第111話 動き出す悪魔たち
今日は節分です。
節分とは言葉の意味からして、「季節を分ける」との意味合いらしいです。
〈時龍〉
アスモデウスとの交戦を開始して、早数十分。龍の力を取り込んだ状態でも、未だ両者一歩も譲らない戦況。龍の力を取り込んで自身の身体能力などを向上させているが、未だ倒せない。ならば——
——あの力を試そう。
「む? 一体何をすると言うのだ?」
両方の掌を空に向け、左の手からは純白の炎を。対して右の手からは漆黒の炎を出現させ、それを一つ一つの弾幕へと変え、相手へ目掛けて飛ばす。
「『炎之遊園』」
アスモデウスはその攻撃に対し、降ってくる場所を予想して躱していく。もちろん、俺は攻撃を止めない。そして、隙を狙って龍の腕で薙ぎ払いを行う。その攻撃に反応しきれなかった彼女は、直接攻撃を受けた。
「うぐぅ……!」
「かわい子ちゃんは傷付けたくない。それに君は少女……だが、今回ばかりは残念だが、容赦無しで全力で倒させてもらう。覚悟しろ!」
大きな龍の双腕を振りかぶりながら地を押し、アスモデウスへと一気に距離を詰めようとした。しかし、異常な威圧によって身体は壁へと吹き飛ばされ、背中に激痛を負う。
片手で地を押し加速をつけて、もう一度接近を試みる。今度はアスモデウスの姿が消えて見失ってしまう。見渡していると、アスモデウスの姿が空中に現れる。だが、彼女は既に攻撃開始の直前だった。
咄嗟に両腕をクロスして防御体勢を取るが、いつの間にか背後にアスモデウスの姿はあり、背中から腹部を貫通してレーザーが放たれた。
「う、がっ……!」
「我が色欲に勝とうとは、数年早い。しかし、お主のその実力は認めよう。だから大人しく、我の隷となるのだ。洗脳『色欲』」
「——ご苦労だった。アスモデウス」
「ほお、これはこれは——そちらの様子は?」
「我はこれからレヴィと共に地上へと出向くつもりだ。残りの侵入者たちは貴様らに任せる。後々、召集をかけるかもしれんがな」
「……承知」
〈ニック・ヘルスリート〉
大変な事になった。透明によってこの空間を探索していたが、偶然時龍さんの交戦場所へと訪れてしまい、着いた頃には撃破されていた。それに洗脳……なんにせよ、アスモデウスの前に現れたあの人物……奴ともう一人が地上へ行くらしいが……
火御利さんは一体どうなったのか。逸れた想起さんの消息。別行動をしている星弥兄弟。そして、狼さん……七つの大罪の計画は読めてきた。だから早く手を打たなければならない。しかし、一体どうすれば?
ひとまず、安全な場所へと身を隠そう。そこで火御利さんと狼さんに連絡を取り、消息を確認する。繋がらないなら、残念だが……
安全な場所を求め、やって来たのは初めの入口。幸い、空間の出入口が閉じたりするなどの心配は無く、当初の頃と状態は変わっていない。さて、通信を起動して——
「全く。ベルったら、地上へ行くだなんて言い出して」
一方の通路から声が聴こえてきたことに、透明化しているが慌てて身を隠す。恐らく、先程の話からして彼女がレヴィと呼ばれる人物。そして、その彼女を呼んだのが、ベルという男……
「——ねぇ。ここに誰かいるでしょ?」
ドクン! 心拍数が上がり、緊張感が走る。まさか、バレたのか? しかし、バレた時の為に対策は打ってある。転送でこの空間を脱出。いざとなったら実行に移そう。
「——位置は見当が付いている。死になさい、侵入者」
彼女は巨大な戦斧を手に持ち、見えていないはずの私に向けて振りかぶる。まさか、どうしてなんだ……!
「消えて」
「ッ——」
〈星弥喜響〉
状況は非常に悪い……と。コソコソと動き回ってはいるけど、悪魔たちには会わない。そして……仲間とも会っていない。他人の心配をしてはいられないが、そうも言ってられない。ここは一つ、アレをして見よう。
「——聞こえるかい、龍使い」
『この脳に聞こえてくる感じは……』
最後の連絡から空いた時間は、ほんの少し。だが、迷っている暇はない。
「落ち着いて聞いてね。もうすぐ、地上に二体の悪魔が現れる。これは独断で調べたもの。だから——」
『言われなくてもわかっている。俺も準備の方は着々と進んできている。なに、足を引っ張るつもりはない。そちらの結果が悪かったとしても、その状況をひっくり返す。だから、お前も頑張ってくれ——喜響』
なんだ、わかってたんじゃないか。なんだか照れくさいな。
「君に応援されるとは、複雑な気持ちだよ。まあでも——君を殺すのは僕だからね」
『その時まで生きていたらな』
さて、僕も動くとしようか。あっちは龍使いと幻想郷の強者たちに任せて。僕は僕なりにできる事をしよう。これが彼らの為になると信じて。
とある一室にて。そこでは、七つの大罪の悪魔たちが二人を除いて集まっていた。
怠惰を司りし悪魔——ベルフェゴールは怠そうにしながら席に座っていた。
色欲を司りし悪魔——アスモデウスは己の精神を研ぎ澄ませていた。
強欲を司りし悪魔——マンモンは自身の手から金貨をジャラジャラと出し、欲を満たそうとしていた。
憤怒を司りし悪魔——サタンは本当に憤怒を司るのか疑問に思うほど冷静で、話が始まるのを待っていた。
そして、彼らを集めた暴食を司る悪魔——ベルゼブブは彼らの前に立ち、皆に声を掛けた。
「諸君、よく集まってくれた、感謝する。レヴィの事は把握しているが、ルシファーはどこへ?」
「地上さ。隷が欲しいからと勝手な行動をしやがって」
「ベルゼブブ、申し訳ない。俺が責任を取ろう」
ベルゼブブは微笑し、サタンを抑える。彼にとって、その事は特に問題は無かったのだ。
「まず、ここに侵入した者たちについてたが……」
「私は手っ取り早く終わらせました。怠いものですからねぇ……」
「俺様も苦戦を強いられたが、まあなんとかなった」
「俺の相手は……色々あったが撃破した」
「我の相手はなかなかの強者であった。我の本気の七割を出させたのだからな」
各自に語る悪魔たち。その結果に、ベルゼブブは満足しているかに見られた。しかし、そうでもなさそうでもある。
「ルシファーも侵入者を一人撃破したとして五人……ここに侵入したのは七人だ。後の二人は——」
「おーい、ベル〜。あ、ベルゼブブの方ね」
呑気な様子で部屋へと入る人物。そう、彼女こそ嫉妬を司りし悪魔——レヴィアタン。
「どうしたレヴィ。お前には待機していろと命じていた筈だが?」
「悪い悪い。でも知らせておきたい事があってね。——その二人の内の一人と見られる人物を撃破。どうやら、姿を消していたみたいだ」
その報告に驚く悪魔たち。しかし、ベルゼブブは驚く事なく、上機嫌だった。
「すみませんレヴィさん。私は貴方を嘗めていたみたいです」
あまり気持ちが篭っていない声で謝るベルフェゴール。それに対して、レヴィは少し妬んでいた。
「静粛に。これからの事について今から話す」
その掛け声に反応し、悪魔たちは口を閉ざす。そして、ベルゼブブは語り出した。
「まず、今から我とレヴィで地上へと出向き、大量の魔物たちを投入する。奴らの小手調べと言ったところか」
「その必要はないんじゃないか?」
そう意見を述べたのはマンモン。それに横槍を入れたのは、アスモデウスだった。
「あの頃から数万年が経った今、地上の者達の力量が変わっていないとは言えまい。万が一に備えての事」
「うむ。そういう訳だ。そこで皆の魔物たちも集めさせてもらう。構わないな?」
「隷さえ残してくれたら構いませんよ」
ベルフェゴールの言葉に賛同する、他の悪魔。
「決定だ。地上を我らのモノにする為に! 皆、各自解散!」
かなり時系列がごちゃごちゃになっていますが、謎の空間の時間の進み方は遅いです。なので、喜響が幻真と交信をした時は既に椛との修行を終えた後。
という事は、ルシファーは既に…




