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東方人獣妖鬼  作者: 狼天狗
第参章 悪魔の目論見
110/155

第106話 挫けてはならない

お待たせいたしました。

今回にて地霊殿終了です。

次回から新章、オリジナルストーリーへと進みます。

 〈幻真〉



 時刻は深夜。夕食は取っていないため、腹が鳴る。しかし、然程気にならない。いや、気にしていない。


 今は妖怪の山にある狼の家にいる。あの時——皆が遠出しに行った時、俺がこうなる事を予想してか、何かあったら僕の家を借りて良いよと狼に言われた。現にこうして借りている。


 妖夢に頬を叩かれた事については、後悔していない。寧ろ、何かスッキリした。俺の心にあった、モヤモヤが晴れたような気がした。


 今持っている武器は雷刀ゼニシアと日本刀。後は霊力や魔力を使っての武器やスペルカードぐらいか。楼観剣と白楼剣は白玉楼に置いてきたから、妖夢に返した事になる。




 取り敢えず、明日の予定を立てよう。実はある剣術(・・)を習得したいと考えている。それは、抜刀術とアクセルソード。


 アクセルソードは、その名の通りアクセルモードによる効果を剣に纏わせ攻撃を行う。何、難しい事では無い。アクセルモードを使える者は気を剣に纏わせるだけだ。一応、過去に実践しているが今回は完璧に使えるようにする。


 そして、抜刀術。こちらは精度も問われ、実力も問われる。どれだけ正確に技を放ち、素早く攻撃できるかが肝心なのである。


 修行はそこら辺にして、暴走化されたこいしとフランに話を聞きに行こうと思っている。実際、予想や考察よりは聞いた方が情報量は多い。いい感じに読み取らなければな。




 もう今日は寝よう。明日の朝は適当に山菜でも取りに行って朝食を作ろう。だいたい火を通せば食べられるものだからな。いつまでも、くよくよしていられない。


 星満天の夜空を目に焼き付け、俺は就寝した。








 〈魂魄妖夢〉



 時刻は深夜。私はふと目を覚ました。何か邪悪な気配を感じ取ったからだ。


 隣で眠っている幽々子様を起こさないように、そっと床から出る。楼観剣と白楼剣を装備して中庭へと向かった。


 すると、中庭には見知らぬ人物が立っていた。その人物は怪しい仮面を付けており、外見から少女と判断できる。私は恐る恐る近寄った。


「ん……? ——おや、キミがNo.003の愛人、魂魄妖夢……だったかな?」


 なぜ私の名前を知っている……? それにNo.003って……愛人って事は、もしや幻真さんの事を? できるだけ驚きを隠したまま、私はゆっくり口を開いて問い詰める。


「どこで私の名前を知ったか、そちらも気になりますが、その……No.003って?」


 仮面の中の少女の表情は、笑っているように思えた。


「キミが察している通り、幻真だよ」


 私は耳を疑った。幻真さんの言っていた事は本当だったって事? そんな、有り得ない! 信じたくなんか無い!


「混乱しているようだね。そんなキミには、これがかけやすい……ふふっ……」


 少女が指を鳴らした直後、私の意識は遠退き、暗い闇の底へと落ちていった。








 〈幻真〉



 明くる朝。俺は家の戸が叩かれる音で目が覚めた。眠たい目を擦りながら、そこへ向かった。


 その人物は、白狼天狗の椛。彼女は驚いていた。その理由はわかる。


「色々あって借りてるだけだ。無断使用じゃ無いから安心しろ。んで、なんの用だ?」


「……えっと、本当は人の姿が見えたと聞いて気になって来ただけだったのですが、貴方に会いに行く手間が省けました。私に稽古をつけてもらえませんか?」


 頭を下げる彼女。俺は耳を疑った。どうして急に、そんな稽古だなんて。俺より椛の方がまだ剣術は上手そうなのに。


 しかし、いい機会だ。俺も抜刀術を習得しようとしていた所だった。一緒に行えば一石二鳥だろう。俺は了承した。


「場所は……そうだな、滝の近くにしよう」


 彼女は賛成した。というか、警備の方は大丈夫なのだろうか? 支度をした後にでも聞いてみるか。


 日本刀と雷刀ゼニシアを腰に備え、外で待っていた彼女の元へと行く。まず目に飛び込んで来たのは、この濃霧。参ったな、何も見えやしない。


「この濃霧だからこそ、できる修行もあるもんですよ?」


 彼女はふふんと自慢するかのように鼻を鳴らして、濃霧の中へと消えていく。俺は察した。この視界の悪い状況だから出来る修行。それは——


「相手の気を感じ取ること!」


 濃霧の中から刀を振って出てきた彼女の攻撃に対し、日本刀を素早く抜いて攻撃を受け止める。因みに、これは抜刀術の下準備でもある。


 再び彼女は濃霧の中へと消えていく。俺は目を瞑り、相手の気を感じ取ろうとする。神経を研ぎ澄ます。感じ取れ、僅かな気配を。


「ここか!」


 濃霧の中から出て来た彼女の攻撃を、右手に持っていた日本刀で受け止める。素早く下がった彼女はそのまま突進してくる。


 注意するのは、あの刀。弾幕を放てることを忘れてはならない。そう、斬撃を入れてくるように見せかけて——


「弾幕を飛ばしてくる!」


 放たれたホーミング弾を予測し、斬り裂いて対処する。刀を振ったと同時に下がった彼女へと縮地で一気に迫り、日本刀で一振り。しかし、横振りだったため攻撃はしゃがんで躱され、足に蹴りを喰らって体勢が崩れる。


 肉対戦も上達させておくべきか。ヨロヨロと体を起こし、いつの間にか消えていた彼女の気配を感じ取る。先程の動きで若干体力は消耗しているため、呼吸が聞こえる。位置は背後へ約十歩。


 静かに足を歩み寄せ、近付く鼓動。十歩目で彼女が出て来て、刺突をしてくる。その攻撃を雷刀ゼニシアで受け止め、アクセルモードの水色のオーラを日本刀に纏わせ、振り翳した。


「うぐぅ……」


 攻撃をまともに喰らった彼女はその場に倒れ込み、荒い呼吸をする。ゼニシアと日本刀を収め、椛の横に座り込んだ。


「天候の利用と肉対戦の活用を教えてくれてありがとう。為になった」


「幻真さんはお強いですね。到底敵う気がしませんよ」


「そんな事はない。修行あるのみだ。俺だって、最初から強かったわけじゃない。修行を積み重ね、ある時は特訓してもらって強くなった」


 いつの間にか晴れていた濃霧。見上げると、じりじりと照らす太陽があった。空は快晴。濃霧が嘘だったかのような天候であった。


「さて、滝へ行こうか。俺も時間がない」


「それはどういうことですか?」


 問い返す椛に対して、一度彼女の顔を見るが、視線を逸らす。そしてもう一度、次は彼女の目を見る。葛藤から俺は深く溜息を吐き、戸惑う。謎の空間の先……彼らが無事に熟せると信じたいが、万が一の時もある。それがいつかわからない。だから、もっと早くやらなければ。


「わかりました。人には言えない事だってあるもんですよね」


「すまない。またいずれ話す。絶対に」


 やや気不味い空気の中、滝へと向かうのであった。






 滝の付近へとやって来ると、誰かが機械のようなものを弄っていた。その人物は、以前会ったエンジニアの河城にとりだった。近付いても反応がないため、背中を二、三回叩く。しかし、それでも作業に没頭していて反応が無い。仕方無く、弾幕を二つ程出現させそれらを爆発させた。


 驚いたにとりは飛び上がる。しばらく慌てふためく彼女だったが、俺たちに気が付いて溜息を吐いた。


「はあ〜ビックリした! なんだ、盟友と天狗か」


 彼女が人間を盟友と呼ぶ理由は、以前に霊夢から聞いていた。確か、人間に対しての友好度が高いからだったか。


「驚かして済まないな。あまりにも反応がなかったもんでな。それで、何を作っているんだ?」


「ああ、これかい? いずれ君にも見せてあげるけど、今は秘密だよ。でも、ちょっとだけヒントを上げるよ。時間移動……ってところかな」


 その言葉を聞いた俺は、一瞬驚きと共に凍りついた。——時間移動。聞いた事があるのは、タイムマシンと呼ばれるもの。そんな物を作ってどうするのか。だが、にとりの事だ。乱用はしないだろうし、悪用するわけもない。ただの趣味程度なのだろう。


 取り敢えず、その話は置いといて今からここで修行をする事をにとりに伝える。彼女は一瞬悩む素振りを見せる。断られてしまうだろうか。その時はその時だが。


「……いいよ! その代わり、この辺りで君たちの邪魔にならない安全な所で作業を続けさせてもらうよ」


 すまない、と頭を下げて承知し、にとりが離れて行ったのを確認して一息吐く。


 取り敢えず、今したいことは修行の前に椛の持つ刀を見せてもらうこと。別にどこかの鍛治職人みたいにマニアックに見たい訳ではないが、なんというか——興味を持ってしまう。一度見せてもらえないか、椛に頼んでみた。


「構いませんよ。因みに、これは狼さんに頂いたものです。彼自身が使っていた所を見た事がありませんでしたがね」


 恐らく付き合いの長い彼女がそう言うのだから、そうなのだろう。それにしても、なぜ使わなかったのだろうか。確か名前は天狗式・秋松月あきまつき


 刃筋には赤い模様が描かれており、柄の部分が特殊で普通の刀とは少し違い、握ると言うより掴むという感じであった。まあ、大した違いはない。


 試しに振ると、自分でも弾幕を飛ばせた。となると、刀自体に妖力が籠もっている事になる。つまり、これは妖刀と言っても過言ではない訳だ。


 その刀を彼女に返し、修行の再開をする。


 ここからするのは抜刀術。気を研ぎ澄まし、一瞬にして刀を抜いて相手を斬り捌くこの抜刀術には、三通りある。


 瞬・峰・連。瞬と連は主に攻撃特攻型だが、峰は頭から取っているように、峰打ちを指す。瞬は一瞬。連は連続。ネーミングセンスなんて知ったこっちゃない。


 これのコツは、やはり抜刀術というぐらいなのだから、一瞬にして刀を抜く事にある。この技の上達方法は? と問われても、やはり修行あるのみ。人は鍛錬を重ねて強くなる。


 取り敢えず、早く抜刀する事を心がけて技自体の応用も兼ねつつ、修行を進めていく。椛には、連切を習得させるために刀の振り速度を極めてもらう。連切は基本二刀だが、一刀でも問題ない。自分も上達に向けて、修行に没頭した。






 夕刻。昼飯はにとりからご馳走になった。


 技というのは、そう簡単に習得できるわけではない。毎日の鍛錬が実力へと繋がる。"塵も積もれば山となる"という諺があるように。



 椛とにとりと別れ、狼の家へと足を歩ませる。こいしとフランに聞きたい事があったが、仕方あるまい。明日以降にでも日を改める事にし、夕飯を作る支度をする。


 帰り道に見つけた山菜を適当に炙って頂く。腹は満たさなかったが何も食わないよりはマシだろう。今日は風呂に入って、さっさと寝て体を休めよう。いつ何時敵に対応できるように、万全の状態にしておかなければならないからな。

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