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召喚は突然に(仮)  作者: abeL
4/15

今回、戦います。

後、前話の垂直跳びの高さを変えました。

4


高梨 透は、森に入っていく。異世界の森に。地球(あちら)の森とは危険度が明らかに違う森に。地球の森ですら野生の動物がいるから、それなりに身を堅めて入るというのに。異世界(こちら)の森では現時点でハーピー(バケモノ)が確認されている森なのに一般的な服装(丸腰)で入る人間は自殺志願者か己の力を過信した愚者であろう。

高梨 透は後者であろうか。決して愚者ではない筈だが、自分の意思で『魔法が使える』事と『身体が若返った』事で『小中学生の頃、保護者の同伴もなく友人と山、森、川や海ではしゃいで遊んでいたヤンチャだった頃』を思い出し、深く考えずに愚者の選択をしてしまったのだ。

愚者の選択をして森に入った透は注意深く歩いている。キョロキョロと辺りに目を配りながら歩いている。たまに風の戯れでガサッと木の葉を揺らす度にビクッと肩を竦めてそちらを向いてしまう程にビクビクと。

「ふぅ…ビックリした…風か…しかし高い木が多いな…」

胸を撫で、竦めた肩を下ろしながら透は木を見上げながら言う。木の高さは約10m位あるだろうか。前後左右の距離感は掴みやすいが高さの距離感は掴みにくい。

ガサッ

今度は少し奥の方で音がする。これは風ではない。なぜなら自分の目線と同じくらいの高さの茂みから音がしたからだ。その距離はおよそ8m。

透は咄嗟に近くの茂みに入り屈み、

「何かいるのか?」そう口にしてしまう。

普通は声を出さずに息を潜めて様子を窺うところだが、透にはそんな経験はなく、また未知の怖さからつい口から出てしまった。

慌てて口を手で覆って音がした方に視線を向けて力を込めると途端に鋭く光る牙が飛び込んできて目を瞑り後ずさる。

『ぅわ…』何とか叫びを呑み込む。力の込めようが多くズームになりすぎだ。加減が難しい。

少しだけ力を弛めて再び視線を向ける。鋭い牙の持ち主は…(ウルフ)だろうか…

(ウルフ)は逞しい前肢を軽く広げて前屈みのような態勢でグルルルッと更に奥の茂みを威嚇している。いつでも跳んで襲える態勢だ。

今度は更に奥の茂みに透は目を向けると、ガサガサッと何かが出てきた。透は状況を把握する為に耳にも力を込める。

(ウルフ)の奥からは人型の生物(やっぱりバケモノ)が出てきた。人型の目は黄色く見開かれており、口元は(ウルフ)程ではないが人間より大きく裂けており歯はノコギリみたいに鋭く涎を垂らしながらギャッ!ギャッ!と喚いている。身長は120~140cm位だろうか…醜悪と言っても差し支えない頭部に比べて少し華奢(きゃしゃ)な体は朽ちた木の鎧みたいな物で覆われており手にはボロボロな剣のようなナイフみたいな刃物を持っている。…愛読書(ラノベ)で見た事がある…魔物(ゴブリン)だ。


ゴブリンを(なま)で見られた事に興奮しながらも狼とゴブリンを見比べる。ゴブリンは朽ちたとはいっても武器に防具を装備しているが狼の方が身体能力は高そうだ。だが、ゴブリンと言えば…

ガサッガサガサッ

強化した耳(地獄耳)では近くに聞こえてしまうが奥からもう3体のゴブリンが出てきて並ぶ。…そう、ゴブリンは単独では行動しない。ゴブリンは集団もしくは群れて行動する。知力はほぼ無く、チームワークなんて無いだろうに。…愛読書(ラノベ)情報だが。

しかし、数の増加は戦力の増加に直結する。1対4は狼にも厳しいか…。


ハッハッハッハッ…


狼の短く吐く息が聞こえる。それでも狼は()る気なのか。

ゴブリン全体が見えるように少しだけ距離を取り、再び前肢を屈め、唸る。狼は受けに回るのか、飛び込む気か…前肢には力が入り、鋭い爪は大地を咬んでいる。



ギャオッ!…横に広がったゴブリン達が狼に向かって剣を振りかぶり一斉に突進する。あんな醜態の魔物に迫られたら、透なら身が竦んで動けず剣で叩き斬られるだろう。ーだが、そこは透ではなく狼だ。

狼は一旦後ろに跳び退き4本の剣をかわし、後方に着地すると同時に斜め前方に一気に駆け出す。一陣の黒い風のように。

スカッと空振りしたゴブリン達は狼を視認しようと目を向けるが既にそこには狼はいない。左端にいたゴブリンは目の(はし)に狼を捉えたのか、そちらに顔を向けた時には狼はゴブリンに跳び込んでおり、そのままゴブリンの喉を爪で切り裂く。

喉を裂かれたゴブリンは断末魔の叫びを上げる事も出来ずにその身を崩し倒れるが、狼は止まらない。倒れたゴブリンを見ていた他のゴブリン達はは狼の姿をまた見失う。ギャアギャアと喚きながらキョロキョロしているが、後は巻き戻し再生を見せられているようなものだった。また1体…もう1体と同じ手段で命を散らされていく。…最後の1体は狼の鋭い牙で喉を咽えられたまま絶命している。ほんの数分の出来事だ。狼の一方的な勝利だった。狼とゴブリンのスピード差が歴然であった結果だ。しかし、透には視えていた。ゴブリンの動きは当然として狼の動き一つ一つに至るまでも。

視覚強化(千里眼)なら動体視力も上がるんだな…」

透は心の『無属性魔法の使い方(マニュアル)』にそう書き留めた。


狼はそのまま対峙していたゴブリン達を咀嚼(そしゃく)し始めていた。目が離せない透はそのまま見てしまっていた。尻尾を振っている後部だけは愛着が沸きそうな感じだが前部の様はスプラッタだ。沸き上がりそうであった愛着が引っ込み、今度は胃の奥から嘔吐感がせり上がる。ここで吐瀉(ゲロ)したら嗅覚鋭いであろう狼に気づかれる。

透は涙目になりながら必死に嘔吐感と闘う。本当なら目を瞑って嘔吐感だけに意識を向けたいが野性味溢れる狼から目を離す事は出来ない。


だから気づかなかった、いや気づけなかった。透に向かってくる気配に。

無属性魔法(ゾーン)視覚強化(千里眼)聴覚強化(地獄耳)等である特定の情報にだけに意識を向け過ぎるとその他の周辺の情報が入ってこない。ある一点だけに集中して見れば周りが見えなくなる事と同様だ。実際には情報は捉えてるのだが脳が多すぎる情報を処理しきれずに『今、必要としている情報』以外を処理しない為に『見えていない』し『聞こえてこない』のだ。

透は今日初めて魔法を使い、そして能力の把握に努めている初心者以下の存在だ。だから、透は気づけない。



透に『異世界の危険(洗礼)』が降りかかる。

狼とゴブリンが戦いました。


主人公は次回で戦います。丸腰で。


魔法を使う際は力を込めます。魔法を使わない場合は力を入れます。

意味に大差はないかも知れませんが、これに拘りたいと思います。

ゾーンを使用する時も『見え』はじめて『視る』や『聞き』はじめて『聴く』みたいにしていこうと思います。

なので今回を含め、全話を確認して修正していきます。

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