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初めに戻って繰り返す  作者: 山都光
2章-迷宮ガルダ編
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その名は北欧の魔狼――そして≪モンスターハウス≫から出て来たのは『ッ!?』

いま、惶真はマナとカナの2人に、魔狼に無防備に腕を差し出すと言う行為を行った事に対して責められていた。


「オウマ!いくらチートな体をしてるからって、魔物に腕を差し出すなんて非常識過ぎだよ!」

「そうなの。マナの言う通りなの!心臓に悪い事はしないでほしいの!」


正座をしながら二人のもっともな事に怒られる。

なぜ正座をしているかは、


『説教するんだから正座する!』

『御主人様は反省する気持ちを持つ。だから正座してなの!』


と言われたからだ。

マナは眉根を上げ、カナも悲し気に表情を崩していた。2人とも目尻に小粒の涙が見え、流石に、ほんの少しだが悪いことした気になり言われる通り正座しているのだ。


ちなみに魔狼も惶真の傍にいる。

身体の傷や魔力は多少惶真の”恩恵・変成”で回復したがまだ完全に体を動かすまでには回復していない。

魔狼は惶真の差し出す腕に本気で、今の自分の出せる本気全てで、己の自慢のその牙を突き立てようとした。

だがまったくその刃が断たなかった。

魔狼はその時に感じ取った。

この人間は自分を倒すのは他愛無い。一瞬で倒されてしまうだろうと。

その時に魔狼は感じ取ったのだ。

自分は試された、と。

魔狼はこの人間に試され興味を抱いた。

そして魔狼はこう思った。この人間に――主に付いて行きたいと。自分はもっと強くなれる、そんな風に感じ付いていく事にした。

惶真もその想いを感じ取り勝手に付いて来い、とこの魔狼を魔物契約(テイム)で結ぶ事にしたのだった。

その魔狼は二人の魔人族の女に主に強く物を言うのが気に入らず威嚇しようとしたが、主である惶真が気にするなと止められじっと見守っている。



「ほら、これを飲んで魔力を回復させろ。今のままじゃ動きも鈍いしな」


2人から「二度と心配させるようなことはしないように!」、と念を押す様に言われ、惶真も「悪かった…以後気を付ける事にする」と謝罪し一先ずこの件に関しては終わった。

その後、この先に進む前に、新たな同行者である魔狼を回復させる事にした。

今のままでは満足に動けないからと、手持ちの魔晶水を飲ませて回復させる事にした。

自分の空間から一瓶の透明な液体が入ったものを取り出す。

瓶の蓋を開けて魔狼に向ける。

魔狼はこれは何だ?と言うように怪訝な様子を見せるも、惶真に「早く口を開けろ!」と言われ、『アァ~』と口を開ける。

よしよし、と頷くと惶真は魔狼の開けた口の中に、魔晶水の液体を流し込む。

流し込まれてくる液体をゴクッと喉を鳴らし飲み干す。

すると魔狼の身体が薄らとだが光を帯び始めた。

驚く魔狼。

惶真の”変成”である程度回復していた身体に魔力が満たされる。

魔狼の灰色の体毛も艶やかさを取り戻す。


魔狼は重く動かすのも一苦労だった己の身体を起こす。

人より、惶真よりも大きなその身体を起こす。そして、


「グウオォーーーン!!」


魔狼は咆哮の雄叫びを上げた。

その雄叫びには勇ましさがあった。

今いるこの階層全域に轟く程だった。


魔狼の雄叫びに反応して周囲、また遠くから魔物が近付いて来る。


「あらら、この子の雄叫びに魔物がやって来ちゃったよ」

「あはは、本当なの。沢山やって来るの」


近付く魔物に戦闘態勢を取りつつ苦笑するマナとカナ。


「まあいいさ。探す手間も省けるってもんだ。相手が勝手にやって来るんだから楽なもんだ。さて、お前の力を俺に見せてもらうぜ」


ヤル気を漲らせた眼をしている魔狼に惶真は視線を向け声を掛ける。

魔狼もその主の試しの言葉に『よく見ていて下さい主!』と言う様に咆哮を上げる。

魔狼の頼もしさに惶真は感心しつつ向かって来た魔物の迎撃に入った。



「ん?どうした俺をじっと見てなんか言いたい事でもあるのか魔狼?」


向かって来た魔物の掃討を終えた後、次の階層に行ける場所に向かって歩いているとふと魔狼が此方に視線を向けているのに気付いた。

どうしたと聞く。

するとどうやら、いつまでも魔狼と呼ばれるのもアレなので、自分に名を与えてほしい。との事だった。

主と見定めた惶真に名を与えてもらいその名を呼んでほしいと魔狼は思ったのだった。


(…名前、か…)


歩を進めつつ惶真は考える。

どんな名前が良いかと。

ジッと見つめてくる魔狼に、


(うぅん…狼の魔獣、か………あっ、そうだ!アレが良いか。この前に美柑さんの手伝いで調べた北欧の神話に出てくるアレが良いんじゃねえか)


よし、と決めた。

足を止め魔狼に向くと考えたその名を告げた。


「今日からお前の名前は【フェンリル】だ!死を恐れず勇敢さを醸し出すお前にピッタリの名前だと思う。だからそう名乗れ。俺もこれからフェンリルと呼ぶことにするからな。マナとカナも今後はコイツをそう呼んでやれ」

「フェンリルかぁ…。うんカッコイイし、良い名前だと私も思う」

「うん。頼もしそうだし良い名前だと私も思うの。けど、御主人様、その名前ってどんな意味があるの?」


カナの質問に、魔狼フェンリルも己に与えられた名の意味を知りたいと主を見つめる。


「名前の意味か。そうだな、まずその名前の元となった存在がいるんだ」

「え?由来となったものって、オウマのいた世界って事?あれ?オウマのいた世界には魔物っていなかったんじゃ?」

「ん?あぁ、マナの言う通り、俺のいた世界には、この世界の様な魔法とか魔物と言った類の神秘はない。けど俺の世界の人は魔法や魔物と言った架空と思っていたものがあったらいいな、と空想し思い描いてるんだよ。で、その元ネタになったお前に付けたフェンリルも、そんな俺たちの過去の人が思い描いた存在の一つって事なんだ」

「なるほど~」

「それっていくつもあるって事なの?」

「ん?あぁ、そうだな。俺の世界の人は、古い世界を題材にした、所謂神話をモチーフにした世界観の中で生み出していたんだ」

「神話…神様がたくさんいるって事なの?この世界のように12人の神達の様な」

「まあな。この世界の神話に関しては詳しく知らないから何とも言えないがな。今俺が知ってるのは俺達が持ってるこのクロノカードとかを生みだした【創蔵】の神。俺がこっちに来る要因になっている【神託】の女神、まあ”呪い”の件とかもあるしあんまり信じられない女神って事だな」


パルティスの神話に出てくる神々は、惶真のいた世界と違い実在した。

架空の存在ではない真の存在。

惶真にとっては関りが強い存在でもある。

だが、惶真はその存在に関わる気はない。なんとなくいつかは関わり合いになる気がしているが、自分から積極的に干渉もするつもりはない。正直面倒だと、そんなものは勇者達が関わればいい、とか思っているくらいである。

そんな風にこの世界の神について話してると、フェンリルが『脱線してる。今は自分の名前について話してたでしょ!』と言うかのように鳴く。

そうだったなと惶真もフェンリルの頭を撫でながらその名の由縁について話す。


「フェンリル。それは山の如くの大きさをした狼の魔獣の姿で描かれている。巨体だけどその動きは敏捷で、その鋭く整った牙と爪を有している。戦闘力が高く脅威ある存在として描かれてるんだ。しかも知性も並みの魔獣よりあるんだ」


ほえ~と聞き入るマナ、カナ、フェンリル。


「伝説上ではフェンリルは自分を拘束する代わりに相手の神の腕を一本差し出させ、噛み千切って自分を確か鎖で拘束させたって言われてたな。まあお前は俺の腕を噛み千切れなかったがな」


そう言われ『むう』と不満そうなフェンリル。

主にそんな真似する気は現在ないが、そこまで言われてはいつか行ってみたいと思うのだった。


「あと、有名処はそいつは、北欧神話における最も高い権威を持つ最高神を喰い打倒したエピソードだな。まあお前もそれくらい大きな存在になれると俺は確信している。だから【フェンリル】と銘打ったってわけだ。納得できたか」


惶真の話を聞いて、フェンリルは、なんだか負けてられない!そいつより凄い存在になってやる!と言うような強い輝きをその目に宿らせていた。

どうやら自身に与えられた名に納得出来受け入れた様だ。



それから【魔狼フェンリル】を加えた3人+1匹で進んでいく。

フェンリルには後方からの魔法援護を行うカナの守りに重点に置かせた。

カナは”恩恵”以外の魔法行使に詠唱が必要なので、その詠唱を確実に行えるようと言う配慮である。

ただフェンリルとしては主である惶真の傍で戦いたかったが、主から「ダメだ」と言われ渋々といった様子だったりする。

次の階層への出口の前でどうやらフェンリルを死にかけの瀕死状態にした【オーガ】の魔物の集団に遭遇したが、あっと言う間に駆逐された。


そしてさらに進んで行く。


「えっと…次で40階層だな。残りは10階層だし今日中に攻略できそうだな」

「ねえオウマ、今日で何日目かな。此処に潜って」

「同じ洞窟だから時間間隔が曖昧になって来るけど、御主人様のその時計があるから良かったの」

「そうだな。……潜った日の時間から経過した時間を……そうだな今で3日経過してるな」


迷宮ガルダに入って3日が経過していた。

所々で休息を取りつつ進んでいる。

さすがに下の階層に行くと、所々で強かったり特殊な、魔法を使うような魔物が出現した。もっとも圧倒的ステータスを持つ惶真はその『剣』で倒していく。惶真に振ってもらい『剣』も満足している。

マナとカナも魔物との戦闘で経験を積み重ねステータスも戦闘技能や魔法技能が上がった。

一対多数でも相手取れるほどに成長していた。

自分達の成長に驚きで一杯の2人だった。


そして迷宮ガルダの40階層に到着した。

着いた場所は円状の広い空間だった。

進行方向に入り口と同じ場所が見える。

どうやらこの階層はこの空間だけの様だった。


惶真達は空間に足を踏み込んだ。

特に罠の気配もないのでと特に考える事もなくである。

ガシャン!と言う音と共に先程入った入り口が閉鎖された。

閉じ込められたと言う事らしい。

そして丸い空間の中心に大きな魔法陣が形成された。


「あらら、どう見てもこれってトラップハウスって感じだな」

”イエスデス!ケイカイヲシテクダサイ!イママデトチガイ、キョウリョクナマモノガアラワレタリ、トクシュナマモノガシュツゲンシマス!”


そう警告を告げる『剣』に面白いと笑みを浮かべる惶真。上等だと言うようだ。

だがその強気と言う余裕は消える事になった。


それは――召喚された魔物が原因だった。

現れたのは所謂【ゾンビ】と呼ばれる魔物だった。

しかも多数で出現した。


『「ウゥオォ~」』

「……」

「「きゃぁーー!?」」


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