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召喚は突然に(仮)  作者: abeL
6/15

『夢』と書いて補足と読もう

6


黒髪の少年は夢を見ていた。


少年は『何を考えているか解らない少年』だった。

かつての自分は色々な事に興味を持ち能動的であった。机の前に座り勉強する事も苦にする人間ではなく、スポーツで体を動かす事も嫌いではなく、寧ろ大好きな人間だった。

高校時代には運動部に所属した。だが馴染めなかった。物覚えが良く基礎的な動きを早くに習得してしまい、同級生から浮いてしまった。また、先輩達の動きを見よう見まねで動くと意外にも先輩達よりも良く動けてしまい、先輩達から疎んじられ、『可愛いげがない。』と先輩達からの指導もらえなかった。だからこそ傑出した選手になる事はなかったが、それでも並だった。努力すれば才能が開花して今の環境が一変する可能性があったのだが少年は『出る杭は打たれる』という格言を実体験してしまい『目立ちたくない。』そう考えるようになった。

少年は実に残念だった。体は細身だが手足は長い。顔に至っては完璧と言っていい左右対称だ。鼻筋はしっかりしており思春期のニキビなどはない。これだけのポイントがあればイケメンでありモテモテ街道だ。目さえ変えれば。少年の目元は一重まぶたで目が細いために『いつも眠たそうな』印象を与える上に焦点を合わせる際に細い目を更に細くするクセがある。なので少年に話し掛ける者は『話し掛けただけでニラまれた。』という事になってしまう。

授業中では『そんなに俺の授業は眠くつまらないか!…なら教室から出ていけ!』と教師に言われる事も多かった。今なら大問題になるがあの頃はそうでもなかった。親も少年を叱った。少年も気にしなかった。

肉親にすら理解してもらえてなかったのだから他人に理解してもらえるはずはなかった。


少年はグレなかった。こんな経験をしたのにもかかわらずに。

少年は伊達メガネを掛ける事で本の少しだけ印象を和らげる事に成功した。少年は少しの努力(メガネをかける)事で普通を取り戻し満足した。

ちょっとの努力で普通を取り戻せたのだ。これ以上努力する必要はない。出る杭は打たれる事を知っていた少年は無難な大学を卒業し無難なサラリーマンになった。


基本的な仕事を覚える事だけ努力して覚え、出世する為の努力はしなかった。上に上がらなくても普通に暮らせるのだ。努力する必要もない。

少年は青年に、そして中年に差し掛かる年齢まで成長した。しかし、精神は何ら成長しなかった。学生の内に『|杭はでなければ打たれない事《悟り》』を知っていたから。

一瞬で場面が切り替わり、世界も変わった。中年は少年に戻って様々な体験をしていた。その少年は汗をかきもがいてもいた。様々な知識や技術を得る為に努力していた。苦悶の表情を浮かべていながらもその表情は輝いていた。


『大成するのじゃ…』老人の声が聞こえた気がした。


また場面が切り替わった。闇の中だ。

『大成するのじゃ…』

また聞こえた。聞こえてきた方向から光が射した。

少年は光に向かう。



少年()はゆっくりと瞼を明ける

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