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その頃の召喚組:≪聖剣選定≫…そして私は君を追う

惶真が魔人族の双子姉妹であるマナ、カナの2人と共に船での航海中。

”勇者召喚”を行ったアルテシア王国である事件が起きた。

それは訓練にて成長したクラスメイト達が、とある儀式に挑んだことが大きいだろう。



”勇者召喚”にて呼ばれた28名のクラスメイトと教師。

その者達は王国場内のある場所に集められていた。

その場所はまるで大聖堂の様で神秘な感傷を抱かせるとこだった。

そして召喚者達の目の前には1つの台座が見える。その台座には如何にもな雰囲気がある一振りの剣が突き刺さっている。

それを目にして殆どの者がアレが何であるかは分からないが特別な剣であると理解した。

もしかしたら物語によく表れる『魔王を打倒できる聖剣』なのではと。

そして自分達がこの場に呼ばれたのも、あの剣に関する事で間違いないとも思った。


(……なんか、べたよね。アレ。台座に刺さった一振りの剣。…小説(Novel)とか物語(Story)に出てくる、まさに選ばれし剣って感じね、アレ)


台座に刺さりし剣を一目見て咲夜はそう思った。

そして思わずであるが、その視線を一瞬、従兄である正儀を向けた。

視線を戻す際に、どうやら他の者の大半が視線を正儀に向けているのに気付く。

視線を彼に向けた理由は単純だ。

特別な剣に選ばれるなら、召喚された者の中で、最も特別である【勇者】の称号を持っている正儀が選ばれる可能性が高いと。


そう思ったあと、咲夜は別の事を考えていた。

それは今の咲夜の目的であるこの時点でまだ名を知らない(惶真)の事だった。

この世界に召喚されて既に1週間以上経過している。

その間、咲夜は騎士達との訓練で戦いを、王城の図書館から知識を学び、正直な所、咲夜は既に一人である程度自立して動けるくらいになっている。

実を言えばいい加減この王城を抜け出し【彼】を追い掛けようかと考え準備に入っていた。咲夜は日に日に内心で焦りを募らせていた。

早く彼の元に行かないとそれだけ距離が開けてしまう。そう思えていた。

距離が開ける。

それは、咲夜は【彼】が既にこの国を抜け出している。この国の外を…世界を回り始めていると履んでいた。

他のクラスメイト。

【彼】について思う所がある者。担任である花恋や、正儀の様な極一部の者は【彼】を心配している。城下で元気にしているのか、と気にするくらいであろうか。

つまり他の者は【彼】が城下で生活していると思っているのだ。それはとある騎士を除いて王国側の人間達も同様であった。

しかし、彼らと違い、咲夜だけは違うと思っていた。

実際既に【彼】はこの国を出ているのだから。


咲夜も今日この日の集合を受けて、この日にこの王城を抜け出し彼を追おうと考えていた。

全員が、どうやらステラ姫やヴァレンシュ騎士長、他の騎士達も集まるらしいので、抜け出すのは簡単だと思ったのだ。

咲夜の得ている技能を使えば簡単と言えた。

しかし、今回の集合に興味があった。

それは咲夜達召喚者は基本的に王城で好きに行動できるように取りはかられている。無論王族の私室のある階、武器庫と言った場所には制限があったが。

しかし、とある一カ所に関しては、日が来るまで決して入ってはならないと言われている場所があった。

それこそが今回の今いるこの場所だった。

特別な場所。

入る際にも扉に封印がされており、ステラ姫の言葉で封印が解かれる仕組みになっており、如何にも厳重な場所と言う神秘性に、興味が湧いてきたのだ。

まあ今回は参加して後日こっそり抜け出せばいい。そう考えに至ったのだ。




アルテシア王国の姫であり咲夜達をこの世界に呼んだ人物である、ステラリーシェが召喚者達の前に進むと今回の件について話し始めた。

皆、ステラリーシェ(――長いのでステラと呼んでいる)に注目する。


「今日、この日に皆さんをこの場に案内しましたのは、皆さんの目の前にある台座。その座に封じられし【聖剣】の主を選定する為なのです」


(聖剣の選定…)


ステラ姫からこの座に封じられし剣の説明がされた。


『この座に刺さりし剣は、かつて神々の闘いがあった時代の後に、1人の青年が、その時代に現れた神に刺さっていた剣を引き抜いた剣だと言われています。

その青年は当時、人間に対峙していた魔人族の王をその聖なる輝きを持った剣で討伐したと言われています。そして、魔王を討った後、その青年の持っていた剣は突如、その手を離れ、この地に転移したのです。

青年は剣の行方を捜し見つけました。しかし、この座に刺さった剣をどうしても抜く事が出来なかったのです。

他の者が挑戦しましたが、誰一人抜く事が出来なかったそうです。

青年は仕方ないので、当時は荒れ果てた土地を再建し1つの王国を作ったのです。それが、このアルトシア王国なのです』


と言うものだった。

これを聞いて咲夜はやはり【魔王】に対して何かしら優位に働く剣なのねと思った。


「この剣には魔人族の【魔王】の称号を持つ者に対して特効のような効果があるようなのです。そして、来たる魔人族との戦いに備え、私は今回の召喚の秘儀にて、私達人を導き魔王の脅威から世界に平和をもたらす存在である“勇者”様。そして、この剣の正当なる所持者となる者を呼ぶ事が出来たのです」

「”勇者”として召喚されたのは正儀、君だ。これは間違いない」


ステラ姫の傍に控えていたヴァレンシュ騎士長が正儀に視線を向けながらそう告げた。それに皆、正儀に目を向ける。


(何だか誇らしげな様な顔をしているわね、アイツ)


その注目の的となっている正儀がステラ姫に疑問を一つ質問した。


「ステラ姫、1つ気になる事があるんだけどいいですか?どうして、今日なのでしょうか?なぜ召喚されて数日が過ぎた頃、つまり今日行う事にしたのでしょうか?」


正儀の疑問に咲夜も「確かに」と思った。

そんなに重要な武器があるなら、召喚された次の日に、各自が武器を選んでいたあの時にするべきと思う。

そんな皆がどうやら思っていた疑問に真剣みのある表情でステラ姫は答える。


「そうですね。皆さんの疑問はもっともでしょう。まずは、そこを説明いたしましょうか。…と言いましても、理由は至極簡単と言えます。まず、この聖剣に触れる事が出来るのは、この剣が発する存在力に耐えうる器の持ち主でなければならないのです」


(…圧倒的な存在力?…それはどんな力なのだろうか?)


そんな疑問が浮かぶも、ステラ姫が続きを話す。


「かつて、この聖剣に触れた未熟な人物がいました。その人物は、聖剣の放つ存在力に耐え切る事が出来ず結果としてその者の触れた指が消滅するという事があったのです」

(なにそれ…こわいわね…)


消滅。その言葉に、クラスメイト達に動揺が走る。

その言葉に選定の儀に挑むのが嫌と言う者も出てくるだろう。

だけどステラ姫は安心して貰う様に説明を続けた。


「はい。ですので、私達は、あなた方がある程度の技量と器を得るまでの時を待ち、そして判断したのです。今の成長された皆様なら、聖剣の存在力に充てられても弾かれる事もないでしょう」


なるほどと、ステラ姫の説明で今日に選定する事に納得が言った。

質問した正儀も「分かりました」と納得した様だ。



「…では、これより御一人ずつ前に出て着て頂き、この座に赴き聖剣に触れて握って下さい。真なる担い手であれば、この聖剣を抜き放つ事が出来るはずです。…さあ、どなたから挑まれますか?」


ステラの言葉にクラスメイト達は御互いに視線を向け合う。


「誰が行く?」

「お、俺、後でいい!」

「どうしましょう…」


ステラ姫に大丈夫と言われてもやはり不安が多いのだろう。お互いに牽制する様にそんなやり取りをしていると、正儀が「なら、俺がー」と名乗り出ようとした時だった。剛田が正儀の言葉に被せる様に発言した。


「へっ!ビビってるやつらは後でいいぜ。まずは俺が行くぜぇ!……おい、正儀!お前は最後にしろや。どうせ、お前が一番可能性があるんだからよぉ!」

「……分かった。俺は最後にだな」


剛田の言い分に了承する正儀に咲夜は訊ねる。


「…アンタはそれでいいの?」

「ああ、構わないよ。たとえ、もし、俺じゃなくても別にいいしね。俺にはこの剣(デステニー)があるからね」

「そう……」

(どうやら正儀はさほど聖剣の所有権に強い興味はないようね。まあ私もそこは同じだから、嫌な共通点よねホント)



そして、選定の挑戦が始まった。

先陣を切るのは剛田剛だ。

勇んで前に出た剛田は、聖剣に触れ握った。どうやら剣に弾かれる様子もなく、剣の持つ存在力に耐えた様だ。

だけど、そこまでだった。

剛田は、剣を抜こうと力を入れている様だが、剣が台座から抜ける様子はなかった。

その様子から、剛田はつまり“担い手”ではないという事だった。


「ぐっそぉおぉ!なんで、抜けねぇんだあ!!」

「…そこまでだ。残念だがここまでだ」


ヴァレンシュ騎士長に止められるまで挑んだ剛田は憤慨とした表情をしていた。


(抜ける自信があったのかしら?滑稽な気がするわ……)


それから、次々にとクラスメイト達が挑戦していく。

挑戦した者が聖剣の放つ存在力とやらに弾かれることはなかった。しかしその者達が抜く事で来ていない。

傲慢女3人組が挑戦した後、雫も選定に挑戦した。雫も聖剣に弾かれる事はなくほっとしていた。そして雫も抜く事は出来なかった。

挑戦後、雫はあの3人のトコに行く。


「…私にはやっぱり無理…みたいでした…」

「当然でしょ!この(わたくし)が選ばれなかったのですから、貴女が選ばれるなんてあるはずないでしょ!まったくですわ」

「…す、すみませんっ」

「プフフ…ちょっとは身の程ってものを知る事が出来たんじゃない」

「…無様ね…フフ…」


そんな言葉を受けてしょんぼりと3人の傍を離れる雫。そんな彼女の傍に寄る声を掛ける。


「…うぅ」

「アラ、気にしなくていいわよ雫」

「あっ、咲夜さん…」

「あんなこと言ってるけど結局の所、あいつ等も同じダメ組なんだから。だからあいつらのことなんて気にしないでいいわよ」

「咲夜さん……ありがと、う」

「ふふ、どういたしまして」



選定は続く。

初めに挑戦した剛田剛。

その剛田の腰巾着のキノコ頭の細見臣。

そして、最初の迷宮挑戦に参加した者から次々と挑戦していった。

ゲーム好きで描かれている魔物を実態として召喚する事が出来る召喚能力を有する武藤遊一。

その親友で魔物を画き封印する封印能力を持つ瀬戸海治。

数少ない【白】の属性適性で正儀パーティの紅一点にして癒し手である東城彩夢。

五条院(ゴジョウイン)リルカと、その取り巻きであり滅多にその能力を使う様子が見られないため未知数な実力を持つ取井麻生と蒔絵桐子の二人。

そしてその後に、啄木鳥雫。

迷宮挑戦にて負傷し、錬成技能に特化しており、数名から作製依頼を受けたりと自分の能力の幅を広げようと努力している福田守。

最近ではいつも傍におり、端から見ても守に好意を抱いているのがばれているツンデレが似合いそうな相楽命。

”勇者”である正儀。”剣の達人”を持つ早乙女嵐(サオトメラン)。この二人は可能性があると言う事で最後に回った。


咲夜は何となくではあるのだが自分には関係ない、と思っていたので最後の方で、他の者達の様子を眺める事にした。


大剣を扱い”無我防衛”と言う、相手の攻撃を無意識に感じ取り回避できると言う”女神の加護”を持つ男子、東間英二(トウマエイジ)


「うむむ、俺も剣を扱うから可能性があるかなとかも思ったが、まあこんなものだよな。少し悔しさがあるよ。やはり彼が選ばれるのかな」


弓を主武装にしていて視覚能力が上がる”女神の加護―鷹眼(ホークアイ)”を持つ赤目の男子、倉敷佐祐(クラシキサスケ)


「俺ってば弓を使う者だし、まあ剣なんてあってもしょうがないさ。でも……(少し、ほんのちょっとくらい自分が凄いやつかもしれないとか夢見たかったさ。何でさ、現実ってやつは…)」


仲良し3人組で、【水】の適性能力が高く水に息をしたまま入る事が出来る”女神の加護―深淵海洋(ディープダイバー)”を持つ女子、鮫島杏(サメジマアン)

幽霊とかの怖い物が苦手なのだが、自分が得た”女神の加護”が”霊体操作”と言う霊魂を操る能力であった女子、蒲生千歳(ガモウチトセ)

心臓の病気があったのだが、”女神の加護―魔心融炉”を得た事で病気が押さえられた事に歓喜している女子、稲生聖来(イノウセイラ)


「あはぁ、アタシじゃなかったわ~残念残念」

「そうね。でも良かったじゃない、杏。もし選ばれてたら一番危険な役割を与えられるとこなんだから。ねえ聖来」

「うん。千歳の言う通りだよ。…私なんて今の元気な状態がベストだもん。だからこれで良いんだよ」

「そう言われるとそんな気がしてきたかも。アタシはチイちゃんとセイちゃんと居れればそれでいいしね~」


食べるの大好きなポッチャリ系で、食べる程能力が上がる”女神の加護―大食換”を持つ男子、太田元亀(オオタゲンキ)


「デフゥ、どっと疲れたでふよ…緊張してたからお腹空いたでふ…)


爪のアーティファクトで、爪から五本の針を飛ばし相手の動きを封じる”女神の加護―御形針操”を有する女好きな男子、慶戸新九郎(ケイトシンクロウ)


「うぅん、おれっちが選ばれし者じゃないか……残念だよねぇ。選ばれてたら、おれっち、女の子からキャーキャー言われてたかもしれないのになぁ…(まあ良いけどもさ。おれっちの力があれば、誰でも自由に出来るからさ…フフフッ)」


身の丈はある戦斧のアーティファクトを操り、毒性状態にランダムに至らせる”女神の加護―毒蛇(ヴェノミノン)”を持つ男子、幸村文夫(ユキムラフミオ)


「はぁ…俺じゃなかったか。…まあそんな気がしてたから、いいんだけどもさ。はあ、残念過ぎて毒吐きたい」


完全記憶(フルメモリー)”と言う、見聞きした事柄を記憶し覚える事が出来る”女神の加護”を有する女子、愛染雪歌(アイゼンセツカ)


「…残念ね。この結果も私の記憶に刻まれたのね。……忘れる事の無い記憶としてね…」


江西魁人(エニシカイト)と言う名前の男子、橋本秋葉(ハシモトアキハ)栖原晴(スミハラハル)名雲季夏(ナグモキナツ)、女子3名。その残りの者達も挑戦したのだが、引き抜く事は出来なかった。


そして残り4名となった。

召喚組の中で唯一の大人(身長低めで童顔に近くクラスメイトと同じ、もしくは少し小さい年齢に見られる事もある)の教師である繚乱花恋が挑戦した。

花恋はこの世界でどうしたいのか考え、自分の専攻教科でもある農業に携わっている。

戦いに自分は向いていないのは分かっている。なので戦いとは違う別の使い方をずっと模索していた。そしてこの世界が決して農業面で裕福ではない事を知り自分の得た”女神の加護―真なる搾取”を活かそうと思い至った。最近ではこの世界にはなく、教え子たちが度々口にしている今まで主食として口にしており、この世界にはない【米】の作農に取り組んでいる。


聖剣の前まで来る花恋。

花恋は既に戦いとは違う道を模索している事もあり、その姿はこの世界に来た時と同じくスーツ姿である。

他の者達はそれぞれ自分に合った衣装を用意され、それを着ている。


花恋は緊張した面持ちで「よし」と可愛らしさのあるやる気の声を出すと、聖剣に触れる。

ツンツンと触れる様にしてから握った。

戦いとは違う面を伸ばす故に戦いに関する能力やレベルは上がっていない。なので聖剣の存在力とやらに弾かれるのではと頭に浮かび恐々としていたのだ。そんな様子にクラスメイトは、


「がんばれ~花恋ちゃん」

「大丈夫だよ~花恋先生」


と微笑ましそうに応援のエールを送っていた。


「はい、頑張ります!それと私は年上です、教師です!なので『ちゃん』付けで呼ぶのはいけません!」

「あはは」

「もう…では、うぅ!……ふぅ…駄目、みたいですね」


うんともすんとも動かず花恋の挑戦は終わった。


残りは3名。

…まだ挑戦していないのは、咲夜と【勇者】として期待されている正儀。そして、クラスメイトの中で一番剣術に秀でており、剣術のみであれば正儀を上回る技量の持ち主、そして『剣』にカテゴリーされている剣であればどんな剣でも操る事が出来る”加護”を持つ男子、早乙嵐の3人となった。




「どっちが先に行く?咲夜、嵐」


正儀は剛田に言われた通りに最後に挑戦する。だから私達二人にどっちが先に挑むか確認してくる。


「私が行くわ。いい加減待つのも飽きたしね。あなたもそれでよろしい?」

「…ああ、構わない。では、俺は君のその次。そして正儀が最後だな」


私は「あとでいいわ!」と言う理由で最後の方に回っていたけど、正直待つのも飽きて来ていたので、私から挑戦する事を宣言した。


そして私は台座に向かって歩いて行く。

どこか期待の籠った視線が多く感じる。この中で正儀の次に実力があると認識されているので注目されても仕方ない。ただ…その期待は無意味だわとこの時に感じていた。

台座の前に立つと私は座に刺さっている剣に注目する。

その剣の刀身は年月が風化していないかのように曇りなき光で満ちていた。形は西洋の剣に似ている。刀身はまるで宝石の様だと思えた。

正直、綺麗と思える剣だった。

…それと同時に私は何故か理解できた。

この剣が待っているのは私ではない。と言う事に。

何故だかよく解らないけど、直感的に理解したのだ。

まだ触れてすらいないのにである。

それと同時にこの時私は直感的に理解した。


この中に、この聖剣の”所有者(Owner)”はいない、という事が。


何故か触れようとせずジッと剣を見つめている私にヴァレンシュ騎士長が不思議そうに触れる様に促してくる。

理解した故に無意味な行為をするのはどうかと思ったのだけど仕方ないので、剣に触れ握った。結果はやはり抜く事は出来なかった。


「ふむ。君ならばと思ったが、無理であったか…」

「ふふ、良いの。私にはあの双剣()があるから。それに………分かっていた事だしね」

「?」


最後に小さく呟いた後、私は台座から離れ元の場所に戻った。


そして、次に早乙嵐が挑戦した。

だが抜くには至らなかった。

私の直感通り、”剣の達人(ソードマスター)”の加護も聖剣には効果はなかったようね。

そして最後に正儀が挑戦しに向かった。


「ふむ。どうやら君で最後の様だな」

「ふふ、やはり勇者様である、貴方のようですね」

「さぁ、どうでしょうね……では」


ステラ姫も、ヴァレンシュ騎士長や他の騎士達も期待に満ちた視線を正儀に送リ見守る。

クラスの皆も期待を秘めた視線を向けていた。


「はぁ、やっぱり彼なんだなぁ」

「まあ、そうだろうな」

「ちっ、つまんねぇぜ」


正儀は台座に近づくと剣に触れた。

そして、柄に力を籠め握ると剣を抜き放とうとした。

だけど聖剣が台座から抜ける事はなかった。

うんともすんとも、一ミリも動く事がなかった。


「うん…無理、みたいですね。俺はこの剣の担い手ではないみたいだ」


聖剣から手を放しそう声にする正儀。その瞬間、周りに動揺が走った。

特に、この選定の儀を携わるステラ姫やヴァレンシュ騎士長、この国の騎士達に。


「どういう事だ!?なぜ、抜ける者がいないのだ!?…姫様、これは…」

「あ、ありえません!?…確かに、私は“女神・アテネ”より”神託”を授かったのです。『この召喚の秘儀を用いる事で、世を照らす光の”勇者”、そして”聖剣の主”、”加護”を受けし者達を招けるでしょう』と!」


予想外の出来事の発生に動揺を隠せないステラやヴァレンシュを含む王国の者達。そして召喚組の者達。

ざわざわとざわつきの中、正儀がステラ姫とヴァレンシュ騎士長に向かって発言した。


「まだ。…まだ、挑戦していない者がいますよ。ステラ姫、ヴァレンシュ騎士長」

「なに!?一体、誰が残っているというのだ?確かこの場のいる29名が挑戦したはずだが!?」

「それは、どなたなのでしょうか、正儀様?」

「お二人は忘れているのではないでしょうか?この世界に来たのは俺達29名だけではありません。もう一人いたはずです」


正儀の言葉に、ステラとヴァレンシュは「そう言えば」と1人の少年の事を思い出した。

”勇者召喚”に巻き込まれこの世界に来たが、何故か“女神の加護”を有していなかった故に、本人の希望もあり王城から城下に移った名前もステータスもない不思議な黒いクロノカードを持っていた少年を。


「まさか…あの彼が?」

「その可能性はあるんじゃないかな?…だって、姫様、言ったじゃないですか。『勇者』と『加護』を持つ者、そして『担い手』を招くと」

「はっ!?」

「…確かに」

「もしかしたら彼のステータスは封印か何かされていて聖剣を所持して初めて浮かび上がるとかだったかもしれないでしょ?それなら彼のあの無茶苦茶なステータスだったのも頷けるってものだと思うんだけど。もしかしたら聖剣の担い手だから”加護”を持っていなかったかもしれないんじゃ?」


皆が正儀の言ったその可能性になるほどと納得する中、ヴァレンシュは1人の騎士の名を呼んだ。

ちなみにこの時私は、正儀の言った可能性は聖剣の担い手云々のみ共感、他の部分は何となく違うと履んでいる。


「ダレス!彼の所在は!あの少年は城下でどうしていた!数日前に、彼に新たな財貨を渡しに行ったのは貴様だったな?」


ヴァレンシュに呼ばれたダレスと言う名の若い騎士は何だか顔色が若干悪そうに震えた様に答えた。


「そ、それが…。じ、実は…あの少年ですが…既に、この国を出たとの事です」

「な、なんだと!?」


その言葉に怒声を上げる騎士長。


「ヒィ!?…は、はい。…騎士長に言われた通り、その少年に新たな財貨を渡しに、騎士長が指定された宿に向かったのです。ですが、彼は既にこの国を出たと。…その場に居合わせた、宿の娘と冒険者の女性から、確かに」

「…それは、何時の話だ!彼がこの国を出たのはいつの話だ!」

「それが…召喚された次の日にはもう出たと」

「そんな、馬鹿な…」


そのダレスと言う名の騎士が話した内容を聞いた私は「やっぱり」と思った。

まさか次の日に出て行くなんて。

なんでだろう、笑みが浮かんでしまいそうになるわ。


「無謀だ。彼のステータスは戦闘力の無い状態なはずだ。外に出ては魔物に殺されるのがおちではないか」

「それですが、届けに行った際にその二人の娘に聞いたのですが、その少年は“紫”の冒険者を圧倒したと聞いたのですが」


その事実に騎士長は驚いていた。

“紫”の冒険者なら、この国の下級から中級クラスの騎士を相手にできるらしい。

それを、召喚されてからまだ一日も経たずに彼は倒した。

突然の召喚で戸惑っている状態のはず。

召喚組で、戸惑う事無く遺憾なく実力を発揮できたのは正儀と咲夜くらいの者だと言えた。

戸惑いの中、実力を発揮できる者などそうはいない。


だが、彼はそれをやってのけた。

つまり、彼は実力を隠していたという事だ。

ヴァレンシュは「なぜ、あの時気付けなかったのだ!」と後悔していた。


「ダレス。何故、その事実をもっと早くに言わなかった!」

「す、すみませんっ!それ程、重要なものではないと、思っていまして…」

「くっ……そうだな。ダレスを責めるのは、些か早急だな。それよりも、姫様」

「そうですね…とにかく、彼の居所を早急に把握しなくてはいけませんね。かの魔王に決定打を討てるのはこの聖剣だけなのですから」

「姫様…了解いたしました。とにかく、彼を追う者を選定し迎えに行かせましょう」

「(Chance!)」


私は騎士長のその言葉を聞いた瞬間、これはまたとない機会だと思い前に進み出ると騎士長に一つの提案を申し出た。


「騎士長!それですけど、(名無し君)を追う役を私に任せてもらえないかしら?」


ステラ姫とヴァレンシュ騎士長は私の方に視線を向ける。周囲のクラスメイト達も私に視線を向けてくる。

私はそんな視線を無視して畳み込む様に言葉を続ける。


「この国の者では、彼も警戒するのではないでしょうか?なら、クラスメイトの者、同郷の者の方が説得にも応じ易いのではないでしょうか?でしたら私がこの中で適任者だと思いますよ。どうやら他の者は普段から彼に良い感情を持っていなかったようですし」


数人ではあるが【彼】に対して善意のあるクラスメイトはいるようだけど、それはほんの一握り。

この理由なら私だけで彼を追う事が出来る!――そう思ったのに。


「咲夜、待ってくれないか?それなら、俺も一緒に行く!俺も、彼に用があるんだから!」


予想外に傍にいた正儀も彼を追う役を申し出てきた。

正直、私一人の方が良いんだけど。と私は何処まで空気読めないのだろうかこの馬鹿はと内心思っていたりする。


正儀の発言に、ステラ姫とヴァレンシュ騎士長が何やら話し合いをしている。そして結論が出たようだ。

私が告げた事が確かにと思い、この国の騎士より話の通じやすい同郷の人間の方が此方の事情の説得に応じやすい、という事を考慮したみたい。

結果、私、正儀のグループ(話をしている内に他の2人に了承を取ったようだ)の3人に、騎士側からはヴァレンシュ騎士長が同行する事になった。


そして、他の者達も「それならいい加減自分達も外に出たい!城に罐詰ばっかはいい加減嫌だ!」と主張しだした。


そして、勇者召喚を行った事実を大々的に発表した後、ある条件の下で許可を出す事になった。


一先ず私達は、まず彼が最初に泊まったらしい宿に向かう事になった。


(待ってなさい、名無し君!直ぐに逢いに行くからね♪)


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