第10話 紅に染まる館
俺たちは湖を後にして、紅魔館へと再び向かう。すると、数分経たないうちに大きな建物が見えてきた。
「お、見えてきたんだぜ」
魔理沙は目前にある建物を指差した。
「あれが紅魔館か……」
俺は一目見ただけで紅魔館だとわかった。紅魔館という名に恥じずに、いかにも紅々しかったからな。
「あれは……門番かしら?」
館というだけあって、門番はしっかりいた。大ちゃんが言ってた通りだったな。その門番を観察してみると、どうやら中国風の服を着ていた。俺たちは門の前へと降り立つ。
「むっ、貴様ら何者だ!」
こちらに気づいた門番が身構える。すごいオーラだ。
「ここの館主に用があってね。悪いけど、通してもらえるかしら?」
「はい、いいですよ……なんて言うとでも思いますか? そんな簡単に怪しい者たちを中に入れてしまっては、門番失格ですよ!」
中国風門番はボケた後に再び身構える。
「不審者に名乗るのは不本意ですが……私は紅美鈴。見ての通り、この館の門番です」
彼女——美鈴の自己紹介の後、俺たちも構える。しかし、霊夢がそれを阻む。
「私がやるわ。あんたたちは見てなさい」
俺と魔理沙は言われた通りに下がる。格闘家と巫女の戦いって、どんな戦いになるのだろう。格闘家といったら、物理系を出してきそうだし……
「巫女ですか。だれが相手でも手加減なしですよ!」
霊夢はふっ、と笑ってスペルカードを出した。
「霊符『夢想封印』」
スペルカードを唱えて弾幕を放つ。しかし、美鈴は避けるどころか、まともに攻撃を受けた。なんとも呆気ない勝負だった。
俺たちは門を潜り、館の扉を開けにいく。入ってみると、そこはなぜか廊下のような場所。
「ん? どこだここ——って、霊夢? 魔理沙?」
どうやら、ふたりとはぐれてしまったようだ。後で合流できると願って、廊下を進む。すると、その傍に地下へと続く階段を見つけた。そこを降りていくと、ひとつの扉があった。
「誰かいるのか?」
小さな声で呼びかけながら扉を開ける。その部屋は、どうやら子供部屋のようだ。しかし、誰もいなさそうと思い油断したその時——
「禁忌『クランベリートラップ』」
誰かが背後からスペルカードを唱えた後に、弾幕が飛んでくる。その弾幕はクランベリーの収穫のイメージをしたような、実を表す紫丸弾と水を表す青丸弾だった。
「チッ……龍符『炎龍』」
俺は炎龍を召喚する。あのスペルを使うために。
「防符『火之結界』」
なんとか、飛んできたレーザーと赤い小弾を防ぐことができた。
「お兄さん、なかなかやるわね」
そこには、金髪に帽子を被っており、変わった翼を生やした少女がいた。その子は俺に興味を持ったのか、ジロジロと見つめてくる。
「咲夜以外の人間を見るのは初めてだわ……」
咲夜? ここの関係者か?
「長い間ここから出してもらえなかった怒りと悲しみを……ふふふ、私はあなたを——オモチャにして遊んであげる!」
長い間? 怒りと悲しみ? この子はいったいどんな過去を背負っているのだろうか。
「なんかよくわからないけど、オモチャね〜。なにして遊びたいんだい?」
その子は決まっていたかのように、すぐに口を開いた。
「弾幕ごっこよ」
俺は彼女の要望に頷いて、ニッと笑って返答する。
「あっ、俺の名前は幻真だ」
「私はフランドール・スカーレット。長いから、フランって呼んでくれたらいいわよ」
フラン……か。
「さあ、始めるわよ!」
〈霧雨魔理沙〉
霊夢と幻真とはぐれた私は、廊下のような場所を歩いている。すると、なにやら大きな扉を見つけた。私はその扉をギギギ……と音を立てて押し開ける。
「おお……」
そこには、たくさんの本が揃えられていた。
「へぇ〜、なんでこんなに本が……」
私はもう少し、奥へと進む。一冊や二冊ぐらいパクっても大丈夫そうだなーーと考えていると、火の玉のようなものが飛んでくる。
「だれだ!」
攻撃を躱した私が叫ぶと、動く人影が目に映る。
「火符『アグニシャイン』……ただの人間じゃなさそう」
そこには、本を片手に持った私と同じぐらいの背の少女がいた。どうやら、私と同じ魔法使いらしいな。
「あなたが侵入者ね。レミィの計画の邪魔はさせないわよ!」
「おお! パチュリー様、かっこいいです!」
そしていつの間にか、悪魔のような翼が生えた少女もいた。それにしても、レミィとはだれのことなのか。それと、この魔法使いはパチュリーって名前みたいだ。
「私の名前は霧雨魔理沙だ!」
「私はパチュリー・ノーレッジよ。この子は小悪魔」
自己紹介を終えると、パチュリーはキリッとした表情で言った。
「あまり長くはもたないと思うけど、レミィのためよ! 水符『プリンセスウンディネ』!」
パチュリーは水の光線のようなものと大弾、小弾を撃ってくる。私はすんなりと躱して、取り出したミニ八卦炉を相手に向けて唱えた。
「こいつをお見舞いするぜ! 恋符『マスタースパーク』!」
なぜだかわからないが、パチュリーは避けなかった。それとも、避けられなかったのか? レーザーはそのまま直撃した。
「ゴホッ、ゴホッ……パチュリー様!」
「う、うぅん……頭が痛いわ……」
しっくりくる勝利ではなかったが……まあいいか。