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召喚は突然に(仮)  作者: abeL
2/15

2 老人は話が長い。


「神…様…ですか…」

まあ、そうだろうなと思いはしていたが、大事な事なので言葉に出す。

「そうじゃ…テンプレじゃろ?」

いや、確かにテンプレだが何か違う。俺の知るテンプレなら、ここで出てくる存在(かみさま)は美少女か美女だ…。眉間に皺を寄せてそう思ってしまう。…いい歳した健全な成人男子なら当然だろ?…美少女を期待する時点で健全なのか疑わしいが…。

「何やら不服そうじゃが、仕方がなかろ?…まあええわい。…時に、高梨 透、お主が召喚魔法に引っ掛かったのはな…魔力を持っとるからじゃ。」

サラリと重要な語句(ワード)を言う神に、

「え?…魔力?俺、魔力持ってんの…ですか?」

少しテンションを戻して聞く。…言葉が丁寧になるのは仕方ない。…相手は神だもの。…TPOは弁えている社会人だ。…死んだけど…。

「…日本人は魔力やら魔法が好きじゃのう。…じゃが、魔力は誰でも持っとるぞ?…まあ微々たるものじゃが。」

少し引き気味の神が説明してくれる。

「なら、俺じゃない可能性もあったわけか…なら何故(●●)俺なんだ?」更に疑問が生まれ口にする。…言葉使いが戻ったのは、今更に神を敬っても意味がない事に気付いたからだ。どうせなら敬うのは異世界の神にだろう。

「…お主の魔力は他の者より多く強い。…異世界(向こう)でも超強力といわれるくらいにの…じゃから召喚に引っ掛かったのじゃ…」

事典に目を通し、俺の口調が戻った事を気にすること無く説明を続け、

「魔力が強いのはな…お主は魔力使っておったからじゃ…。筋肉は使うと鍛えられると同様にの…。まあ、道理じゃのう。」

その論理は理解できるが、別の事が理解できない。

「いやいや…じいさん…。さっき魔法(●●)は行使出来ない世界と言ってただろ!おかしいだろう!」

尤もな反論を告げると、(じいさん)は、

魔法(●●)魔力(●●)は違う。…魔力を利用してイメージを具現化させたモノが魔法じゃ…。儂の世界(地球)では規制を掛けておったが、稀に具現化させる者がおる。…(わし)さえも預かり知らぬ…正に奇跡の力じゃな…。お主もそういう側の者じゃ。」

今度は、じいさんが眉を寄せて言う。どうやら魔法が好きではないらしい。

「俺は火とか水とか出した事ないぞ?」

そんなの出せたら引き籠っている。

「お主は、魔力を使って脳のリミッターを外す事があった…。頻繁にの。…知り合いから言われたじゃろ。『緊急時や切迫した状況に置いてて頼りになるのはお前だ。』とな。」

神は事典の文字を指差し、目を離して読み上げる。…老眼か。

「それは所謂(いわゆる)、『火事場のクソ(ぢから)』とか『ゾーン』というやつだろう?それは普通に普通の人も使ってるぞ?」

「お主は魔力を使った『火事場のクソ力』や『ゾーン』という名の『無属性魔法』じゃ。普通の者の場合は 『極限状態の無意識下による普通の力』じゃ。…お主は意識的に引き出しておったから違う。別の代物(しろもの)じゃ。」

違いが解らないが、神がそう言うなら、そうなのだろう。…心と頭の安定の為に無理に納得する。

「さて、まだお主に伝えなければいけない事がある。」

まだ、あんのか…。起きてから死ぬまでの時間よりも滞在時間長いぞ…。

肩を落としゲンナリしながら手を差し出し続きを促す。


『…お主を召喚したのは異世界(向こう)の神じゃが、何かして欲しいワケではない。…敢えて言うなら『異世界(こちら)で生きて欲しい』そうじゃ。…お主は好きな様に生きよ。」

「召喚魔法を行使してまで望む事じゃないよな!」

思わず突っ込むと、手で制しながら

「神なんてモンは気紛れの極致の存在じゃ…。どうせ、『つまんない!…なんか面白い事を起こそう!』くらいのノリじゃ…。」

呆れながら言う。

「…まあ、いいか。…で、俺は身体がないワケだがそれはどうなる?」

「…意外と淡白じゃの…。身体は向こうの神が用意しておる。若くはなっとるが生前と身長等の身体的特徴は変わらん。若返ってラッキーくらいに思え。」

「…わかった。…無属性魔法(火事場のクソ力)は使えるのか?」

「安心せい。魔力は精神に依存しておるから使える。…他にはないかの?」

互いに淡々と会話を続ける。じいさんも疲れてきた結果だろう。

俺の後ろの方で扉が静かに出現し、じいさんがそれを指差す。

俺は振り返り、扉に向かって歩みを進めながら不意に立ち止まり、じいさんに向かって

「…チート能力の賦与は?」

最後にテンプレ宜しくな言葉を期待を込めて告げる。

「…ない。甘えんな。…行け。」

ちくしょう。…歩みを進め、扉をくぐる。


一人になった部屋で神はお茶を啜りながら

「…無属性魔法がすでにチート(ずる)じゃろうが…」

そう独り愚痴た。

次回で異世界に入ります。



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