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初めに戻って繰り返す  作者: 山都光
2章-真・迷宮ガルダ編
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カレーを作ろう

ヴァニラとリムルの2人に、迷宮ガルダの隠された、ある意味で言う所の”真・迷宮ガルダ”の存在とそこに至る可能性のある鍵である、”言語理解”があるにも拘らず解読不可の文字が刻まれた石碑。その石碑の理解不可文字の解読をする為に、この家に暫く厄介になる事を告げた。


暫くの猶予が必要になると考えていた。

言語理解不可の文字、おそらくは大昔の文字か何かだと思うが、解読には時間が掛かるだろう。

一先ずはこの地に迷宮があると言う事で、この地に関することを調べようと思っている。


ただ調べるのは明日からにするつもりで、今日はゆっくりする事にした。

理由は数日間の迷宮攻略に気を張っていたのもあり、疲労感が溜まっているからだ。

特にマナに関しては安静させ気力を回復させないといけないのもある。

まあ安静に休めば元に戻り元気になるだろう。

ほかの理由としては、もし隠されたガルダに関して情報が集まったとしても、現状の持ち物では攻略に差し障るからだ。

まず回復系の薬のストックが切れた事だ。

多めに購入していたのだが、最下層に着く頃には全て使い切っていたのだ。


(この集落にある物や森にあるだろう薬草とかで作る必要があるだろうな)


惶真には”調合”と”薬草知識”の天職技能を有しているので、素材があれば問題なく回復薬を作製できる。

市販の物よりも、おそらく自分で手に掛けたほうが効能があると思っていた。

あとは魔晶水の方も作り置く気でいる。

魔晶水とは、魔石から魔力の源である”魔素”を抽出し、水に溶け込ませた魔力回復薬の事である。

魔石と水さえあれば増産は可能だが、使用には制限がある。

それは”変性”の恩恵を持つ自分と、魔人族の者、つまりマナとカナの2人。そして魔物であるフェンりルにしか効果がないのだ。

ほかの人間。――もしヴァニラに呑ましたら体調を崩す事になり寝込むことになるだろう。

無論リムルには間違っても飲ませはしない。


「っ!?…なんだか、今、寒気がした気がする…。お兄さんなんか変なこと私に対して考えなかった?」

(こういう時の感が良いのは獣人の血か何かか?)

「いや。何も考えてないぞ。気にし過ぎだ…」

「そ、そう?凄く嫌な感じがしたんだけど…」

(…オウマ、何か悪いこと考えてたね。たぶんヴァニラに関して)

(…うん。たぶん考えてたなの。ご主人様、ヴァニラに厳しいの)


マナとカナが”念話”で会話しているが、今はスルーしてやる。


(”念話”は俺に筒抜けになるのは忘れてないか?)


まあいいか、と気にしない。


ぐー…。


「はうぅ///」


ふとお腹の音が聞こえた。

その音の主はヴァニラのようだった。

何だか顔を赤くしている。

恥ずかしい様だ。


「あらあら。フフ、そう言えばもう少しで日が落ちますしね。夕ご飯の準備をしましょうか」


どこか微笑ましそうなリムルが椅子から腰を上げ食事の用意に向かおうとした。

それを惶真がストップを掛ける。


「悪いが今回は俺に任せてくれないかリムル。先の一宿一飯と今回の件もあるしな。感謝を込めて俺がご馳走したいんだ。」

「ま、まあ、そうなのですか?オウマさんは料理も出来るのですね」


どこか関心を含んでそう言うリムル。

そんなに料理をするように見えないのだろうかと思う惶真。


「ああ。こう見えて数年前から一人暮らしをしたりと料理をする機会があったんでな。まあ手の込んだものは上手くないと思うが簡単な物くらいなら問題なく作れる。だから任せてくれ」

(…一人暮らし?オウマさんはもしかして家族の方がいないのかしら?)

「わかりましたわ。ふふ、この村では若い男性は普段料理をされないので楽しみにしていますわ。うちの亡き旦那様も得意ではなかったの」

「…そうか。なら期待に答えられるようにしよう」

「器具とか必要な物とかお教えしましょうか?」

「いや。材料とかも此処に帰る前に手に入れているから問題ない。そうだな、これから作るのは煮込みに時間が少し掛かるからな。出来上がりに少し時間がかかるから」

「お兄さん!お腹空いたから早くね!」

「はいはい。わかった。まあ、期待して待ってろ。そうだな、2人は待ってる間、マナとカナの相手でもしていてくれ。まあマナはぐったりしてるからゆっくりさせていてくれ」

「はぁーい!」

「ふふ、わかりましたわ」


そう言い、席を立つ。

向かうは調理場。


調理場に着く。まずは設備の確認をする。


「…これは、かまどか?パンとかを焼くためのだな。店長のパン屋の工房と似通ってるしまあ問題なく行けそうだな。で、こっちが流しで、火を出す機器か。コンロの様なもんか。……うん。行けそうだ」


地球の日本よりも機械的な文明度は低いこの世界。

まあ地球は機械技術に特化しているのに対して、この世界には魔法文明があるので、機械化は進んでいないように思う。まあアーテファクトとかがあるので一概とは言えないだろうが。


さて作っていこうかと腕を捲ろうとすると背後からカナの声が掛かった。


「待ってなの、ご主人様!私も手伝うの!」


どうやら手伝いを買って出たようだ。

そこまで手間をかける気はないので一人でもいいと思っていたのだが、”覚醒”して幼女モードから少女モードに変化しており、やる気が此方にも伝わってくる。

メイド服に似ている紺色と白の服がこの場で似合っているなと思った。

無下にするのも悪い気がした。


「まあいいか。そう言えばカナだけか?マナは?」


こういう時、片方が動くと片方も動く。

カナが動いたのなら、マナも動くのではと思ったのだ。


「えっと、その、私がお手伝いしに行こうとしたら、マナも手伝うって言うの。けどマナはしんどいと思うから休んでもらうように言ったの。少し心配だからヴァニラたちに見張り役になって貰ったの!だから大丈夫なの!」

「そうか……」


どういう意味で大丈夫なのかはともかく、作り始めよう。

腹ペコ兎もいるしな。


「俺はとりあえずルー作りから始めるから、カナは野菜を洗って一口くらいの大きさに切ってくれるか」


惶真が今回作ろうとしているメニューはカレーだ。

手ごろでで簡単。煮込むことで美味しくできる。

惶真が母から教わった初めての料理なので、特に自信があるのだ。

ただ、カレー作りに必要なカレーのルーがなかったので、一から作ることにした。

必要な香辛料や素材は村や村の周囲に生えている薬草で賄えそうだった。

”薬草知識”と”食材鑑定”の技能が凄く役に立った。


惶真の隣で言われた野菜を水洗いし皮を切るカナ。

その手付きは危なげもなく一つ一つ丁寧処理していく。


「なかなか良い手付きだな。今まではカナがしていたのか」


今までの旅の中では手伝いをする事はあっても殆どは自分でしていた。


「うん。と言っても簡単な事しかしてないの。食べられそうな野菜とか保存に効きそうなものとか。マナも手伝ってくれたけど、私の方がこういうのは得意なの」

「そうか」


楽しいと笑みを浮かべるカナ。

そのカナの内心は、


(なんだかこうして一緒に料理をしてると夫婦みたいなの!ふふふ、マナには悪いけど役得なの!)


と満面の気持ちだった。


それからしばらく。

カレー作りは進む。

火を出すコンロは二つ。

そのコンロに鍋を二つ用意する。


そしてある程度目処が付くと、鍋を弱火で煮込んでいく。

カレーに関しては、その間はカナに任セ、自分はパンの準備をしていた。


本当なら米が良いのだが、この世界に米がないらしいので仕方ない。

カレーに合いそうなパンを思い浮かべて、”アレ”にしようと考え作り始める。


生地を煉り、形を成形する。

そして釜土の中に入れる。

時間を測り焼いて行く。

あと少しで出来上がるだろうと考えていた時だった。


黒兎の娘っ子がカレーの匂いにつられてやってきたようだ。



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