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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
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第107話 謎の空間

悪魔大罪伝、始動。

 時は遡ること数ヶ月前。狼たち一行は、問題の"謎の空間"の先へと足を踏み入れようとしていた。


 助言された通りに、彼らは一斉に入り口へと強烈なダメージを与える。すると、みるみると別空間へと繋がる狭間が現れた。


「時龍、先に行ってこい」


 目を丸くした表情で、自分を指定した想起を見る時龍。何かムカついたのか、想起は時龍を蹴り飛ばして空間の中へと無理矢理行かせた。


「大丈夫だ。あんな馬鹿、どうせ不死身だ」


 想起はこんな人物だったかと頭を掻きながら思う狼。火御利が彼の肩に手を乗せて言った。


「早く行きましょう。先に行ってるわよ」


 想起が入って行った後に続く火御利。呑気に欠伸をしていた喜響も後に続いて、和正も無言で付いて行く。


「あの、ニック……」


「緊張する事はないですよ。皆自分の命優先で戦いますし。正直、行きて帰れるかは不安です。ですが、決して振り返らないでください。前だけを見続けて」


 ニックは狼にそう言い残し、彼を残して空間の中へと消えて行った。


 ふと、彼は満点の星空を見上げる。彼にも名残はある。だが、仕方なし。自分で決めた運命なのだ。今更抗うわけにもいかないし、変えるつもりもない。ニックに言われた通りにする……彼はそう決めた。








 〈狼〉



 その空間は、とても不思議な雰囲気だった。周りは暗闇でありながら、周りが見えるほどの明かるさはある。時刻で表すと、だいたい黄昏時ぐらいだろうか。


 まるで迷宮。ダンジョンみたいだ。地形は入り組んでおり、階段は多数存在し、床自体が存在しない箇所もあった。足を踏み外せば、どうなるかは想像もしたくない。そんな場所。


 人数を確認すると、四人しかいなかった。時龍、喜響、和正の三人がいなくなっていたのだ。


 目を離した隙にいなくなる。どうしたものかと、僕は頭を悩ませる。


 すると、想起が発言した。


「俺たちは固まって行動だ。この先何があるかわからない。気をつけながら時龍たちを探すぞ」


 自分を含めた三人は賛成。常に警戒を解かずに、探索を始めた。






 ある程度探索している中、目の前に数体の異形な怪物たちが現れる。その者たちからは、何か感情的な——特別強いモノが感じ取れた。


 次の瞬間、彼らは紫色(・・)の炎を纏い、そこから飛び散った炎が地面に触れると、異様な音と共に消えた。



 ——何だアレは?



 そう思いつつ、毒剣ヴリトラを構える。しかし、様子が変だった。それは相手ではなく、想起と火御利の二人だった。


 何か知っている……そう思った僕は、二人に質問しようとする。だが、その前に想起が言葉を発した。


「……あれは暴食だ」


「暴食?」


「暴食って、あの七つの大罪の?」


 後衛にいたニックが、何か知っているかのように想起に問い返す。想起は息を飲み込むと同時に頷き、ゆっくりと獄炎刀ニズヘグを構えた。


 想起が地を蹴ると同時に、異形の怪物共は紫色の炎を飛ばしてくる。それに対して、想起は刀を真っ直ぐ縦に振り下ろして炎を切り裂いた。


 彼は超技術のエンチャントによる霊力を刀に纏わせ、斬術による解析で最適な場所を斬っていく。異形の怪物は悲鳴を上げて、暴食の炎を撒き散らして粉砕した。


 刀を鞘に収め、溜息を吐く想起。彼がこちらに振り返った時、彼は赤い炎を纏った手のようなものに包まれてしまった。


「なんですかあれは⁉︎」


「もしかして、また七つの大罪……? 確かあの炎の色は——怠惰」


 怠惰だって? 想起を助けようと包まれている手の方に行こうとすると、火御利に止められた。


「やめなさい! 怠惰は人のやる気を奪うのよ!」


「でも想起が……!」


「俺は大丈夫だ。生憎、怠惰には強いんでな」


 包まれた手の中から聞こえてきた想起の声。火御利の手を振り払い助けに行こうとしたその時、彼はその手によって連れ去られてしまった。


 追いかけようとしたその時、再び異形の怪物共が残された僕たち三人を囲う。今度は赤い炎を纏っていた。


 僕は毒剣ヴリトラを手に取り、火御利は腰に備えられた無幻(メビウス)を三本指の間に挟んで構え、ニックは光杖ラルクアンシエルを封印のための袋から抜いて構えた。


 囲っていた怪物たちが一斉に真ん中に来る瞬間を狙って空中に逃げ、僕たちの総攻撃が行われた。


 自分は毒の着いた斬撃を飛ばし、火御利はいくつものナイフを空中に浮かべて一気に飛ばし、ニックは大きな光玉を作って怪物たちへと飛ばした。


 しかし、そう一筋縄ともいかない。空中に固定された怠惰の炎の壁によって、奴らの身が守られてしまう。


 攻撃は完全に防がれてしまい、迎撃されないよう素早く地面に降り、超技術の縮地を使って怪物たちに飛び込んで行く。しかし、異変が起きた。



 ——力が入らない。



 これが七つの大罪、怠惰の力なのか? 身に染みる怠惰の感情。膝を突いて迫って来る怪物たちを見上げる。ダメだ、体が言うことを聞かない……


 怠惰の炎が飛んで来ようとした時、目の前に誰かが現れて攻撃が防がれた。


 それは、金色の炎を纏った——火御利だった。


「感情解放『傲慢』。正直、まだ制御に慣れないわね。狼、離れてて。貴方も巻き込まれると大変だから」


 金色に染まっていた火御利の目が輝き、僕は頷いてニックのいる場所へと下がった。


 ニックの隣に行き、僕は息をゴクリと飲み込んで火御利の勝負を見届けようとする。ニックは耳打ちするかのように口元を僕の耳元に近付け、何か話した。


「七つの大罪の力は計り知れません。他人の感情をも飲み込むほどの膨大な力を持ち、制御も困難とされてます。正直、この空間に長居するのは気が引けますね」


 僕もそう思う。ニックの言葉に賛同するように頷き返す。そうこう考えているうちに、火御利の戦闘が行われようとしていた。


 金色の炎——即ち、傲慢の炎を纏った火御利は、その炎を自身の持つ武器であるナイフに灯す。そして、投げられたナイフが怪物たちの体を貫通させた——かのように見えた。


 そう甘くはなかった。火御利の傲慢より、怪物たちの怠惰の感情の方が上手だったのだ。


「なかなかやるわね……なら、これはどうかしら! 感情爆破『傲慢』!」


 するとその瞬間、怪物たちは慄き、膝を突き始める。感情爆破によって火御利の感情の方が勝ったのだろうか。


 火御利は再びナイフに金色の炎を纏わせ、怪物たちを駆逐した。

 

 火御利は己に纏う金色の炎を解き、溜息を吐く。


「感情に飲み込まれ兼ねないわ」


「やりましたね、火御利さん! 体の方は大丈夫ですか? 良ければ治癒しますよ」


 ニックはそう言い、回復をする手振りを見せる。火御利は小さく頷き、治癒をお願いした。


「これで大丈夫ですね」


 一汗拭うニック。


「ありがとう、助かったわ」


 感謝する火御利。


「さあ、想起たちを探しに行こう」


 僕は二人に行動を促す。


 新たなる戦いが今、行われようとしていた——

七つの大罪などについては、とある先生を参考にさせていただいています。

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