にするなって。お前は何も悪くないって言ってるだろ? 寧ろ感謝してるくらいだ。お陰で俺の体は完全に人間(・・)に生まれ変わったからな。おっと、その前に串刺しにされてる時龍と気を失っている喜響の手当てをしないとな」


 手を頭の後ろに組みながら、暢気そうに時龍の元へと歩いていく幻真を阻むかのように、霊夢が行く手に現れる。


「おお、霊夢。色々心配かけたな。怪我はないか? なんなら、手当でも——」


「あんた……人間(・・)に生まれ変わったってどういうことよ? 死んで生き返ったってわけ? 散々心配かけて、説明なしじゃ許さないわよ!」


 いつにも無く怒りを見せる霊夢に対し、幻真は頰をポリポリと掻きながら答える。


「その事は帰ってから話すよ。それよりも、怪我人の手当を優先しないと」


 霊夢は納得したのか幻真に道を開け、そのまま彼は時龍の元へと走っていった。


「やれやれ。相変わらず霊夢は心配性だな。まっ、俺が悪いんだけどな」


 彼は時龍に刺さる剣を抜きながら、暗い表情で呟く。その言葉を聞いていた者がいるとも知らずに。


 しかし、事はそう上手くいかない。先程斬ったはずの悪魔の首が宙に浮かび、そこから再び実態を取り戻す。その気配を感じ取った幻真は直ぐに地を蹴り、その者へと剣を振るおうとする。だが、寸前のところで爆風が起こり、その周囲には六色の炎が現れ、時計回りに回転する。



 ——これは一体……



 その光景を見ていた者たち、皆が思う。幻真は咄嗟に時龍の元へと駆け戻り、治癒魔法を掛ける。


 唸りながらも目を覚ました時龍に、幻真は焦った口調で彼に告ぐ。


「今すぐ妖夢たちを連れて外に逃げてくれ! とてもマズい予感がする!」


「おいおい、起きたばかりの怪我人にそんなこと——」


「ふざけてる時間は無い! 早く!」


 幻真の尋常じゃない焦りに、時龍も思わず言われた通りに行動する。その様子を見送った幻真は、収めた剣を再び鞘から抜いて刃を輝かせる。



 ——奴の周りに浮かぶ六色の炎。緑だけが無いという事は嫉妬の感情がないという事。その悪魔の魂は確か霊奈が消し去った。だから、奴が完全に覚醒することはないはず……不完全なら勝てるか?



 彼は脳内で思考を巡らせる。しかし、その思考は呼びかけによって閉ざされる。


「幻真さん! 早くこっちに!」


 声の主、妖夢は幻真に向かって手を伸ばしながら叫ぶ。しかし、彼はその手を取らず、彼女に言い聞かせるようにして言い放った。


「俺はコイツの相手をする! だから、お前たちは先に行くんだ!」


「嫌だ! 私はもう貴方と離れたくない!」


 そう言って幻真の元へ駆け出そうとする妖夢の手を、時龍はガッシリと掴む。妖夢は強く反抗したが、男性の力強さには抗えなかった。


「妖夢、俺は必ず戻ると約束する。だから、幻想郷で待っててくれないか? この事が終わったら、またのんびり暮らそう。もう二度と君を離さないから。だから、俺の最後の我儘を聞いてくれ」


 幻真の強く、優しい説得に涙ぐんでいた妖夢は涙を拭い、頭を横にぶんぶんと振って彼に笑顔を見せて言った。


「はい……! 約束ですよ、幻真さん!」


 彼女のその返答に頷いた幻真は、時龍に合図を送って妖夢を出口へと誘導する。その間、時龍は幻真に一言残した。


「恋人との約束、絶対に破るんじゃないぞ」


 時龍の真剣な表情に、幻真は強く頷いた。そして、時龍たちの姿が見えなくなったことを確認して、彼は改めて最後の戦いへと姿勢を向ける。


「さて……終焉をくれてやるよ。七つの大罪の悪魔ども!」

長らく今回の章に登場する悪魔達について詳細をかけていなかったという事で、こちらで紹介させていただきます。


・レヴィアタン【嫉妬の緑の炎】

緑の髪に緑の瞳を持つ女性。身長はルシファーよりは低め。水を司り、大嘘付きで有名。身内でも嘘はよくついていたそうだ。憑依の能力を持ち、紅魔館の門番に取り憑いた。少々荒く、豪快な女悪魔。一人称は私。


・ベルゼブブ【暴食の紫の炎】

紫の髪に紫の瞳を持つ男性。身長は高めでルシファーと同等。七つの大罪のリーダーであり、なかなかの苦労人であったそうだ。また、一度幻真の体に憑依するも、彼に宿るニュクスによって殺められる。因みに、憑依は元々レヴィアタンのモノ。一人称は我。


・バニティー【虚飾の灰色の炎】

元々は名前を出す予定だったが、結局明かされなかった虚飾の悪魔。何故か閉じ込められ、またルシファーの私物のようだ。ニックはこれを、人形と呼んでいた。ルシファーも同じようなものだろう。

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