03話 シリアナード・レイの思いつき
尻穴を守るべく色々と考えます。
はい、こんにちわ。シリアナード・レイです。
名前のせいですね、とても明るい未来が待ってる気がします。
現実逃避はこのあたりにしないと、ひげもじゃ胸毛ぼーんな熊っぽいおじさまに買われる未来しか見えないね、これ。
というか今まで触れてこなかったけれど、というか触れたくなかったから触れなかったんだけれど、ボクってそれなりな見た目なのね。尻穴的な奴隷になるには十分なんじゃんってくらいには可愛らしい感じ。一つの未来に向けてどんどん追い詰められてる気がしてなりません。
でもね、ボク気が付いたんです。魔法も剣もからっきしですが、実は前世の記憶持ってる異世界から転生した系男子なんですよね。全く一切役立ってないから自分でも忘れそうですけど。
計算。多分、これって大きいんじゃないかなって思うんです。数学は高校の時にサックリ諦めて私文専願に逃げちゃったけど、流石に算数レベルの計算ならできるしね。このあたりをアピっていけば、何とかなるんじゃないかしらん。理科の知識も役に立つ気がする。下手したらボクの持っている知識って、この世界の人かしたら思わず、全裸で風呂から飛び出して町中をエウレカって叫びながら走り回るレベルの可能性あるもんね。
あっ、なんか希望出てきたかも。ちょっと明るい未来が見えてきたんじゃん、これ?
江戸時代とか、寺子屋で読み書きそろばんを子供に教えていたおがげで、識字率は世界トップだったらしいけれど、それって逆に言えば、一般大衆には教育って縁遠いって意味だもんね。
そう考えると、読み書き&計算が出来る奴隷ってお値打ちなんじゃないかな。おっしゃ、自信が出てきた。
そうと決まればアピール開始だね。
「あ、あの、すみません、ちょっと良いですか? 実はボク計算が得意なんです。これって、……売られる時に良い商売文句になったりしませんか?」
なるべく流暢に話そうと思ったけれど、やっぱり「売られる」って言葉を自分で言うのには、ちょいとためらわれちゃったね。
で、奴隷狩りのおっさん、この人は結構、利に聡い人なのかも。ボクの話を聞いた瞬間、目が変わったもんね。よしよし、ボクの価値を分かってくれたようで何より。これで「それが何か?」とか言われたら、それこそ詰みだもんね。
「坊主、それは本当か?」
おっしゃ、食いついた!
「はい、計算だけじゃなくて読み書きも簡単なものなら出来ます」
隣にいる兄ちゃんがぽかんとした顔でこっちを見ている。当たり前だよね、あの村にはそんな教育は一切無かったんだから。でも、そのあたりは後で何とか適当なウソをでっちあげよう。今は、奴隷狩りのおっちゃんに上手いことアピるのが最優先。
「そうか、じゃあ試しにこれを読んでみな」
そう言うとおっちゃんは、ガサゴソと革袋を漁ると、何枚かの紙を取り出した。
「はい、拝見します」
敬語も完璧。これで、ボクは特別な教養のある掘り出し物だって、おっちゃんの目には映るハズ。
さてさて、何が書かれてるのかな?
これ、日本語でも英語でもないね。
はい、何て書いてあるか、さっぱりです。
詰んだわ、これ。
今世の記憶があるから、言葉は通じています。