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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第117話 暴食との戦い

 時刻は既に夜。今宵の空には雲が無く、満月が地上を照らし輝かせる。


 幻真が紅魔館を去ってから数時間が経つ。用事ごとを終えたら帰ってくると言っていた彼だが、まだ帰ってこない。流石に心配になっていたレミリアだが、彼女のカリスマ故か、それを悟らせることなく高貴に紅茶を飲んでいた。心配していたのは霊夢も同じみたいだった。あまりにも落ち着きなく、ずっと歩き回っていた。


 レミリアは座っていた席を立ち、窓から夜空を見上げる。その直後、禍々しい気配を察知する。



 ——暴食の感情。



 幻真に何かあったのではないかと、いても立ってもいられなかったレミリアは、直ぐに紅魔館を飛び出して夜の空へと飛んでいく。


 そして目撃したのは、暴食の炎に飲み込まれる一つの人影。



 ——もし、あれが幻真だとしたら……



 そう思ったレミリアは、神槍グングニルを出現させて右手に持ち、球状に広がる暴食の炎の中へと突っ込んでいく。しかし、それをある人物に止められた。


「吸血鬼……近付いては危険だ……」


 その人物は息を切らしながら彼女に伝える。なぜ息を切らしているのか、彼女が知る由は無かったが、ことの重大さを察して大人しくその場から下がる。


「この借りは……絶対に返す」


 その人物——桃花は妖力を全身へと流し、強烈な一撃を放つ。


「妖符『妖雷砲』」


 雷を纏ったレーザーが暴食の炎の球体に向かって放たれる。しかし、それは跡形も無く喰われてしまう。


「くそッ……これが、暴食の——」


 桃花の言葉はそこで途切れ、力無く地面へと落下していく。それをレミリアが受け止めた。


 このままでは、幻真がマズイ……わかってはいるが、どうしたらいいのか……レミリアは必死に思考を巡らせる。そして、突然思い付く。


「フラン!」


「お姉様、私に任せて!」


 彼女、フランドールの能力は"ありとあらゆるものを破壊する程度の能力"。物質の最も緊張している部分である"目"を自分の手の中に移動させ、それを握りしめると暴食の炎の球体が割れるようにして破壊される。


 その中にいた幻真が落下していくところを、フランドールが受け止めに行く。


「幻兄、大丈——」


 幻真の目が見開いた直後、暴食の炎がフランドールを飲み込もうとする。しかし、フランドールにとある結界が貼られ、その炎を阻止する。


「フラン、今すぐそこから逃げなさい!」


 声の主は霊夢。その結界は、二重大結界だった。しかし、その結界が破られるのも時間の問題。フランドールは素早くその場から離れた。


 直後、暴食の炎が幻真を中心として飛び散り、触れた部分を喰らい尽くす。


 そして彼、幻真の感情は暴食に飲み込まれていった。








 〈幻真〉



 ここは一体……俺はどうなって……


『起きたか、龍使い』


 この声は……喜響なのか? ここはどこなんだ。今俺はどうなった? 教えてくれ。


「焦らなくても我が教えてやろう」


 この声……お前は確か、ついさっき出会った悪魔!


「御名答。貴様の体は我が頂いた。我は手に入れたこの体で、貴様の仲間を葬る。ふははは! 実に愉快、快調、好調!」


『くそッ……この悪魔め!』


 目の前で具現化した喜響が銃を両手に持ち、悪魔へと攻撃する。片方の銃——妖桜から銃弾のような弾幕を撃つ。しかし、その弾幕は打撃だけで対処され、一瞬で喜響の前に迫ったかと思うと、喜響の体は吹き飛ばされてしまう。だが、それだけでは終わらない。


 喜響は指で悪魔を中心として輪を描くと、悪魔の背後にはブラックホールが出現した。追い討ちをかけるように喜響は技を畳み込む。


「魔符『炎獄』!」


 片方の銃——紅魔から放たれた火を纏った極太レーザーは、悪魔を飲み込む。悪魔は踠き、苦しみ、ブラックホールの中へと吸い込まれていった。


「そんなもの効かぬ」


 吸い込まれたはずの悪魔が喜響の背後でそう言い、回し蹴りで喜響を吹き飛ばす。そして次の攻撃、次の攻撃へと、喜響が吹き飛ばされた場所に瞬間的に移動をし、追い討ちを繰り返す。


 喜響も黙って攻撃を受けてはいられない。紅魔から放たれたレーザーによって逆噴射を行い、次の攻撃に備えて体勢を整える。そして、現れた悪魔に対して蹴りを入れ、連続して銃での攻撃も行う。


「魔符『明光』!」


 白い光の力を込めたレーザーは、高熱によって悪魔の体を貫く。悪魔は異色の血を吐き、地に膝を突く。


「こうして戦ってみたけど、大したこと無さそうだね。さあ、チェックメイトと行こうか」


 喜響が紅魔の銃口を悪魔の額へと当てて、雷属性の魔力を溜める。しかし、悪魔の様子が変だった。その様子は、喜響には見えていない。早く伝えなければ……!


「ききょ——」


「ふんっ」


 遅かった。突如として悪魔の片手に現れた大剣により、喜響の体が横に真っ二つに斬り裂かれる。


 当の喜響は驚きながらも、自身の力を振り絞り、紅魔から無色のレーザー、妖桜から無色の弾幕を放つ。しかし、悪魔の持つ大剣によって、それらは消されてしまった。


「貴様が消える前に名乗っておこう。我が名は暴食を司りし悪魔、ベルゼブブだ」


 真っ二つに分かれた喜響の体が自身の隣に転がる。直ぐに彼に寄り添おうとしたが、彼は光の粒子となってその場から消えた。


 必死に体を動かそうと試みる。だが……




 ——くそッ! なんで体が動かねぇんだ! それに、声も出ないし……!


「見えない拘束。"憑依"による効果だ。貴様に変わって我がこの体を頂く。くくく……はっはっはっは!」


 俺は……終わってしまうのか……?


 諦めそうになった時、ベルゼブブの体に異変が起きた。突如として、大剣を持つ腕が斬り落とされたのだ。


「なっ……! さっきの奴以外に、まだ誰かいるというのか!」


 そう考えると、俺の体が怖くなってくる。


 今起こった異変の真相。その正体である人物が、俺とベルゼブブの目の前に降り立つ。


「人の獲物を取らないでくれるかな? 醜い悪魔よ」


 その人物は白黒の仮面を付けていて、白く長い髪を持つ少女で——俺はコイツを知っている。


「……ニュクス⁉︎」


「ニュクス……? 聞いたことのない名だな。それに、只者ではなさそうだ。どうしてこんな者の精神内にいるのか——」


 ベルゼブブが言葉を発し終える前に、彼の首は切断され、空中に舞う。訳も分からず空中に舞った彼の生首がドサッと言う音と共に地面へ落ち、立っていた胴体も力無くして地面へと倒れる。


 ベルゼブブの首を刎ねたであろうニュクスは、刀で斬ったような残心を取る。しかし、不思議なことに彼女は武器など持っていなかった。一体どのようにして、一瞬で悪魔の首を刎ねたのか。


「今……一体何が……?」


 動揺する様にして声を震わせ、目だけが動くベルゼブブの生首。その後ろからコツッ、コツッ、と音を立てて歩いてくるニュクスの姿があった。


 彼女は片腕を上へと真っ直ぐ向けたかと思うと、勢いよくその腕を振り下ろし、ベルゼブブの横に向いた顔を貫いた。人間の赤色の血とは違う青色の血を流し、ベルゼブブは息をしなくなった。


 腕に付いた青い血を振り払うニュクス。俺はその姿を呆然として見ていた。


 ニュクスはさっきと同様、足音を立てながらこちらに来て、指で俺の顎をクイッと上げて言った。


「勘違いしないでほしい。助けた訳ではない。キミが奪われると、色々困る事が起きるからだ」


 ニュクスはそう言い残し、光の粒子となって目の前から消える。その直後、視界が眩い光に包まれて真っ白に染まった。






 目が覚めると、そこは見覚えのある天井だった。また戻ってきたのだ、紅魔館に。特に身体に異常はなく、怪我などもなさそうだった。


 それにしても……ニュクスの力は未知すぎる。先程見せられたあの力なら、強くなっていく俺の力なんて貰わなくても十分な力量なのではないか? そういった疑問を持つ。


 すると、扉を二回ノックする音が聞こえてくる。その人物に声を掛け、中に入れる。


 その人物とは、フランだった。不安、そして心配する気持ちからか、俺に飛びついて抱きついてきた。彼女の被る帽子の上から頭を撫で、安心させる。


 フランは一度体を離し、いつもの無邪気さを取り戻して話した。


「あのね! 幻兄の事を一番に心配したのは、お姉様なんだよ!」


「レミリアが……?」


 念の為、問い返す。しかし、フランは否定する事なく満面の笑みで大きく頷いた。


 心配してくれるのはとてもありがたい。でも、これを知ったレミリアがどんな反応をするかだが……


 すると、再びノックの音が聞こえてくる。その人物を中へ通し、誰かを確認した。


「……桃花か。もう大丈夫なのか?」


「君のおかげでなんとかね。それにしても……大罪の悪魔たち、中々油断できない存在だよ。それぞれの司る大罪が、どういった効果を持ち、どのような悪影響が及ぶのか、わからない」


「そんなこともないぞ。俺は感情解放によって、それぞれの大罪の感情を解放する事ができる。因みに俺は暴食だ——って、ベルゼブブは暴食だったんだっけ。でもまあ、感情と大罪が同じなら、俺も知らない事はないからな」


 桃花にそれぞれの感情を解放した時に起こる効果を、わかりやすく手短に教えた。


「——なるほど。だが、これからの悪魔たちの動きが読めない。考えられる事としては、地上を占領してくるかだが——」


 桃花が言葉を言い終える前に、外から大きな爆発音が響き渡る。フランには待っていてもらい、俺と桃花はその場所へと一目散に向かった。






 その場所は全くと言っていいほど遠くなく、紅魔館の門前だった。そこには、半径三メートルほどのクレーターが出来ており、それを作ったとされる人物が、その中心に立っていた。


 どうやら女性らしく、緑髪に緑色の瞳を持っていた。更に、自分たちを焦らせる事実も発覚した。


 彼女は嫉妬の感情を示す緑の炎を拳に宿していた。

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