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召喚は突然に(仮)  作者: abeL
8/15

体と頭を鍛えよう

8


トールは息を弾ませて剣を両手で持ちながら前方を睨んでいた。目の前にはスキンヘッドの肌黒いオッサンが余裕の笑みを浮かべながら立っていた。トール同様に木の剣を握りしめている。

オッサンーソラウスは、

「もっと全体を見ろ!1対1でこの様だと、お前は呆気なく死ぬぞ?…魔物は基本的には集団で襲いかかってくるし…息が整うまで待ちはしない!」

そう言って突如、下段に剣を構えながら走り込んでくる。

「クソ!」

トールはソラウスの動きを視ながら構える。ソラウスの筋肉の動きからそのまま下段を払ってくる事が予測され、トールは剣先を下にして防御しようとするが、ソラウスは突然動きを止める。

「なっ!…ガハッ!」

剣の反対方向からの衝撃で吹っ飛ぶ。視界の外からソラウスの拳が振りきられたのだ。

「トール…お前は目が良すぎる。…そして目に頼りすぎだ。だから、こんなフェイントにあっさり引っ掛かっちまう…。現時点ではお前は前衛、もしくは遊撃で生きていくしかない。…飛び道具がないからな。じゃあどうすればいいか…それは自分で考えろ。今日の午前中はここまでだ。」

ソラウスは吹っ飛んで仰向けになっているトールに告げ、家に戻る。


トールが目を覚ました町ーオーサルーでソラウスとの修行の日々を過ごしていた。森から町まで運んでくれた冒険者ーソラウスーとの共同生活だ。午前中は体を酷使させられ午後からは頭を酷使させられる、そんな生活も早1ヶ月が過ぎようとしていた。地球で格闘の経験がないトールは基本的には午前中で既にボロボロになる。

「頭ではわかってるんだけどな…視覚強化(千里眼)に魔力を回しすぎるとこうなるって…肉体活性で不意討ちなら圧倒出来ると思うがな…経験が圧倒的に足りないな。…まだまだだ…よっと!」

仰向けになったままもっと鍛えないと自分に言い聞かせて立ち上がり、ヨタヨタと家に入っていった。午後からは勉強だ。


午後

「さて…復習しようか。…トール、今お前がいる場所はどこだ?」

机に対面で向かい合っているソラウスから質問が飛んだ。

「えっと…俺がいる場所は『イニムティウル大陸』の『オーサル』です。」

トールが答える。

「そうだな…では、この町で危険な場所は?」

ソラウスが続けると

「オーサルより北方…川の上流にある森…通称『魔璋の森』です。」

トールも続けて答える。

「よし。…正解だ。ちなみに『イニムティウル大陸』や『オーサル』に聞き覚えは?」

「いえ…全然。」

トールは答える。地球育ちの召喚された人間だ。聞き覚えがある訳がない。

「ふむ…なら、お前はこの大陸とは違う大陸から来たんだろうな…」

ソラウスは顎に手を当て呟く。

「まあ…いい。そのうち思い出すだろ…よし。しっかり覚えていたな…。今日は魔法の事だ。」

ソラウスはトールの記憶喪失の事を一旦、棚に上げて講義に移った。


「まず…魔法だが大別して『属性がある魔法』と『属性のない魔法』に別れる。『属性のない魔法』は『無属性魔法』と呼ばれ、主に『自分の身体を強化する魔法』だ。…トールが使っている魔法はこの『無属性魔法』だな。これは魔力を体内で循環させて活性化させるわけだが、はっきり言って魔力がある者なら誰でも使える。…剣士や拳士、槍使い等の前衛を担う者はよく使う魔法だ。」

ソラウスは一息でそう説明する。

トールは説明を聞きながら(だから、ソラウスは俺の動きについてこれるのか…)と考える。

「…『無属性魔法』は極めて高い汎用性のある魔法だが、デメリットがその分デカい。何故なら魔力を常に体内で循環させていなきゃ持続させる事が出来ないから魔力の消費が半端ない。魔力は有限だから、大体の奴は瞬間的に使う。魔力が尽きたらその場で倒れる。…お前が森で倒れたのは魔力が尽きたからだ。」

そうソラウスは結論づけるが実は違う。トールはあの時はまだまだ魔力に余裕があった。意識が飛んだのは初めて魔法を使った倦怠感と人の声に安堵したからだ。しかし、トールはソラウスにその事を告げない。話すとややこしくなりそうだからだ。トールは違う質問をする。

「魔力の量って皆、少ないものなんですか?」

そう聞くと、

「それは種族によって違うし、同じ人種でもオレやお前も人によって違う。一番多いのは恐らく魔族。次いでエルフだろうな。…獣人よりは多いがオレ達人間は下から数えた方が早い。」

ソラウスが教えてくれた。

トールはエルフや獣人がいるのかと目を輝かせるがソラウスには聞かない。話が脱線するからだ。ソラウスも

「おっと…話が逸れたな…今は魔法の話だ。無属性魔法についてはこのくらいか。…喉が渇いたから少し休憩しよう。…種族の事はあの本に書いてあるから暇な時にでも読め。」

本棚を指差して家から出た。


休憩の間、トールはソラウスが指差した本棚から1冊の本を手に取り読んでいた。少しして、ソラウスが何やら球体を持って戻ってきた。

「よし。…では続きを始めようか。『属性魔法』からだったな。」

机に球体を置いて勉強の再開を告げる。

「はい。お願いします。…それは?」

目線を球体に向けながら頭を下げる。

「ああ、これか…これは後から使う。…では、『属性魔法』だが属性魔法には『7種類』ある。『光闇火水風土雷』だ。それぞれの魔法を『イメージ』する事で覚えられる。こんな風にな。…『灯れ、火よ』」

そう言って、ソラウスは人差し指を上に指す。人差し指には火が灯っていた。

「おお~。」

トールは感嘆の声と拍手をした。

「そんなに大したもんじゃない。俺は火しか使えないしな。」

ソラウスは頭を掻きながらニヤケた。恥ずかしいのだろうか。

「俺にも使えますか?」

身を乗り出して尋ねると、

「火に親和性があればな。…そして親和性はこれで確かめる事が出来る。」

そう言って、ソラウスは球体に手を置くと球体は赤くなった。

「おお、スゴい。…火に親和性があると赤くなるんですか?」

そう言ってトールは球体に触れようとする。

「そうだ。…この『水晶』は親和性を測る物だ。…待て!今は触るな!オレが手を置いているから!…この水晶は2人以上の魔力を持った者が同時に触れるとそれぞれの親和性を測って壊れてしまう。借りてきただけだから今は触るな。…壊すとバカ高いからな。」

そう忠告して、ソラウスは手を離し、

「では、トール。…手を置いてみろ。」

ソラウスに促されてトールは手を水晶の上に置いた。水晶は『中心部』が真っ黒だ。

「これは…?」

トールは恐る恐るソラウスに聞くと、

「トール、お前は『闇』だな。」

ソラウスは中心部を見てそう伝えた。


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