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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
114/155

第110話 大罪の天使たち

どうも、狼天狗です。

毎度閲覧ありがとうございます。

今回は二人目の覚醒者が出ます。と言っても、別人格なのですが。

詳細に関しては、後書きの方にでも簡単に載せておきます。


それでは、どうぞ。

 〈火御利〉



 狼たちと別れてから探索すること数時間。私は、ある大きな扉の前に辿り着く。その大きな扉からは、何か嫌な気配を感じていた。


 この事を伝える為に連絡を入れようと、狼のことを思い浮かべる。


 もしもし、狼? 聞こえる?


『ピピッ——アー、アー。聞こえますよ。何か見つかりましたか?』


 ええ。今謎の扉の前にいるわ。それで、入ろうと思うんだけど……


 その直後、背後から奇妙な声が聞こえてくる。すぐに振り返ると、金色の炎を纏った異形の魔物たちがゆっくりと迫って来ていた。




 ——傲慢。


『え?』


 ごめん、邪魔者が現れたからそっちの相手をしてくるわ。後でまた連絡するわね!


 私はそう言い残し通信(テレパシー)を切る。最も、後で連絡すると言ったが、生きていたら(・・・・・・)の話である。


 そんな弱音を吐いてる暇もない。無幻(メビウス)を取り出し、呼吸を整える。


 魔物たちが貯め技を行おうとするその隙を狙って、数本のナイフを投げる。そして、魔物たちの体を貫いた。


 一息吐く私。と、ある事を思い出す。


「そうだ、あの大きな扉の事、忘れてた」


 気を引き締め、扉の前に立つ。禍々しい気配を漂わせるその扉に対し、足が竦みかける。こんな所で立ち止まってはいられない。


 すると、横にあった灯篭に金色の炎が灯る。一体この先に何が待ち受けているのか。覚悟を決めた私は、扉の先へと足を踏み入れる。


 その中は、真っ暗闇な空間。ギギギと閉まる大きな扉。気付いた時には、完全に閉まっていた。


 そして、ボッボッボッ……と壁に設置されていた松明に金色の炎が灯った。


 気味が悪くなり、再び通信(テレパシー)を起動する。連絡先はニックだ。


『ピピッ——もしもし、ニックです。火御利さん、どうかされましたか?』


 良かった、繋がったわね。今謎の大きな扉の中にいるんだけど、一応伝えておこうかなって。


『もしかして、閉じ込められた……?』


 図星だった。私は小さな声で返事する。その直後、突如として頭が割れるような激しい痛みに襲われる。


 なに……この痛みは……!


『火御利さん?』


 頭が……痛い……!


「どう? 私の傲慢。そして、この傲慢さの前に平伏すがいい」


 私を見下ろし、そう話す人物。激しい頭痛に耐えながら、顔を上げる。その視線の先には、金色の炎を纏った女性がいた。


「このまま私の隷にならないかしら?」


「隷ねぇ……断るわ。いい気になるのも今の内よ。感情解放『傲慢』」


 その場を打開するには、この方法しかなかった。先程の私は、傲慢なる感情に押し潰されかけていた。なら、いっそのこと自分も同じ様にすればいい。こういった発想だ。


「あら……傲慢で対抗してくるのね」


「その生意気な口、利けなくしてあげるわ!」


 感情解放により跳ね上げた全能力。私の相手は格下。その意思を揺るがさず、戦いに挑む。


 縮地によって超高速で相手の目の前へと移動する。相手に反応させる事なく、腹部に一発、打撃を入れる。能力を上げて繰り出したその攻撃は、強烈な一撃となった。


「うぐっ……私の体を傷付けるとは、いい度胸ね……いいわ、私も応えてあげる」


 女性は両手を広げ、ゆっくり上昇していく。その様子を見届ける事なく、地面を蹴って女性の元へ向かう。


「私の名はルシファー。傲慢を司りし悪魔……!」


 ルシファーはそう言い、両手をこちらに向けて傲慢の金色の炎を纏ったレーザーを放つ。空中ではどうする事もできなかった私は、その攻撃を受けた。


「うぐっ……!」


「ふふふ……残念ね。もうちょっと楽しめるかと思ったんだけど、おしまいかしら?」


 地面に横たわる私に近付いてくるルシファー。いつの間にか感情解放は解けていて、素の状態だった。もう……おしまいなのか? 私はここで終わるのか?


「——いいえ、決して終わらせないわ! 感情爆破『傲慢』!」


 その傲慢さは、周りの生き物を恐れ慄かせ、跪けさせる。だが、相手も傲慢。その効果は無意味に等しい。ただ相手は、感心して見ているだけだった。


「素晴らしい傲慢さね。でも、諦めが悪い事。直ぐに終わらせて上げ——うぐっ⁉︎」


「終わらせて上げるのは私よ!」


 荒い呼吸をしながらも全能力を上げた自身の拳は、ルシファーの腹部に殴りを入れていた。それに続き顔面に蹴りを入れ、吹き飛んだ相手を追いかけ真上から踵落としを喰らわせる。彼女はそのまま地面へと落ちていく。


 ルシファーとの距離を取り、相手の様子を伺う。ヨロヨロと立ち上がる彼女の目は、怒りを表していた。


「かつて私は神に成り変われるはずだった……しかし、それに傲慢となり、神に反逆した……」


「反逆の堕天使……ルシファー……」


 私がそう呟くと、彼女は肩で笑い出す。高らかに笑い、まるで狂っているかの様。今の彼女は、全くの別人に見えた。


「ふふふ……それじゃあ、第二ラウンドと行きましょうか?」








 〈狼〉



 火御利から連絡があった後、念の為にニックに通信(テレパシー)を使って連絡を試みる。無事に繋がり、僕は単刀直入に火御利の事について問う。


『火御利さんは今、恐らく交戦中です。相手は——傲慢のルシファー。神に反逆したとして有名な彼女。耳にした事、あったりします?』


 いや、神話とかあまり知らなくて。でも、ルシファー(・・・・・)という名だけは、聞いた事あるかな。


 ルシファー……思えばこの七つの大罪の中で、僕が一番良く知る者なのかもしれない。とは言っても、伝聞したものに過ぎない。決して、何もかも知っているわけではない。


 すると、背後から何者かの気配を察知する。咄嗟に腰から刀を抜いて振り返る。暗闇の中、何かメラメラと燃えている気がした。


 一度通信(テレパシー)を切り、それに近付く。刹那、その者は目の前から姿を消し、どこかへと消えてしまう。辺りを見渡すも、それらしき姿は無い。だが……気配を感じる。まさか……!


「上か!」


「残念、下だ」


 その言葉が聞こえた直後、地中から尖った岩が出現する。それに反応しきれず、宙へと身を投げられてしまう。


 体を回転させてバランスを取り戻し、地面へと着地。再び辺りを見渡すも、やはり敵の姿は捉えられない。しかし、やはり気配だけは感じる。それは、上下のどちらかから。


「今度は下だ!」


「不正解。後ろだ」


 その言葉を耳にした時には、自分の腹部には刃が刺さっていた。腹部から流れる大量の血。口から血を吐き、刺さった刃と共に体が地面へと倒れる。嘘だ、どうして……?


「実に残念だな。久々の客だというのに、こうもあっさり死なれては。もう少し俺を楽しませて欲しかったのものだ。お前はもう立てまい。そのまま痛みを感じつつ、己の身が果てるのを待つがいい」


 聞こえてくるのは、野太い男の声。意識は朦朧とするばかり。駄目だ、眠ってしまってはおしまいだ。僕がここで果てる訳にはいかない。だけど、あまりにも致命傷過ぎた。最後の力を振り絞るも、動くのは僅か手の指だけ。その近くには、自身から流れ出る血の海があった。




 ——ここで、おしまいなのか?


『いいや、違うだろう。なんじはここで朽ち果てる運命では無い。汝の運命は、まだ途切れる事はない。さあ、我が力を持ってして、眼を覚ますのだ……!』




「ハッ……逝ったか。まだどこかに空いている客人がいるはずだ。そっちの相手でも——」


「どこへ行く? 憤怒の悪魔、サタン」


「なっ! お前、なぜ⁉︎」


「なぜ……? そうだな、強いて言うならば——我が運命は、ここで終わらない」


「……雰囲気が違う。先程のお前の中に、今のお前がいたと言うのか。ふん、笑わせてくれる。だが、まだ遊べるって訳だ。退屈させてくれるなよ? 風魔神(・・・)


「貴様もな」


 ピアンブローを生成し、風の加護を纏わせる。相手、サタンは先程刺された血が付着した剣を手に取り、黒い炎を纏わせる。そして、その一瞬としてお互いは剣を交えていた。これが縮地……超技術の力か。


「それにしても、今のお前はその者の体に憑依しているようだが……どうしてその様な者に?」


「お喋りが過ぎるぞ憤怒の悪魔。戦闘中にその様な態度とは、恥ずかしい。悪魔の名が腐るぞ? いいや、七つの大罪と言うべきか?」


「そんなのどうだっていいさ。俺は久しぶりの客と、ゆっくり楽しみたいだけなんだ」


「それは違うな。貴様のただの八つ当たりなのではないか? 大天使ミカエルからの……」


 サタンの持っていた剣が投げられ、背後にあった壁に突き刺さる。サタンの方を振り返ると、怒りの感情が膨れ上がり、黒い炎を帯びていた。これが憤怒の力。


 流石に挑発し過ぎたか。俯いたまま近付くサタン。剣を構え直し臨時体勢を取る。刹那、壁に刺さっていたはずの剣がサタンの操作によって、彼の手元へと高速で移動する。


 危うく当たりかけたところをギリギリで避け、相手の様子を伺う。


「お前は……一体我々(・・)どこまで(・・・・)を知っている……? 答えよ、風魔神!」


「どこまで……か。そうだな、貴様らが大罪を背負う前の過去も、我は知っている」


 傲慢の悪魔ルシファーと、憤怒の悪魔サタンとの関係性は深い。彼らは遥か昔、神に敵意を向けた。反逆の堕天使として有名な天使である。


 実際、我の肉体が存在していたその時代。サタンとは親密な関係でいた。色々あって交流する機会が多く、他の天使たちとも偶に会ったりもした。しかし、反逆後のサタンとの交流は一切途絶えた。


 恐らく、彼は記憶を失っている。我の名は覚えているが、どの様な関係だったのか、なぜ知っているのか。口にしないだけで、内心疑問に思っているはずだ。


 だが、ここで見過ごす訳にもいかない。今は自分に立ちはだかる一人の()。ならば、その敵を倒しのけ、我が宿命を果たすのみ。長時間憑依し続けるのも、この者の体に悪い。


「さて、終焉の時だ、サタン」


「それはこちらの台詞である。覚悟しろ……そして後悔しろ、風魔神ッ!」








 〈火御利〉



 あれから激戦を繰り広げること数時間。体力を消耗する私に対し、ルシファーの様子はちっとも変わらない。これが傲慢の悪魔の力……


「そろそろ諦めたらどうかしら? 大人しく私の可愛い隷になってちょうだい?」


「断るわ。貴方の隷なんて真っ平ゴメンよ。貴方もいい加減、力尽きたら?」


「何を言っているの? 力尽きる? この私が? 馬鹿馬鹿しい。図々しいにも程があるわ。いいわ。こうなったら無理矢理にでも洗脳させて貰うわよ」


 その言葉に危機感を覚えた私は、咄嗟にその場から離れる。元いた場所には、檻の様なモノが出現していた。避けなければ、あの中に捕まっていただろう。


 あれこれ考えている暇もなく、ルシファーは次から次へと私を捕縛しようと、しつこく追いかけ回す。追ってくるルシファーからの攻撃を躱しながら反撃するが、どうも攻撃が通らない。これでは体力を無駄に消耗しているだけだ。


 次に歩んだ時、その踏んだ場所から触手の様なモノが出てきて、私の足を拘束する。勢いのあまり転けてしまい、身が地面へと投げ出される。


「うぐっ……離して! 離しなさい!」


 触手は手首にも絡みつき、徐々に上昇していく。目の前には、不吉に笑うルシファーの姿があった。


 その後触手は首元にも巻きつき、ゆっくりと力を強めていく。苦しみ、踠き、助けを求める。しかし、その願いは到底叶わない。今この場にいるのは、私と——悪魔のみ。


「貴方の傲慢さ、気に入ったわ。安心して、いいように使ってあげるから……洗脳『傲慢』」


「ああ……ああああ!」


 私の感情は、傲慢に飲み込まれた。








 〈狼(風魔神)〉



 ん……? 何か不吉な感じがしたが……


「オラオラ! 余所見なんてしてる場合か⁉︎」


「そうだな、余計な事を考えてしまった」


 今はこの戦いに集中しよう。火御利の気が消えたが、一体何があったのか気になる。居場所がわかっているわけでもないから、会おうとする事自体が困難である。仕方ない。さっさとケリをつけよう。


「『武器強化(ウェポンアップ)』。すまないが、手短に終えさせてもらう。乱撃『吸血鬼殺し(ヴァンパイアロザリオ)』」


 強化したピアンブローで、数連撃の攻撃をサタンへと繰り出す。剣で自身の身を守るサタンに対し、容赦なく斬りつけていく。


 ある一撃が入ろうとしたその時、自身の得物が弾かれ、それは空中を舞い、地面へと突き刺さる。そして、自身の首元にはサタンの剣尖が向けられていた。我は——




 ——死を覚悟した。


「終わりだ、風魔神。何か遺言は?」


「……どうしてこうなってしまったんだろうな。貴様も本当はわかっていたんだろ? 間違った行いだと。答えろ、美しき大天使長」


「……いい加減に昔の事を話すな! もうどうでもいい! おしまいだ! 風魔神ッ!」


 赤き液体は黒光に照らされ、宙を舞った。

今回は中々執筆できたではないかと、我ながら思っている限りです。

こちらは、ルシファーとサタンについてと、狼に宿る風魔神についてです。


・ルシファー【傲慢の金色の炎】

銀髪に金色の瞳を持つ女性。身長は高め。七人の中では一番に極悪で狂人。とことん僕を欲する。神に歯向かった反逆の堕天使として有名。一人称は私。


・サタン【憤怒の黒き炎】

黒髪に一般人と変わらない黒い瞳を持つ男性。一番の高身長。ルシファーとは深い関係。憤怒だからと言っていつも怒っている訳ではなく、ある一線を越えると怒りが増す。彼もまた、神に歯向かった反逆の堕天使として有名。一人称は俺。


・風魔神

狼に取り付く風の魔神。数万年前までは自身の体を所持していたが、ある出来事が起こり自身は魂だけとなる。そして幻想郷へと流れ着き、何を思ったのか、狼に憑依。契約が結ばれた。

天使や神々とも、交流が深かった。一人称は我。

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