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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第115話 憤怒に飲まれし者

 場所は博麗神社。ある一人の巫女が、その境内から幻想郷を見下ろしていた。


 すると、空から大量の魔物たちが飛んでくるのを目の当たりにする。



 ——このままではマズい。



 彼女はそう思って、自身の武器であるお祓い棒を手に取って、空へと飛んでいく。


 このお祓い棒は、普通の巫女が所持しているお祓い棒とはかけ離れた性能を持っており、お祓い棒の先からビームソードを出すようにして使うという、変わった武器である。


 もちろん、彼女に気付かなかった魔物はいない。目に付けた魔物たちから彼女に襲いかかっていった——はずだった。


 襲いかかったはずの魔物たちの姿は一瞬にして消え去っており、更には有り得ぬ光景が広がっていた。


 既に魔物の数は半分に値していた。しかし、それに動じず魔物たちは襲撃を続ける。


 その魔物たちの中でも、上位の魔物が七体。それらは七つの大罪に該当しており、憤怒の黒、怠惰の赤、傲慢の金、暴食の紫、強欲の青、色欲の桃、嫉妬の緑の七色の感情の炎をそれぞれ纏っていた。


 大罪の魔物たちは、己の大罪の感情で彼女に干渉して感情を塗り変えようとするが、なかなか上手くいかない。それもそのはず。彼女——博麗霊奈は"干渉を受けない程度の能力"を所持していたからだ。それともう一つ、"防ぐ程度の能力"で相手のしようとした行動を事前に察知し、させないようにしていたのだ。


 彼女はまた別の能力——"活性化させる程度の能力"で脳を活性化させ、思考能力を上昇。更に筋肉も活性化させ、身体能力を爆発的に上げる。そして、神経も活性化させた事によって反応速度を極限まで上げていた。


 彼女はもはや、人間離れたした力の所持者。彼女の前で、魔物たちは成すすべなく撃退された。


 それの様子を見ていた悪魔が呟いた。


「……へぇ、彼女、中々の強者ね。私の手の中に収められれば……ふふふ……」








 〈博麗霊妙〉



 だんだん雲行きが怪しくなっている。ここ、人里にいつ危害が及ぶかわからない。いつでも戦えるようにしておかないと。


 現在、私は阿求の屋敷にいる。つい先程、スキマ妖怪の紫から悪魔たちが攻めて来ているのを知らされた。


 第一に人里の者たちの事を考え、人里全体を覆う様に『神聖なる見えない結界』を貼った。名の通り、神聖かつ純粋な者しか入れない結界。


 だが、私は油断していた——否、思いもしていなかった。まさか、結界が破られるなんて。


 感知した私は慌てて外へ飛び出し、その光景を目の当たりにした。攻め込んでくる魔物たち。まさに地獄絵図だった。


 その目線の先に、今にも影の者に殺されそうになっていた少女がいた。


 私の体は勝手に——反射的に動いた。己の武器、お祓い棒を手に取って。


 私に気付いたその者(・・・)は掴んでいた少女の首を話し、その者の武器である剣を手に取って私の攻撃を防いだ。しかし、私はその剣に対して違和感を持った。


「貴方、その剣は……」


 その者は、身に纏った影の中で口をニヤリと動かした。すると、影が晴れる。現れたその人物の正体、それは——幻真のクローン(・・・・)だった。


「久しいな、博麗の巫女。貴様とはあの時、面と向かって顔は合わせていなかったが……知っている。そして、貴様も俺の事を知っている。不思議そうな顔をしているな。慌てなくても教えてやろう。なぜこの剣……真神剣(・・・)を所持しているか。ついでに、この短刀もなぁ?」


 冷汗と共に、緊張の時間が流れる。心臓の鼓動が高まっている。落ち着け私。焦ってはいけない。


「俺を作った者はこんな事になるとは思わなかったのだろう。あの"No.003"同様、強い感情を持つとはなぁ……」


 No.003……? 一体なんのこと——否、誰のことを言っているの?


「俺はあの方(・・・)に力を与えられた。ならば、思いのままに使うのみ! そして、この武器も奴から取り上げて我が武器となった! 後は奴を殺せば、俺が——」


「聞いていれば図々しい話をするのね。他に気になった事もあるけど、取り敢えず……貴方を倒す」


「——ああ、そうか、そうなんだな……いいだろう、やれるもんならやってみやが——うぐっ⁉︎」


「誰が"よーいどん"なんかで始めるって言ったかしら? 霊符『夢想波動』」


 不意打ちでお祓い棒を使ってクローンの腹部を突き、その先端から霊力の波動を出す。彼の体は吹き飛び、その姿は見えなくなる。


 こんな攻撃で、こうもあっさりとやられる敵ではない。爆煙の中に人の影が見えたかと思いきや、その姿は一瞬にして消え、私の背後へと移動していた。


 振り下ろされた剣を霊力でコーティングしたお祓い棒で受け止め、腹部に蹴りを入れる。蹴られた事により一時的に怯んだクローンだったが、素早く腰の辺りから取り出した短刀を投げてくる。私は遅れる事なく、その攻撃を躱す。


 攻撃は止まない。遅れを取らず霊力が込められたお札をクローンに数枚投げ、爆発させる。爆煙の中を素早く移動し、位置がバレないよう背後を取りに行く。だが、それは私が受ける事態となってしまった。


 私の背後で、青い瞳が光り輝く。


「開眼『青眼』」


「それは彼の……! なんとしても貴方を倒す! 霊符『陰陽陣』!」


 クローンの足元に大きな陰陽玉の絵をした魔法陣が現れる。その魔法陣から霊力を帯びたレーザーが、空に向けて放たれる。威力は一つの山を吹き飛ばす程。


 流石にこれは効いただろう。その一瞬の油断が、自身を危険に晒した。


 突如、自分の真横から火柱が上がる。その異変に気付いた私は辺りを見渡す。すると、周辺にも同じ火柱が上がっていた。


「熱符『熱火柱』」


 上空には、尚ボロボロになった姿で攻撃を繰り返すクローンの姿があった。しかし、さっきまでと様子が違う。とても禍々しく見え、そして怒りに満ちている。


 すると、クローンの体から黒い、まさに禍々しい炎が溢れ出ていた。


「俺は……許さねぇ!」


 その感情は憤怒。彼は自分の身を憤怒に委ねようとしていた。


「待って——」


 彼の体から出る黒い炎が辺りを埋め尽くし、私もその中に飲み込まれる。


 気付いた時には炎の中から出ており、そして、目の前には異形の存在がこちらを見ていた。








「——来たか」


 そこは、謎の空間にある、とある一室。そこで七つの大罪の憤怒を司る悪魔、サタンがポツリと呟いた。


「例のアレ(・・)ですか。憤怒の感情をアレ(・・)に込めすぎて、貴方の感情はすっからかん状態ですけどね」


 そう言い、サタンと喋る少女ベルフェゴール。彼女もまた、七つの大罪怠惰を司る悪魔である。


「怠惰の罪を持つ私ではなく、怒りの強い憤怒の貴方がそのような事をするとは思いもしませんでしたよ。私の怠さもわかってくれたんじゃないですか?」


「ほんの少しな。それに、これはベルゼブブに頼まれた事でもある。そう——憑依(・・)の実験として」








「コロス……コロスコロスコロスコロシテヤル!」


「完全に自我を失ってる。躊躇してる暇は無さそうね。夢符『零封想砲』」


 このスペルは、例えるなら魔理沙のダブルスパークのような二つの霊力のレーザーを放つというもの。それらは地面を削り、異形と化したクローンへと迫り来る。だが、異形の手から黒い炎が出たかと思うと、そのレーザーを黒い炎で消滅させてしまった。


「嘘……」


 ただそのレーザーが消滅させられただけではなく、その力を吸収して黒い炎を纏ったレーザーを打ち返してきた。咄嗟に結界を張るものの、その圧に押されて結界が砕かれる。


「うぐっ……!」


 レーザーは直撃し、右腕を焼かれて負傷。全くの使い物にならなくなってしまった。


 このままではマズい。迫り来る異形の怪物。終わりを確信したその時、どこからかスペルカードが唱えられた。


「包符『昭和の雨』」


 そのスペルカードからは、花びらのような形に並んだ米粒弾を全方位に発射しつつ、異形の怪物を狙った短いレーザーが常に撃ち続けられた。


「小癪ナ真似ヲ……!」


「まだだ。『蓬莱人形』」


 もう一つ、別の人が唱えたそのスペルカードからは、二つあるうちの片方の魔方陣が時計回りにだんだんと小さく回りながら赤丸弾を異形の怪物を狙って撃ち、その通った道に赤丸弾の弾幕を配置。


 そしてもう片方の魔方陣が時計回りにだんだんと小さく回りながら青丸弾を異形の怪物を狙って撃ち、通った道にも更に青丸弾の弾幕を残していた。


 一定時間が経つと、全方向黄針弾を出し始め、更に時間が経つと異形の怪物狙いの赤鱗弾を出していた。


「貴方たちは……」


 私の前に現れた二人の少女。その正体は、慧音と妹紅だった。


「大丈夫か? 博麗の巫女」


「今は巫女じゃないわよ」


「悪いね、遅れた。それにしても……なかなか見苦しい姿だな。まだ行けそうか? 博麗の……いや、霊妙」


「……ええ、勿論よ」


 淡々と二人と会話を交わす。そして、意を決して再び怪物へと立ち向かった。


「次は一人じゃないわよ」


「ああ。私たち三人が相手だ」


 その言葉を最後に、妹紅は自身の腕に炎を纏わせ、怪物に突っ込んで行く。怪物の巨大な腕に振るわれ体を吹き飛ばされるも、屈しずに攻撃を止めない。


「生憎、私は不老不死(・・・・)なんでな」


 その体はボロボロになろうとも再生を繰り返す。一方で、慧音は別のスペルカードを唱えた。


「光符『アマテラス』」


 そのスペルは、太陽のような赤と青の全方位怪物狙いのレーザーだった。


 もちろん、怪物もやられっぱなしでは堪らない。当然、反撃を行って来た。


「貴様ラァァァ!」


 怪物は大きな腕を横一面に振るう。それを素早く跳んで避け、更なる攻撃を畳み掛けた。


「滅罪『正直者の死』」


 妹紅はライン状に並んだ米粒弾とウイルス弾で動きを制限しつつ、怪物を薙ぎ払うようにしてレーザーで攻撃する。だが、このスペルカードは普通のと何かが違っていた。


「グゥ……!」


「正直に避けようとすると、被弾するぞ?」


 まさにスペルカードの名の通り。正直者は攻撃を受けてしまう、なんとも卑怯。


 立て続けに、慧音もスペルカードを唱えた。


「『無何有浄化むかうじょうか』」


 壁状に並び、一部に隙間が空いた米粒弾を周りから自身に収束させつつ、三角状に並んだ怪物を狙う大玉を発射する。


「グオオッ……!」


「決めろ! 霊妙!」


「ありがとう、二人とも。神霊『夢幻霊怪』ッ!」


 自身の周りに色鮮やかな数々の大、中、小の弾幕を出現させ、怪物目掛けて放つ。更に神力と霊力を合わせ持った極太レーザーが、地面を削って飛んでいった。


「オノレェェェエエ‼︎」


 怪物は光の中へと吸い込まれていき、その直後に爆発が起こった。






 気付いた時には怪物の姿はなく、幻真の所有物である真神剣や短刀などが落ちていた。


「やったな霊妙!」


 私の肩を叩き、肩を組んで来た妹紅。私は笑顔で頷いた。


「やっぱり君は強い」


 そう言い、私を見つめた慧音。つい照れてしまい、照れ顔が出てしまう。


「まだ終わりじゃないわよ」


 聞き覚えのない声が、空から聞こえてくる。そちらを見ると、黒いアンダーウェアのようなものに巫女服を纏った少女がいた。

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