いじわる
「笑っちゃダメ」
その子は言った。
「学校で笑っちゃダメ。わたしがいいって言うまで。」
ともだちだと思っていた子が命令する。
私は逆らうことが出来ない。
夕方に観ていたアニメ。
その子と一緒に遊んだ時も、二人で観た。
「あのアニメ、見ちゃダメ。」
母の手作りの洋服。
母とお揃いの。
「それ、着てきちゃダメ。」
学校のお友だち。
「あの子もあの子もあの子もみんな、あなたのこと、嫌いだって。」
先生が心配そうに声をかける。
「大丈夫?何か心配なことがあるの?」
私は首を降る。
あの子が見てる。
「先生と仲良くしちゃダメ。」
一緒に帰る道で、彼女はささやく。
「わたし、魔法使いなの。何でも願い事を叶えられるのよ。」
不幸の手紙。
「誰かにこれを回せば助かるんだよ。もらって。」
私にくれた。
「ふふ、これであんた呪われたね。」
一年が過ぎる。
私のこころはカサカサしている。
テレビの占いで私の星座が一位になっても、私の運命は変わらない。
今日も、あの子が見張ってる。
2階のベランダから、庭を見下ろす。
―――――ここから飛び降りたら、死ぬのかな。ここから飛び降りたら、自由になれるのかな。誰にも邪魔されずに笑えるのかな。誰にも邪魔されずに―――――
頬を涙が伝う。
ある日、彼女は言った。
「あーあ、魔法が使えたらなぁ。」
私は首をひねる。
「あれ、あなた魔法使いなんじゃないの?前に言ってたよね。」
彼女は鼻で笑う。
「あんなの冗談に決まってるでしょ。魔法使いなんているわけないじゃん。」
彼女は魔法使いじゃない。
カシャンと鎖の切れる音がした。
私は、自由になれる。
私にかけられた魔法が溶けた。
背中に背負ったランドセルがカタカタ鳴った。