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初めに戻って繰り返す  作者: 山都光
2章-真・迷宮ガルダ編
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…教えを乞おう

「それじゃさっそくこの世界の人語について教えてくれるか」

「はい。私にできることをお手伝いさせていただきますので頑張りましょう」


惶真は机に向かうように座りながら、隣に同じく座っている白い兎耳の女性リムルに声を掛ける。

リムルに教えを乞うのはこの世界【パルティス】の言語だ。


なぜ今更ながらにこの世界(パルティス)の言語を教えてもらいたいの言うのにはいくつか訳があった。

その一つ目は、先に挑戦した【迷宮ガルダ】を攻略し、惶真、マナ、カナ、そして攻略の際に出会い今では従魔として同行している狼型の魔物(名前は惶真がフェンリルと名付けた。)は迷宮ガルダの最下層らしい場所にまで辿り着いた。

迷宮に挑戦して4日程の期間で辿り着き、その間に迷宮に存在し惶真達に襲い来る魔物は全て駆逐した。

今までは『剣』を振るう機会がなかったこともあり、襲い来る魔物を『剣』で斬り伏せてきた。

魔物を相手に『剣』や体技を用いた戦闘経験値を得ることが出来た。

そしてこの迷宮で自分にとっての『苦手』に分類される存在(ゾンビ)もいることも知れた。

そうして最下層に辿り着いた惶真一行は、ある”もの”を見つけた。

それはこの世界において一般では知られていない言語で書き記された碑文を見つけた。


『…なんだ、これ?…どう言う事だ?、読めないぞ、この文字!?…マナとカナはどうだ?この文字が読めるか?』


惶真にはこの世界の文字を読み取る技能である”言語理解”があった。

そして今まではこの”言語理解”の能力の効果で、このパルティスの言葉や文字を把握することが出来ていた。この世界の文字を書く際には”自動筆跡”の技能もあり困る事もなかった。

”言語理解”の効果の範疇を超えた文字との出会いだった。

念の為にとマナとカナの2人にも確認をしてみた。

マナとカナは元々この世界の人間だ。しかも人間と異なる人種である【魔人族】に該当する人間だ。もしかしたら、と思い訊ねてみたのだが、


『ん~……ダメなの。一言も読めないし解らないの…』

『…そうか。マナ、気分悪い時に悪いがお前はどうだ?』


フェンリルの背に負ぶさる魔力枯渇状態で精神的不良状態であるマナが顔だけ解読不可の碑文にのっそりと向けた。


『……む、り~…ぐた~……』

『「……」』


と言う様にダメだった。

一先ずこの最下層にあった攻略した証を手にした後、惶真はこの解読不能の碑文を頭に記憶してガルダを後にし今に至っている。


惶真の記憶領域は自身の持つ”恩恵・変成”による”能力拡張”を応用しているので解読不明文字を一言一句記憶し続けている。もともと自分の名前を相手に記憶されないという奇妙な特性を持っていたが、暗記能力はずば抜けて高い惶真だ。忘れることはないだろう。

そして本来なら、記憶している碑文の文字を書き綴る作業を優先するべきなのだろうが、惶真はそれよりもこの世界の文字をしっかりと改めて学び得たいと思ったのだ。


それが惶真がリムルに頼んだ理由であった。

惶真はどこかで己の技能に頼り切っている自分がいたとこの時に思ったのだ。

学びを忘れ、己の持つ力に依存していたのだと痛感させられ、同時にそんな自分を恥じた。

だからこそまずはこの世界の文字を一から知ろうと考えた。

そして一般的な教養を身に付けている大人でもあるリムルに頼んだ。


リムルは惶真の頼みを快く了承してくれた。

ただ、なぜこの世界の言葉と文字を教えてほしいと言う依頼をされたのか分からない様だったリムルに、惶真は隠さず事実を告げた。

自分がこの世界の本来いる人間ではないと言う事。

別の世界からこの世界に呼ばれたことを隠さず伝えた。

流石に別の世界からやってきた云々は怪訝そうだったリムルだったが、真摯に語った惶真が偽りを口にしているとは思えず信じることにした。

元より惶真はどこかこの世界の人間とはどこか違うと思っていたリムルは納得したのだった。


リムルにこの世界の人語を教わり初めて1時間。

惶真はリムルも驚くほどの集中力で学んでいった。


「驚きましたわ。まさか1時間の短い時間で基本的な公用語を会得されるなんて」

「…なに、リムルの教え方が解り易かったからな。一先ずこれで”言語理解”や”自動筆跡”がなくても大体の文字は理解できるだろう。ただ…」


リムルに教わったこの世界の言葉。

それを理解してもなお、ガルダの奥深くで見つけた碑文の文字を理解は出来ない状態だった。

ただ、教わった人語がどことなく近しいものであると直感的に感じていた。


(…歯痒いとはこの事ってことだろうか。…解らないのに、どこか知っているのではないか?と思えてならないんだよな)


はぁ、と溜息をつくと、惶真は気持ちを切り替え、とにかく今はガルダで見つけた碑文の書き写しの作業に入ることにした。


机に何枚もの紙を用意する。

そして用意した紙に、記憶している冒頭の謎の言語の言葉を書き綴っていく。


(スマホの写真機能が使えたら、こんな面倒なことしなくてもよかったんだけどな)


そう内心で愚痴りながら書いていく。

この理解不可の文字が、このガルダ迷宮に隠されている真の迷宮深部への鍵であると判断し、記憶して行く事にしたのだが、惶真は始めに自分の持っていたスマホの存在を思い出し、スマホの写真機能を利用しようと思ったのだ。しかしながら、いざ撮影と言う時にスマホの電池切れが起こったのだった。

暗記記憶は得意な方で(自分の名前は相手に記憶されなかったけど)、この世界に召喚されて得た”変成”の”恩恵”によってどうやら記憶領域が拡張されていたこともあり、3000にも及ぶ文字の記憶に成功した。

そして今、記憶していた理解不能の文字の書き出しを起こっているのである。


書き出していく文字。

その文字は日本語や英語より絵柄に近い象形文字に近かった。

リムルによれば”これ”はこの世界で使われている文字の原点と言える古い文字に似ているらしい。


一つ一つの文字。

見たこともないはずの文字。

頭の中の記憶から引き出し書き出していくも、書いている文字は一つの文字をパーツで一文字なのか?、それとも複数の文字パーツで一文字とするのか?なぜこうした文字なのか?と理解できないのがまったくもって複雑だった。


「…これでこの紙は一杯になったな。…どうだ、リムル、何か分かった事とかないか?」


一度リムルに話を向ける惶真。

元々この世界の住人ではなく”言語理解”によってこの世界の文字に通じていた惶真。

幼い外見をしているが、百年の時を生きている魔人族のマナとカナ。

試しに聞いてみたリムルの娘であるヴァニラ。

この4名は解読不可能だった。

最後にリムルも「見せてもらえますか?」と言ったので見せた。

すると他の者とは違う反応があった。


『リムルはこの文字に見覚えがあるのか?』

『え?…いえ、ハッキリとは言えないのですが、もしかしたですけど、コレは【神語】に近いのではないでしょうか?と』

『神語?…』

『はい。神語とは、この世界の人の祖である12人の神人が使っていたと言われ伝わっている語なのですわ』


なぜリムルがその神語について知っているのか気になり尋ねると、元々リムルと、今は亡きリムルの夫が考古学を学んでいた者同士だったかららしい。

確認した後にリムルは席を立つと惶真が借りている部屋から一冊の本を持ってきた。

そこには確かに解読できない文字と似通った文字が記されていた。

リムルも完全には解読できないようだが、微かに読み取ることが出来るかもしれないと分かった。

だからこそ惶真はリムルに言語と文字を教わる相手に選び、こうしてサポート役に選んだのだ。


「はい。こちらが次ですね…。あと少しだけですけど、同じ意味があるのではという部分があるのがわかってきました。他にも分かった事がありましたら報告しますね。あと、オウマさんも根は詰めすぎないで下さいね。こちらをどうぞ。甘味のジュースですわ」



書き出した紙が埋まった所で傍に見守っているリムルに渡す。

リムルはそれを受け取り順番に纏める。

その間にも何か手掛かりがないか調べる。

また根を詰めすぎない様にと合間に惶真に飲み物を出しれくれたりとサポートする。


「わかった。あと、ありがたくいただくよ」


惶真はリムルのさりげない気遣いに感謝しつつジュースで喉を潤した後も作業を続けた。



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