3話:俺の……最初の
「時満ちしとき、貴君の願、真とする」
「あぁァァーーッ!!」
今日も高瀬羅 刹は、夢にうなされて目を覚ました。
「まだ4時か……」
この頃こんな日々が続いているため、高瀬羅 刹はあまり眠れていなかった。
「昨日話した女の子の情報開示許可が出ましたので、お話しします」
朝早い学校の中に放送が流れた。あまり眠れなかった高瀬羅 刹は、目の下にくまができている。
「1年3組、優衣崎 雪乃さん。身長158センチメートル、短い茶髪。写真は廊下に貼り出しました。見かけた人は教えてください」
「ゆきのって……同じ名前……」
高瀬羅 刹は、自分の書いた小説を思い出した。
「見に行くぞーッ!!」
クラスのほとんどの人が廊下に飛び出していく。廊下の人だかりが消えるまで10分、高瀬羅 刹はやっと写真を見ることができた。貼り出されていたのは、制服姿の短い茶髪の女の子の笑っている写真だった。
「こいつ……、いや、人違いだ。俺に初めて話しかけてきた奴はもっと……」
そこに貼られていたのは、あの女の子の姿だった。ずっと一人だった高瀬羅 刹に、初めて話しかけたあの女の子だった。
「くそっ!!」
高瀬羅 刹は、走って教室に戻って、自分の鞄を肩にかけ、
「ちょっと、どこ行くの? 授業始まるのよー」
先生の呼び止めに耳も貸さずに廊下を走った。
「もしかしたら……。もしかしたらだ……」
高瀬羅 刹の頭ですべてが繋がった。
「生きててくれッ!!」
高瀬羅 刹は学校を抜け出して、ニュースでやっていた場所に向かって走り出した。
「俺のせいだ。俺のせいだ……」
溝に靴がはまってしまった小学生、タバコを隠れて吸っている工事のおじさん。どれも目に映らなかった。高瀬羅 刹は、初めて何かのためだけに全力で走った。交差点の信号機も気にかけず走り続ける。几帳面で細かい高瀬羅 刹にとっては、いつもならあり得ないことだった。
「ここだ……」
息切れしながら、高瀬羅 刹は腕時計で今の時間を確かめて、鞄から小説の書いてある古いノートとシャーペンを取り出した。
「……。それから二日後の朝8時40分。少女は連れ去られた場所に何もなかったかのように戻ってきた。END」
ノートにはすらすらと文字が並んだ。話的にはものすごくひどいものだが、これで十分だった。
「これで……」
高瀬羅 刹は腕時計をもう一度見る。
「あと10秒」
高瀬羅 刹の推理は正しかった。雪乃の行った場所は、小説の中の世界。
「Novel World……」
その声と共に、制服姿の女の子が空中から現れた。大きな音をたてて、女の子は地面に尻餅をついた。
「いてて。どうなってんのよ。学校に遅刻しちゃ……」
「よかった。雪乃……」
自分のせいかもという重荷から解放されたからか、高瀬羅 刹の目から涙がこぼれた。
「何ッ!? 何で泣いてるの? てか何で私の名前知ってるのよッ!?」
「心配させんなよ……。……心配させた代償だ。俺の……最初の友達になってくれないか」
雪乃は今の状況が分からなかった。でも、自分が最初に話しかけた高瀬羅 刹が、顔を赤くしながら友達になりたいと言ってくれてるのは分かった。
「友達第一号。大切にしなさいよね」
「あぁ、もちろん」
高瀬羅 刹の顔に高校初の笑顔が浮かんだ。
「あ、そう言えば、何で私の名前知ってんの?」
「いや、それは……。学校に行けば分かるけど、雪乃は行方不明ってことになってるんだ。雪乃が消えてから二日たってる」
「えぇーっ!? なんでよ!? どうなってんの?」
「説明、長くなるけど……」
高瀬羅 刹は説明しながら歩き出した。二人は並んで学校に向かう。そう、この時から高瀬羅 刹の日常が変わり始めていた。良い方にか、悪い方にか、それはまだだれにも分からない。




