第102話 八咫烏のチカラ
今思えば、ストーリーを若干間違えていました。ですが、このままで行きます。あくまで他の世界線でのお話……とでも、思いながらご覧ください。
突如頼まれた、おりんからの依頼——おくうこと、霊烏路空と言う名の地獄鴉を助けてほしいとのこと。
事情によると、おくうはある日訪問して来た山の神、神奈子と諏訪子によって齎された八咫烏の力を取り込み、急激に力を付けていったとの事。
もしかして、その為に地上に怨霊を送っていたのか。というか、また守矢の仕業か。霊夢が聞いたら怒るだろう。かと言って、俺一人でおくうを止められる確証も無いな。
「でも、その前にあたいと一度弾幕ごっこをしてほしいな。本当に止めるのに相応しいか試したいから」
「俺の他にも仲間がいる。俺が勝ったら、そいつらのことも認めてくれるか?」
彼女は大きく頷いた。
この暑い中、お互い距離を取って開始を待つ。そういえば、話が次々進むせいで把握できていなかったが、ニュクスと名乗る俺の製造者……このまま自分が力を付けてしまって良いのだろうか。実際、今はある程度の力が盗られている状態。恐らく、力を奪い返したらニュクスは俺の力を奪ってしまうだろう。そうなれば、幻想郷の危機に堕ちかねない。
「おーい、考え事してるの?」
「……あ。ごめん、なんでもない。そっちから来てくれ」
「そう。まあ良いや。それじゃあ始めるよ。猫符『キャッツウォーク』」
彼女は猫の状態になってジグザグに移動しつつ、飛び跳ねた場所から放射状に米弾を発射してくる。
俺は咄嗟の判断で横に避ける。悩んでいても仕方がない。今は目の前の事に専念しよう。
避け終えた直後に、スペルカードを宣言する。
「闇明『光業暗星』」
白は輝き、黒は禍々しいオーラを出している勾玉が描かれたスペルカード。これは威力が可笑しいが、大丈夫だろうか。
闇属性と光属性を纏うこの弾幕は、耐久値と貫通性が施されている。即ち、簡単には撃ち落とせない。更に闇属性の弾幕が破裂した後には、滅神龍ラグメルリアの瘴気を拡散させるようにしている。
彼女は猫状態のまま弾幕を躱す。破裂した闇属性の弾幕を目の当たりにし、危険を感じたのだろう。
瘴気は辺りに漂う。普段は瘴気を纏わせていないが、やはり威力が違う。弾幕ごっこには適していないな。
彼女は人状態に戻り、瘴気に耐えながらもスペルカードを唱えて来る。
「呪精『ゾンビフェアリー』」
発動と同時に青白い妖精が召喚される。彼女が時計回りに弾幕を乱射する一方で、召喚された妖精、ゾンビフェアリーが自分に接近して来る。
ゾンビフェアリーに対して攻撃すると、天使の輪っかを出して弾を放ちながら少し吹き飛び、暫くするとまた蘇った。
ゾンビフェアリーの数は、どんどん増すばかり。鬱陶しい。囲まれるのも時間の問題だ。一掃するしかないな。
「感情爆発『希望』」
展望龍アルカリオスを召喚したと同時に隕石を降らせ、ゾンビフェアリーを全滅させる。それによって、フィールドが凍結した。
「そんな!」
「やっぱ威力が強いな。だが、これで決めるぜ。終唱『真霊蝶砲』」
最低威力の終焉地獄と同等の威力を誇る、霊力による砲弾を放つ。それは、彼女に直撃した——はずだった。
壁が抉れているだけで、彼女の姿は無かった。そう、おりんは猫状態になって攻撃を逃れていたのだ。
人状態に戻った彼女は、照れ臭そうにしながら俺に降参の意思を見せた。
すると、灼熱地獄跡の入口であろう場所から集団で来る人の声が聞こえて来た。
「あっついわね〜。って、幻真じゃないの」
「遅かったな。萃香さんたちは?」
「旧都を見て回ってると思うわ」
「そうか。で、そこの桃色髪の少女は?」
「地霊殿の主、古明地さとりです。おりん、なぜおくうの事を隠していたのですか? この事だけは貴方の口から聞かせて下さい」
この事だけ? それに隠していたって、お空が八咫烏の力を取り入れた事か? もしかして、心を読んで——
彼女は静かにしてと言わんばかりに此方を見て睨む。心を読まれるのは厄介だな。どうぞ、お話を進めて下さい。
「だって……バレたらおくうがさとり様に処分されてしまうんじゃないかって思って……!」
「ええ、そうね。でもね、貴方たちは私の大事な家族なのよ? それに、守矢神社に住まう二方の神の仕業なのでしょう?」
あ、さとりさん、できれば霊夢の前で言って欲しく無かった。
心を読み取ったさとりさんと、状況を知る俺は霊夢の方に視線を向ける。案の定、彼女は怒っていた。
「霊夢から怒りの感情を感じます」
「言ってる場合かよ! 霊夢、一旦落ち着け!」
霊夢の隣にいた魔理沙が、霊夢を宥める。しばらくして、なんとか落ち着いた霊夢。ひとまず安心だ。
そう思えたのも束の間。中央の真上から一つの気配を感じた。
俺は楼観剣を構える。霊夢も続いて、お札とお祓い棒を構えた。魔理沙はミニ八卦炉を片手に様子を伺う。
降りて来た人物は、白のブラウスに緑のスカートを履いていて、長い黒髪に緑の大きなリボンを付けていた。
鴉らしい真っ黒な翼には、上から白いマントをかけており、そのマントの内側には宇宙空間が映し出されているように見えた。
それに、腕には融合したような筒状の棒が付けられている。他の部分にも、その様子が見受けられる。
「おくう!」
「あ、おりん! この力で地上を破壊して、新たな灼熱地獄を作るんだよ!」
「あいつ、とんでも無い事を考えているな」
俺は呟く。おりんは歯を食いしばり、さとりさんも動けないでいる。すると、融合された筒状の棒に何かを溜め込むと同時に、何かを言っていた。
「異物発見。標的、剣士。炉心の温度低下に注意。発射体制に移る」
変な口調だな。それに、俺が狙われている。くそッ、引き付けるか。
中央にいるおくうの様子を伺いながら、その周りを走る。
おくうは俺の足元に向けて弾幕を発射し、俺は素早く真上に避ける。あまり飛ばないのが賢い選択だろう。空中だと避け難い。
「あれは本来のお空の姿ではありません。彼女の能力は"核融合を操る程度の能力"。あの腕もそうでしょう」
「これは第三の足、多角柱の制御棒。炭化ホウ素、カドミウム合金、インジウムなどが材料となる。右足は融合の足。核融合反応によって鉄をイメージさせている。左足は電子が絡みついた分解の足。そして、この胸から飛び出す大きな真紅の目が、赤の目。ふふふ……」
最後に不吉な笑みを浮かべるおくう。油断できないぞ。霊夢たちと連携を取ろう。
俺は縮地で霊夢たちの元へと戻る。そして、作戦を話した。
俺が囮となり、おくうが気を取られている間に霊夢たちが攻撃を撃ち込む。もちろん、一筋縄ではいかないだろう。だから、俺も攻撃を撃ち込んで加勢する。
この作戦のカギとなるのが、さとりさんだ。心を読める彼女なら、お空の攻撃も読めると踏んだからだ。
早速作戦に移る。楼観剣を振りかぶりながら、おくうの元へと飛んで行く。飛んでいる彼女は、制御棒をこちらに向けてスペルカードを宣言した。
「核熱『ニュークリアフュージョン』」
彼女は丸弾を全方位にばらまきつつ、超巨大な狙い弾を放射状に発射して来る。レーザー並みの大きさだ。避けるのが妥当だろう。
霊夢たちの方へ飛んで行った丸弾は、霊夢のお祓い棒とお札弾で防がれた。
おくうも霊夢たちが何もしない訳が無いと思っているだろう。こうなったら、当たって砕けろだ。
しかし、おくうは再びスペルカードを宣言してくる。
「焔星『十凶星』」
周囲に十個のエネルギー体を出現させ、外側五個が時計回りに、内側五個が反時計回りに運行する。
このエネルギー体は避けるしかない。動く方向は一定だ。
すると、謎のサイレンが鳴り出す。
「マズイですよ……幻真さん! 気を付けて下さい!」
『Caution! Caution!』
「『ヘルズトカマク』」
さとりさんに警告される中、おくうは恒星弾化する中弾が上下に出された後、根本であろうスペルカードが唱えられ、上下を塞ぐほどの巨大な恒星弾を出現させて、そこから全方位に光弾をまき散らして来る。
俺は被弾してしまい、壁に埋め込まれる。
「幻真!」
「仲間の心配をしているヒマは無いよ」
〈霧雨魔理沙〉
幻真を助ける隙も与えず、おくうは制御棒から弾幕を発射してくる。予定が狂ってしまった。一体どうしたらいいんだ。
弾幕を躱しつつ、さとりはおりんと何かを話す。
「貴方は幻真さんの救出へ。私たちはお空を食い止める」
「でも、さとり様……」
「心配しなくても大丈夫よ。なんせ私は、貴方たちの飼い主なんだから」
おりんは名残惜しくも、言葉を飲み込んで幻真の元へと走って行った。
一方の私たちは、おくうの攻撃を躱しつつ、作戦を練る。幻真の役割を霊夢が行い、幻真の救出が成功すれば、私とさとりと一緒に攻撃を撃ち込むという算段だ。
さとりは異論無し。私は霊夢に危険を押し付けることに戸惑いを感じたが、彼女を信じて反論しなかった。
作戦を実行へと移す。私たちは定位置に止まり、霊夢はお祓い棒を振って陰陽玉を展開し、おくうへ飛ばす。
おくうはまたもや、スペルカードを唱えた。
「焔星『フィクトスター』」
巨星弾の群れが彼女を中心に回転しつつ、丸弾を全方位に発射してくる。巨星弾の数は八つ。先程の十凶星の下位互換と言ったところか。
巨星弾により、陰陽玉は相殺される。なんて威力なんだ。触れたらひとたまりも無いだろう。
すると、聞き覚えのあるサイレンが鳴り出す。
『Caution! Caution!』
「これは……霊夢さん、気を付けて下さい!」
「『地獄極楽メルトダウン』」
おくうによって唱えられたスペルカードは、上下を巨大な火の玉が覆い、霊夢がその二つに挟まれる。更に、時間経過とともに火の玉から発射される弾幕の速度が上がって行く。
「うぐっ、こうなったら……『夢想天生』」
無敵状態になった霊夢が陰陽玉を展開し、紫のお札弾ワイヤーを扇状に展開する。更に、それはおくうを狙う赤色のお札弾へと変化していき、だんだん展開が早くなって行く。
「ひっ……そんなのズルイよ!」
霊夢に圧倒されるおくう。私は勝利を確信した。
「……霊夢さんの霊力が保ちそうにないですよ。あの技、まだ完璧ではないのでしょう」
さとりの丁寧な解説に霊夢の様子を見ると、苦しそうにする霊夢の様子が見受けられた。だが、このまま私が助けに行って良いのだろうか……? それとも、霊夢を信じるべきだろうか……?
そう迷っていると、霊夢の技が解けて、弾幕が被弾しそうになる。だがその時、霊夢は何者かによって護られた。
「想符『アクセルモード2』……そして超技術、肉鎧」
そこには、水色のオーラに雷を纏う幻真の姿があった。更に、霊力による鎧を纏っていた。
「待たせたな。二重結界を貼れないほどの霊力の消耗か。やっぱり難しいんだな、それ」
霊夢は声を出せずとも、笑っている。その様子を見た幻真は微笑し、おくうに振り返る。
「決めさせてもらうぜ……終符『終末之光線』」
「最後の力を振り絞るわ! 霊符『夢想封印』!」
「行くぜ……魔砲『ファイナルスパーク』」
「手を貸します。おくうを元に戻すためにも……想起『恐怖催眠術』」
「数で押して来るのね……いいわ! 受けて立つ! 『地獄の人工太陽』!」
五人のスペルは勢い良くぶつかり合い、同時に爆発が起こった。
私は咳き込みながら、爆煙が止んでいく中で立ち上がる。相変わらず暑い場所だ。
周りを見渡すと、一人の人物が立っていた。幻真だ。その近くには、おくうと霊夢が倒れており、私の直ぐ近くにはさとりが倒れていた。
「ふぅ、終わったな」
「いんや、まだだ。霊夢を担いで守矢神社に行くぞ。妙な胸騒ぎがするからな」
幻真はそう言って霊夢を担ぎ、戦闘に参加していなかったおりんの元へと寄る。何やら話しているようだった。
話し合えた幻真は、そのまま元来た道を戻って行く。私は置いて行かれないように、小走りで後を追いかけた。
次回はエクストラ戦。だが、裏であの組織が動いていた…?




