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ジェネラルの男と竜人の娘~戦いの果て~  作者: HATI
シュテル連邦国編
21/28

怪しげな石

 

「――――――――――――!!!」


 キリアの口が開いた瞬間、爆音が洞窟に響き渡る。

 音が大きすぎて、それが音だという事しか認識が出来ない。

 震動で天井から砂がパラパラ降ってきた。


 10秒ほどでキリアの咆哮が終わる。

 カルブ・モンキー達は耳を押さえて転げまわっていた。


「何をするか先に言え!」


 ベルギオンはキンキン響く耳を押さえて叫んだ。

 ラグルは予想できたのか耳を塞いで無事だ。

 しかし他の者は間に合わなかったようだ。何人か耳を押さえている。


「ごめんごめん。でも効果はあったでしょ?」

「ああ、あり過ぎる位にな。今のうちに行くぞ」


 キリアの背中を叩いて促す。

 ベルギオンとキリアは武器を装備し、ようやく立ち上がる敵へ斬りかかる。

 カルブ・モンキー達はまともに戦おうとせず、奥へと引っ込んでいった。

 ベルギオンは後ろに手招きして近づくように合図すると、キリアを引き連れて行き止まりへ進む。

 すると、広い部屋に出る。


「これは随分と広いな」


 地面から天井まで6メートルはある。

 真ん中を中心に丸く広がった空間だ。

 この部屋にも仲間がいたのか、カルブ・モンキーの数が5体に増えている。

 明らかに此方を見て憤っていた。


「ちと数が多いな。鈍いやつから潰そう」

「分かった。ハルバートの範囲に入って来ないでよ」

「死にたくないから気をつける」


 キリアと左右に分かれ敵へと走る。

 しかし動けぬ者に代わって他の二体がそれぞれに向かってきた。


「邪魔!」


 キリアはハルバードの柄で敵を殴りつけ、奥へと弾き飛ばす。


(あっちは任せてもいいな)


 ベルギオンは飛び掛ってきた敵をステップでかわす。

 その間に周囲をざっと見ると、人骨は見当たらない。

 まだ食われてはいないと判断すると、クラゼルへ呼びかける。


「今だ、呼べ!」

「マナ! 居るか!?」


 クラゼルは大声で呼びかける。その後隅の方で物音がした。

 ひょっこりと軽装備の女の子が出てくる。

 女の子はクラゼルに向かって叫んだ。


「兄貴、来てくれたんだ!」

「当たり前だ!」


 ベルギオンはその様子を確認しながら、カルブ・モンキーと戦う。

 見た目は黒いサルだ。筋肉が肥大化しており、2メートル近い高さを軽々と跳躍していた。

 しかし頭が悪いのか、力任せなだけで無防備な部分が多い。

 一対一なら怖くない相手だ。

 此方の足を切り裂こうとした敵を足で蹴り下す。

 そのまま剣で仕留めようとするが、手前で転がって避けられた。


(しぶとさだけは中々だな)


 そうしているとクラゼルがマナを迎えに走る。

 マナは足を捻ったのか、動きが鈍い。

 クラゼルはそんなマナを背中に背負うと、懸命に走り始めた。

 カルブ・モンキー達がそれを見逃さず、残っていた3体はクラゼルへ向かう。

 キリアがハルバードで2体弾くが、一体がすり抜ける。


(まずい)


 目の前の敵にようやく止めを刺したが、ベルギオンからでは間に合わない。

 クラゼルとマナに襲い掛かろうとする敵を一本の矢が牽制した。

 矢の放たれた方向を見るとラグルが弓を構えている。

 カルブ・モンキーは突然の矢に腰を抜かす。立とうとする度に矢が放たれ、転げながら避ける。

 クラゼルとの距離はかなり開く。

 更にキリアが2体を仕留める。すると敵は此方を襲うのを止め、遠巻きに見ていた。

 敵の戦意は挫けたと判断するとキリアに撤退を促す。


「キリア、下がるぞ」

「このままならやれるよ」

「目的は殲滅じゃない。別の仕事だ」

「……なるほど」


 キリアは頷き、二人とも敵を見ながら後ろへと下がる。

 クラゼルがラグルたちと合流する。


「そのまま外へ出ろ!」

「ああ!」


 クラゼル達はそのまま移動する。

 キリアとベルギオンは敵と向かい合ったまま部屋の入り口に着く。

 その後一気に背を向けて帰還する。

 追ってくる気配は無かった。

 洞窟の外に出ると、ラグルがマナに手当てをしていた。

 右足を挫いていたようだ。

 包帯でしっかりと固定されている。


「無事なようだな」


 外はもう暗い。夕方にカノフの街に着いてからの行動だ。

 今から街に帰るのは危険だった。

 マナは助かって緊張が緩んだのか、ようやく此方に気付く。


「えっと、あんた等は?」

「助っ人を頼んだんだ。あのサル達は俺らじゃどうにもならんからな」


 クラゼルが説明した。

 マナはそれを聞くと、ベルギオンたち三人に頭を下げる。


「そうなんだ。ありがとう」

「分け前はもらう事になっている。気にするな」

「しかし、何であんなやつらが。少し前までは居なかったぞ」


 クラゼルが悪態をつく様に言う。

 今回は無事だったものの、マナが死んでいる可能性は高かった。怒りたくもなるだろう。


「そうだ、兄貴。隠れながらこっそり見てたんだけど、あいつ等何か探してるみたいだった。

 多分……これだと思う」


 そう言ってマナが取り出したのは、黒く輝く石だ。


「何だこの石。黒曜石でもねぇ。……気味が悪いな」


 クラゼルの言うとおり、石は濁った輝きで何処と無く不吉な感じがする。

 ベルギオンが見ていると、中で何かが蠢いた気がした。


(何だ――?)


 咄嗟に周りを見るが、驚いた様子は無い。

 今のはベルギオンにしか見えなかった様子だ。

 気味の悪さを目を強く瞑って追い払う。


「野営になるな……」


 ベルギオンがそう呟くと、クラゼルが口を開く。


「安心してくれ。これを持って来た」


 クラゼルは青い線の入った石を取り出す。

 それを見てキリアが少し驚く。


「それってアラーマの石? 奮発したわね」

「マナが重傷の可能性もあったからな。幸いそうじゃなかったが、使うに越した事は無い。

 あんた等に野営をさせるのも悪いからな」


 相変わらず分からないベルギオンは、ラグルにこっそりと聞いた。


「それはどういう効果があるんだ?」

「少数の集団を移動させる魔法が込められた石です。

 一回切りだし、使うには事前に許可が必要だったと思います。それ以外で使うと法に触れますね」

「そういうのもあるのか。幾らしたんだ?」


 ベルギオンは興味本位で聞く。クラゼルは少し苦笑しながら答えた。


「シュテル銀貨3枚だったかな。折半になったからあの後用意したんだ」

「そういう事か。戻れるなら文句は無い。頼む」

「おう。実は俺たちも使うのは初めてでな。少し緊張しているぜ。

 <定められた石よ。我らを導け。目印アラーマ>」


 クラゼルが石を握り締めそう唱える。

 すると体が軽くなり、ふっと重力から開放される。

 次に地面に足が付いたとき、見覚えのある建物の中に立っていた。


「ここは……ギルド?」

「そう。悪用の危険もあるから、此処に出るようになっているんだ」

「どこでも行けるなら悪用し放題だからな」

「そういう事ね。……流石に眠くなってきた」


 キリアがそう言って欠伸をする。

 ベルギオンも体の疲れを自覚していた。


「その子も無事だったし、とりあえず後は明日だ。

 明日ギルドで会おう。朝――いや昼だ」

「分かった。マナも休ませてやりたいしそれでいい」


 そうしてクラゼルたちと別れ、ベルギオンたちはニャルフの宿へと向かった。

 宿に着くとアリヤが眠そうに番をしている。

 

「お帰りー……、そうだ、お風呂はもう終わってるからね」

「――そうか」


 疲れてさぞ気持ちが良いだろうと、ギルドに着いた辺りから内心楽しみだった。

 ベルギオンは心底疲れたように溜息を出すのだった。

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