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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第壱章 龍使い
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第12話 幻真の初宴会

「ん、ここは——って、いたっ! いだだだだだ!」


 俺は布団の上で目を覚ました。だが、全身が痛む。


「うっ……すぐに回復すると思ったんだけどなぁ」


 予想以上に回復できていなかった。たぶん、この痛みは筋肉痛ってヤツだな。激しく動きすぎた。


「幻真、入るわよ〜。あら、起きてたのね」


 入ってきたのは霊夢だった。


「三日間も眠ってたのよ。萃香が待ち遠しいってうるさいのよ」


 三日も寝ていたのか。というか、待ち遠しい? その萃香って人は俺のことを心配して――


「宴会はまだか〜って」


「んなっ⁉︎」


 そんなことだろうとは思ってたけど、少しぐらいは俺の心配をしてくれたっていいだろう。それより、宴会をするなんて聞いてなかったな。俺は痛みに耐えながら立ち上がる。


「無理しなくていいのよ」


「あ、ああ、大丈夫。いででで……」


 俺は外へと出る。心配した霊夢もついてくる。


「霊夢〜、宴会まだ〜?」


 そこには、二つの角を頭から生やし、片手に瓢箪の形をしたものを持った鬼のような少女がいた。たぶん、この人が萃香さんだろう。いや、この人に違いない。


「ん? この人間が幻真かい?」


 萃香さんは霊夢を見ながら俺を指差す。聞かれた霊夢が頷くと、少女はふーんと言って自己紹介を始めた。


「私は伊吹いぶき萃香すいか、山の四天王さ」


「山の四天王? この子が?」


「むっ、失礼だね。痛い目に合いたくなかったら、鬼を嘗めないほうがいいよ」


 俺は失礼なことを言ってしまったと、謝るようにして頭を下げた。


「それで、今日するのかい?」


「一応ね。それで、起きたばかりで悪いんだけど……幻真、おつかいに行ってくれるかしら?」


 おつかいか……


「お酒と食材を買ってきてほしいの」


「わかった、お酒と食材だな」


「それじゃあ、私は参加者でも探してくるかね」


 萃香さんは鳥居を潜って、両手を横に伸ばしてバランスを取りながら階段を降りていった。


「じゃあ、俺も行ってくる」


 俺は霊力を全身に巡らせて苦痛を減らす。そして、人里に向かって飛んで行った。






「——さて、着いた着いた」


 えっと、まずはお酒からだな。酒が売ってるのはあの店か。


「いらっしゃい!」


「えっと、お酒ください」


「あいよ! ちょっと待っててくれよな!」






 ——お酒、けっこう重たいな。入ってる量も中々だし、数も多いし。


「あとは食材か。なんでもいいかな」


 俺は近くの八百屋を見て呟いた。






「——やばい、重すぎる……必要以上に買いすぎたかな……ってあれ? たしかここは……」


 目の前には、見覚えのある建物があった。そうだ、阿求さんの屋敷だ。阿求さんも宴会に誘ってみようと考え、俺は戸を叩く。しかし、返事がない。


「留守かな?」


 留守なら仕方ない。とりあえず、帰ろう——


「——と思ったけど、紅魔館を見に行こうかな。まだ修復作業中かもしれないし」


 俺は重たい荷物を持って、紅魔館に向かった。先に荷物を置いてきたほうがよかったな……






 湖を越えて、見えてきた建物。たぶん、あれは紅魔館——って、ええ⁉︎


「もう直ってる!」


 紅魔館は完全に修復されていた。


「何者! って、あなたはたしか……」


 門の前には、見覚えのある少女がいた。


「美鈴さん……でしたっけ?」


 俺は記憶を頼りに名前を確認する。


「そうです。えっと、お名前は……」


「俺は幻真です。ああ、そっか。美鈴さんは霊夢と戦っていたので名乗れませんでしたね」


 彼女は首を横に振る。


「そこまで丁寧に話さなくてもいいですよ。なんか、堅苦しいですから」


 彼女は笑って言った。じゃあ、美鈴と呼ばせてもらおう。


「それにしても、修復、もう終わったんだね」


「そうなんです。さすがパチュリー様!」


 パチュリーか。いったい、この館には何人住んでいるのだろうか。


 そんな疑問を浮かべながらも、おれはそろそろ帰ろうかと考える。その際、今夜宴会があることを思い出し、彼女に開催場所を伝えるとともに、紅魔館に住んでいるみんなで来ないかと誘ってみた。


 彼女は半信半疑な様子だったが、改めて俺に確認したうえで言った。


「これはお嬢様にお伝えしなければ! 幻真さん、失礼しますね!」


 手を振って館の方へと走っていく美鈴に手を振った俺は、博麗神社に帰ることにした。。






 博麗神社に帰ってきた俺は、境内に降り立つ。


「帰ってきたわね」


 霊夢は待ち遠しかったかのように、俺が空から降りてくるのを見ていた。


「紅魔館に寄ってたんだ。ついでに彼女たちを誘っておいたよ」


「萃香の仕事が減って助かるわね」


 俺は荷物を霊夢に渡す。霊夢が重そうにしていたことは言うまでもない。


「とりあえず、お風呂に入ってきたら? まだ残っている傷で痛みが染みるかもしれないけど、三日もお風呂に入ってないのよ」


 そういえば、起きたときより体が楽になってきたな。筋肉痛に慣れたかな? とりあえず、入ってくるか。


「たぶん痛みは大丈夫だ。それじゃあ、俺は風呂に入ってくるよ」


 俺は風呂へと向かった。








 〈紅美鈴〉



 私は今、お嬢様の部屋へと向かっている。


「ちょっと美鈴? 仕事は?」


「お嬢様にお伝えしてからです!」


 咲夜さんは首を傾げて私を見届けた。私は構わずスタスタと歩いて、お嬢様の部屋に向かう。


 しばらく歩くと、お嬢様の部屋の前に着く。そして、扉を二度叩いた。


「いいわよ」


 私は扉を開ける。そこには、この館の主であるレミリアお嬢様がいた。


「あら、美鈴。仕事をサボるとはいい度胸ね」


「す、すみません。ただ、お伝えしたいことがありまして。お伝えしたらすぐに戻ります!」


 お嬢様は頬杖をしながら、あまり興味なさげに話を聞かれた。私は簡潔に纏めて話した。




「——宴会? 私たちが?」


「はい! どうなされますか?」


「そうねえ……」


 お嬢様が考えられていると、扉を叩く音がする。お嬢様は考えるのを一度やめて、その者の入室を許可された。


「お嬢様、紅茶をお持ちしました」


 入ってきたのは、先ほどすれ違った咲夜さんだった。


「咲夜、ちょうどよかったわ。今夜、宴会の誘いが来てるんだけど」


「博麗の巫女からですか? 私はお嬢様の意志に従うまでです」


 咲夜さんのその言葉で決めたのか、お嬢様は機嫌良さそうに笑って言った。


「ふふっ、決まりね」








 〈幻真〉



 宴会が始まった。思ったより人が集まったな。


「幻真〜、早く来てちょうだ〜い」


 俺は霊夢の手伝いをしている——いや、しているんじゃない、やらされてるんだ。


「あっはっは〜、お酒はやっぱり美味しいね〜!」


 そこに、大きな声で笑っている額から一本の角を生やした少女がいた。彼女は萃香さんと一緒にお酒を飲んでいるようだ。


「お、幻真、いいところに〜。お酒くれ〜い」


 萃香さんに呼ばれる。俺は彼女に酒瓶を渡す。


「あの……隣の方は?」


「ん? 私かい? 私は萃香と同じ山の四天王、星熊ほしぐま勇儀ゆうぎさ」


 山の四天王がもうひとり、勇儀さんというのか。


「俺は幻真です——って、うお⁉︎」


「そんなかしこまんなって! もっと軽くいこうさ! なっ!」


 勇儀さんは俺の首を締めて、逃げないように捕まえた。


「勇儀、さん……苦しい……」


「おおっと、すまんね! ついつい!」


 俺はハハハ……と苦笑しつつ、急いで霊夢の方へ戻る。


「幻兄!」


 戻る途中、だれかが俺を兄呼びした。その声は、聞き覚えのある声だった。俺は辺りを見渡してその声の主を探す。探していると、美鈴とフランが俺に手招きをしているのを見つけた。彼女たちの隣にいる人たちはだれだろうか。俺は慌てて駆け寄る。


「ちょ、ちょっとフラン、俺を兄呼びだなんて……」


「あなた! 妹様に気安く——」


「いいんだよ、咲夜」


 フランはメイド服を着た少女を落ち着かせる。


「えっと、あの……俺は幻真といいます」


 俺は冷汗を流しながらも、そこにいた人たちに挨拶をした。一番最初に名前を述べたのは、赤い髪でちょっと変わった姿をした少女だった。


「私は小悪魔です。気軽にこあ(・・)って呼んでください!」


 その人物は小悪魔と名乗った。いわゆる、サキュバスといったところか。


「私はパチュリー・ノーレッジよ」


 次に、こあの隣にいた少女が挨拶をした。


「私は十六夜咲夜。見ての通り、メイドよ」


 パチュリーの横に座っていたのは、さっきのメイド。そして、その隣に座っていたいかにも一番偉そうにしている少女が名乗った。


「私は紅魔館の当主、レミリア・スカーレットよ」


 この人が今回の異変を起こした犯人なのだろう。今はもう関係ないが。


「改めて——私はお姉様の妹、フランドール・スカーレットだよ」


「フラン、なんで俺を兄呼び?」


「あなたが気に入ったらしいわよ」


 レミリアさんが代わりに答える。俺を気に入ったって、あの弾幕ごっこが関係しているのかな。


「う、うん。ありがとう。嬉しいよ」


 兄呼びだなんて、なんか照れるな。


「へぇ〜、幻真が兄呼びだなんて」


 いつの間にか、隣には魔理沙がいた。


「なあパチュリー、おまえのところにある図書館の魔道書を貸してほしいんだけどさ」


「あんた、魔理沙にモノを貸さないほうがいいわよ。戻ってこなくなるから」


 霊夢はそう言いながら、魔理沙の隣に座った。


「そうなの? なら貸さないでおこうかしら」


「ちょ、霊夢! 私は借りパクなんかしないぞ! だから頼むよ〜」


 宴会は、思っていた以上に盛り上がりを見せた。その夜、酒を飲みすぎてしまい、二日酔いになったことは言うまでもない。

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