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初めに戻って繰り返す  作者: 山都光
1章:外伝
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その頃の召喚組:『初めての迷宮挑戦②』

(…つまらないわ)


これから魔物と呼ばれる存在と実際に戦い、実戦の空気を感じる事を目的に迷宮と呼ばれる場所への移動中に私こと神童咲夜が思った事だった。

それはまず二つの事が原因と言えた。


一つ目は迷宮探索の際に私は1人で戦う事を希望した。

信頼もない者と組んでも、連携等行えるはずもない。そう考えていた事と、いずれは1人で此処を出て”彼”を追い掛けるつもりだったからだ。

無論一人で潜る気はない。

ただ団体を組む気はないだけだった。

結局はこの国の実力者であるヴァレンシュ騎士長に止められた。

『迷宮のような場所で単独の行動を取るのは自殺行為にも等しい』、と……

流石に訓練でも世話になっている彼の言葉を無碍にすることも出来ず不満バリバリではあるが了承した。

正儀が自分のチームに来ないかと誘ってきたが、なんで正儀と一緒とかウザいだけだから一蹴して断った。

私はチームが組めていない者同士で組むことになった。

それはいい。


もう二つなのだが、それは今の状態のせいだった。

南方にある迷宮までは馬車を使って移動する事になっている。

当初は私も外の景色を眺めながら行けると喜んでいたのだが、馬車の窓部分は仕切られており外からはもちろん内からも外の様子を見ることはできない様になっていた。

ヴァレンシュ騎士長の説明で、今回の私達の召喚はこの国の民にはまだ公表されていない事が要因だった。私達の存在は訓練が進み”ある時”を見て大々的に公表する。

そういう手筈となっており、だから私達の存在を悟られる事を避ける処置だった。


(本当につまらないわ…むう…もしかしたら”彼”の姿を目にできるかな?とか思っていたのに…)


そうなのだ。

私はこの移動の際にもしかしたら城下にいるかもしれない”彼”の姿を目に出来るかなとちょっとした期待もあったのだ。もっとも今の時間は日の出が出てくるほどの早い時間なので人の姿のもほとんどない。


――アルテシア王国は城を中心に4つの方角で区分されている。咲夜達が赴く迷宮は南方。つまり南方の区域を通り門を抜ける。因みに惶真は北方方面の宿を利用し、この時点で既にこの国を出て同じ方角の北方にある森に入っているので、2人が顔を合わせることはなかったはずだ。


(……むぅ、この揺れもあるけど、…ちょっとお尻が痛くなってきたわね…馬車の移動って、考えものなのね…)


初めて乗る馬車に今回参加する咲夜を含めた少年少女は始めは和気藹々と言ったように燥いですらいたのだが、何分揺れが生じるのだ。騎士団の中で一番良い馬車を選んでいるがそれでも乗り心地が良いとは言えなかった。

何より現地に着くまでは座っている事しかできないのだが長時間のしかも硬い座椅子にお尻の負担が蓄積していた。

ふと隣に座っている雫に声を掛けた。


「辛くない雫?」

「えっ、あはは、ちょっと痛いかも、です。咲夜さんは平気なの?」

「いえ、痛いわ。馬車も考えものね」

「あはは」


そんな少年少女の様子を「ははっ」とどこか微笑ましいと言える笑みを浮かべている6名の騎士達。


そんなこんなで40分程経過した。

馬車が止まると外に出るように促される。

どうやら目的地に着いたみたいだ。


皆何処か「よっこらしょ」と言わんばかりに座位から立ち上がる。

私もジンジンとするお尻の鈍い痛みを堪えつつ立ち上がると外に出る。


外に出ると皆声を漏らしていた。

普段では見る事の出来ない景色があった。

サバンナの景色に似ているだろうかと私は思った。

それと同時に不思議と疑問が浮かんだ。

だって目の前に景色と不釣り合いと言える洞窟、判り易いとトンネルの入り口の様なものがそこにあった。

そしてなぜか人の影が全くない事だった。


「…だれもいない?」


そんな声が漏れる。

その声が届いたのかは分からないが、ヴァレンシュ騎士長が説明し始める。


「では皆に簡単に改めて説明するぞ。此処は基本准騎士となった者や初めて冒険者となった者が訓練目的で挑戦する初級の迷宮だ。階層は下に向かって30階層程の規模だ。我々の目算では今日と明日の二日で攻略が出来るくらいだな。まあ皆の能力次第では今日中に終えることも出来るやもしれんがな。あと、周囲に人気がないのに気付く者もいるようだが、今回の遠征は内密に行うものである為この辺の周囲には人払いをしている。それから――」


そのあと、迷宮洞穴についても語ってくれた。自然の洞穴に魔力が満ちる事で内部が変質して発生する場所の事で、原理は不明だが自然と魔物もそこに発生するみたいだ。

そして変質した洞穴は魔力が満ちている程深くなり、また魔物も強くなるようだ。

今回挑戦する此処は初心者の冒険者でも比較的安全であると言われている30階層程の深さでそれほど強い魔物もいない場所となっているみたい。

ステータスや技能がチートであろうが戦闘面では初心者である私達の実地訓練には丁度良い場所となっている。


説明の後、それぞれ一人一人に傷を癒し体力を回復してくれる体力回復ポーションと魔力を回復する事が出来る精神回復ポーションを支給された。

私はそれを”腕輪”の中に収納する。

他のクラスメイトはウエストに付けているバックに入れていた。



洞窟にさっそくと足を踏み入れる。

先導するのはヴァレンシュ騎士長を含む5名の騎士達だ。

1人は誰も来ないはずだが何かあっても困るとの事で見張りとしてレイモンドと言う名の騎士が残った。



――のち、彼は見張り役として残った事を悔い絶望する事となるのだが。




洞窟内の広さは、人が20人程で横に広がりながら進む程の広さがあった。

洞窟内を進み暫らくして茶色の皮膚をした醜い小鬼とも呼ばれるゴブリンが現れた。

まず手始めにとヴァレンシュ騎士長他4名の騎士が相手をした。

この様に戦うと良いぞと言う手本を見せてくれているみたい。

私は気分が高揚しているのかワクワクしていた。

早く自分の能力を振るいたいとうずうずしていた。


それからは私達もそれぞれの武器や魔法を駆使して襲い掛かってくる魔物と戦い始める。

私は”腕輪”から愛剣である黒い刃の短剣【刻夜】を取り出し右手に握る。

握り始めてまだ数日だが長年連れ添っているかのような感触を得ていた。


「ギシャーー!」

「うるさいわ…シッ!」


飛び掛かってきた角の生えた灰色の表皮をした兎のような魔物【ラビトン】の叫びの五月蠅さに眉を顰めつつ、魔物の攻撃を躱すのと同時に【刻夜】で切り裂き倒す。

生物を実際に殺すという行為に嫌悪感を抱くかなと思ったのだが、それほど感じないだった。

倒す対象が魔物だからとか考えが浮かぶが私は恐らく相手が人間であっても躊躇しないで剣を振るえる、そんな気がした。



他の者も苦戦する様子もなく襲い来る魔物を倒していく。


「ハッ!魔物なんてこんなもんなのかよぉ!雑魚じゃねぇかぁ!」


大振りの右の拳のストレートパンチでゴブリンの頭部を吹き飛ばす剛田。

その表情は弱者を痛め付けるのに愉悦を感じている様なものがあった。


「え、えーい、これでも、くらえぇ!」


震えの混じった声で人間代の大きさを持つ岩の魔物に向かって細見は風魔法”エアスラッシュ”を放つ。

細見の放った風の刃は岩の体を持つ魔物アースプルートを切り刻んでいく。

そして最後に放った風の刃によって魔物を両断に至り倒すことに成功した。

細見は嬉しく笑みを浮かべる。自分にはこんな凄い力が、自分よりも大きい存在であろうと倒すことが出来るんだと。


「行くよ、海治っ!せやぁあ!」

「ああ、任せろ。はぁあぁ!」


自分達の能力が実戦向きでないのを自覚している武藤と瀬戸は二人で協力しつつ武藤はその手の細身の剣、所謂レイピアの形をしたアーティファクトを。瀬戸は柄の長い錫杖のアーティファクトを駆使して倒していく。

2人の息の合った連携に随伴している騎士達も感心した声を上げていた。

2人としては自分の能力をもっと発揮したいと考えているが、武藤の召喚能力は一度使えば消えてしまう事もあり何度も披露するわけにもいかない。瀬戸の封印能力もこのような低レベルの相手ではインスピレーションが湧かないようで使用を躊躇っていた。

一先ずは戦い方を学ぶことを優先事項としつつ、騎士によれば、もう少し下層付近に行けば強めの魔物も出るという言葉に期待しつつ倒していく。


「アハッ、こんな醜い愚者(ぐしゃ)が、このわたくしの舞う舞台に上がるなんて、烏滸がましいですわね、アハハハッ♪」

「キャー♪素敵ですぅリルカ様ぁ♪」

「…ふふ、ガンバ、です…フフ」


高笑いと共に五条院リルカが優雅なステップを取りながら鋭い爪を持つ一つ目の青い身体の魔物【サイクロプス】をその武器である鞭を撓らせる様に叩き付けていく。

見る者を魅了するかのような舞だが、見る者によってはただの弱者を甚振り虐げているだけに見えるだろうか。自分が上位の人間であるという驕りからきているのだろうか。

五条院の表情からまだまだ余裕がうかがえた。

因みに取り巻き二人は五条院の応援をするのみで何か援護を行う事もなかった。

随伴している騎士達は怪訝そうで『この者達には何をしに来たのであろうか?』と思っていた。

試しにかなり弱らせた魔物を取り巻き二人に向けさせたのだが、それらも全て五条院リルカによって倒す結果となった。


蝙蝠の様な外見をした鋭い牙を持った魔物【コフィンバット】が啄木鳥雫に向かって襲い掛かる。

雫は「キャッ!」と悲鳴を漏らす。

雫は両手を前に怖さから目を閉じつつ防御系の結界魔法を展開する。

魔物はその鋭い牙で雫の展開した結界にヒビを入れる。

一撃で砕けなかった魔物は旋回すると再び攻撃を仕掛けようとする。


(やだっ、こわい、誰か……助けてよぉ…)


襲われる恐怖から涙目になる雫は心の中で助けを求める。

今までも雫はこうして心の中で叫んでいた。

誰かに助けてもらいたいと。しかし、虐められていた自分を助けてくれる人はこれまでいなかった。只々祈る様に叫ぶのみだった。


「あらあら、ちゃんと前を向いてなさい雫。そんな風に縮こまってちゃ駄目よ」

「えっ?………咲夜、さん…」

「ふふ、そうよ。貴女の友達の咲夜よ。さっ、しかり目を開けて前を向くのよ」


二タッとした魔物の牙から助けてくれたのは先刻に知り合い友達となった咲夜だった。

威風のあるその姿に、友達が私の心の叫びを聞き届けてくれた。その事実が嬉しく涙を流す雫。

そんな雫の涙を「綺麗ね」と呟く咲夜。

獲物を狩りの邪魔され怒りの奇声を放ちつつ魔物が高速に周囲を飛び回る。


「……目で追えるけど、困ったわね。あの速さは身体が追い付けないかな?」


高速で跳び回り相手の死角から一気に襲うのがこの魔物の狩りのやり方なのである。

その高速飛行に咲夜は目で信認は出来ていたのだが、地上戦ではクラス一の俊足を誇っているが今回の相手は空であった。

どうやって倒そうか考えていると咲夜の体が淡い光に包まれる。


「咲夜さん、え、援護、します!これで一回だけ空を蹴ることが出来ます!」

「フフ、やればできるじゃない。流石私の友だわ……ふふっ、今の私は空をも制す、てねっと!」


雫の援護を受け咲夜は目に追える相手の魔物の動きを予測し飛び掛かる。

魔物はそんなもんで捉えられるかよ!と言うかのように飛び掛かる咲夜を避け、咲夜の首元を狙い襲撃しようとした。

しかし、それも狙い通りと口元を笑みにしつつ雫から貰った援護魔法を使う。

身体の捻りを加えつつ空中で足蹴にすると、空で急に体の向きを変え自分に剣を振りかぶる少女に驚く魔物。


「さよなら」


そう告げると共に刻夜を魔物に向けて振りかざし倒すのだった。


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【おまけデータ:魔物図鑑】

魔物名:アースプルート

魔物ランク:低級

属性:地 苦手属性:風

○大地から出ている人型の岩の魔物。大きさは人より少しでかい位のサイズ。動きは鈍い。


魔物名:サイクロプス

魔物ランク:低級

属性:地

○一つ目の180センチくらいの大きさを持つ青い体の人型魔物。


魔物名:コフィンバット

魔物ランク:低級

属性:風

○鋭い牙を持つ蝙蝠型魔物。高速で跳び回り鋭い牙で獲物を襲う。



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