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ジェネラルの男と竜人の娘~戦いの果て~  作者: HATI
シュテル連邦国編
20/28

救助依頼

 

 立ち塞がった男たちに、キリアがイライラしたような声を出す。


「何? あんたら」


 その声に男たちは両手を前に出す。

 危害を加える気は無い、というポーズのようだ。


「そうつんけんするなよ。……ちと話があるんだ。

 飯でも奢るから聞いてくれないか」

「キリア、とりあえず待て。やるとしても手を出されてからだ」


 血の気が多いキリアをベルギオンは抑える。

 しかし、どうにも男たちの姿勢が低い。


「どういう事ですか?」


 ラグルも男たちが悪意を持ってないことに気付いたようだ。

 少し困惑している。


「何か事情があるようだな。飯の分だけは聞こう。いいか?」


 最後の言葉をラグルとキリアに確認しながら言った。

 キリアは渋々といった様子だが頷く。

 テーブルに付くと、パンに肉を挟んだものとサラダが添えられた皿が用意される。

 男たちは食事を済ませたのか飲み物だけだ。

 手を付けながら話を聞く。


「俺はクラゼル・ホイットだ。クラゼルで良い。こいつ等はパーティーの連中だ」

「ベルギオンだ。で、一体何のようなんだ?」


 クラゼルと名乗った男は口を開く。


「あんたら、あのセピレム将軍の推薦もらったんだよな? 

 てことはそこそこ腕利きなんじゃないか?」

「推薦をもらったのは事実だが、実力というよりは偶然の産物だ」


 竜人とエルフが友好的というのも大きいと思っているが、それは伏せた。

 クラゼルはそれを聞くと首を横に振る。


「それだけで貰えるものじゃないんだよ。推薦ってのは。

 場合によっちゃ推薦人がドロ被る事もあるんだ。

 まあそれはいい。協力してもらいたい事がある」

「内容をまず話せ。少しでも怪しいなら無理だ」

「違う。そういう誘いじゃない。仲間を助けて欲しいんだ」


 クラゼルの話を詳しく聞くと、もう一人の仲間が居たらしい。

 店で扱わない少し珍しい鉱石採取の依頼を受けて、洞窟に向かった。

 必要な量を取り終え戻ろうとした矢先。

 その洞窟では現れないモンスターが出て、仲間の一人が分断されたとのことだった。


「そのモンスターは?」

「カルブ・マンキーだ。2.3体は居たな」


(――猿か?)


「それは何時の話だ?」

「ついさっきだ。奴らは強くて、俺たちだけじゃどうにもならん。

 助けを求めようにも、この街は腕の立つ冒険者は余り居ない。

 途方にくれていたところだったんだ」


 そう言うとクラゼルは残っていた飲み物を飲み干す。

 他の三人は意気消沈していた。


「そこに私達が現れたって訳か」

「その仲間が生きている保障は?」

「行き止まりの広間で隠れるのまでは見た。

 あいつ等は鼻が利かんから、まだ見つかってないと思う」


 騙している……とは思えない。

 ベルギオンは小声で仲間の二人と相談する。


(さっき言ってたモンスターは強いのか?)

(鼻が効かない分、筋肉は強いって聞く。ロードゴブリンよりは格下よ)

(ですが洞窟の中ですから、場所によってはまともに戦えません)


 意見を聞き、少し考えて口を開いた。


「俺たちは今日登録したばかりだ。依頼はまだ受けれんぞ?」

「依頼のサポート要員として登録すれば大丈夫だ。勿論ギルドを通す。

 頼むよ。なんなら鉱石の依頼料を全て渡してもいい」


(準備にも金をかけている筈だ。それを全てか)


 彼らは余り良い装備を持っていないし、強くないといっている。

 今回の依頼料全て、では死活問題だろう。


「幾らだ?」

「6万ペニーだ。これ以上は出せない……」


 ベルギオンは人差し指で何度かテーブルを叩く。

 少し迷っている動作だ。


「受けよう。但し半分でいい。

 その代わり、もし死んでいたらその時点で引き上げる。

 死体の回収は行わないし、それでも3万貰う。それでいいか?」


 それがベルギオンが妥協できる限界だった。

 クラゼルもそれが分かったのか、少し迷った様子だが頷く。


「――分かった。それならかなり助かる。直ぐに出たい。そっちはいけるか?」

「荷物を宿に預けたい。休憩も挟みたいが、その時間は無さそうだな」


 料理を食べ終わり、水で流す。

 扉の外で待ち合わせをすると約束し、クラゼル達と別れた。

 ギルドから出ると、ベルギオンは頭を下げ二人に謝る。


「勝手に受けて悪かった」

「人助けみたいですし、一稼ぎと思えば問題ありません」

「リーダーは貴方だしいいけど。半額にしたのは意味があるの?」


 疑問を持つキリアにベルギオンは自分の考えを話す。


「総取りってのは後々遺恨が残るからな。例え相手から言った事でも。

 なら半々で感謝される方がいい」


 キリアはなるほど、と頷く。その後ベルギオンを見て少し笑った。


「ベルギオンって色々考えてるけど、少ししょっぱい所あるよ」

「言うなよ。少し傷付いた」

「とりあえず宿に急ぎましょう」


 漫才が始まりそうな二人をラグルが促す。

 ザッハルに教えてもらった宿に着くと、中で若い娘が番をしていた。

 扉を開けて入ってきた三人に、娘は大きな声で出迎える。


「よーこそ! ニャルフの宿へ! 看板娘のアリヤです。ご利用は三名ですね?」


 なかなか元気のいい娘だった。


(自分で看板娘と言うとは。この娘中々強かだな)


「ザッハルさんからの紹介で来た。出来れば部屋を二つ借りたいんだが」

「支部長からの紹介ですか。これはサービスしなければなりませんね。

 二人部屋が二つ空いていますけど、それだと高く付きますよ? 

 4人部屋ならそれより安くあがります。お客もより入りますし……おっと」


 本音が漏れているが、笑顔を見る限りわざとだと判断する。

 トーク自体はそこまで上手いものではないが、手馴れていた。

 愛嬌のある笑顔で言われれば、男はつい頷くだろう。

 中身がオッサンに近いベルギオンには効果は薄いが。


「4人部屋で幾らだ?」

「一日銅貨30枚。無論三人で。

 一月契約ならもっと安くなりますよ。二人部屋なら合わせて50枚かな」


 結構差がある。数日泊まるなら小さくない差だった。

 調べモノもあるし、シュテル連邦国に行く旅費も依頼をこなして稼ぐつもりだ。

 ベルギオンは二人に意見を聞く。


(4人部屋で良いか?)

(はい)

(二人部屋は人気があって直ぐ埋まるし、そっちの方がいいかな)


 幾ら考えても、金の差は埋まらない。

 間違いを起こす気は全く無いが、やはり簡単に決断できるものでもない。

 意見の後押しもあり、ベルギオンは決める。


「とりあえず三日分で頼む。4人部屋で」

「毎度ー。追加料金で出来るサービスの説明は聞きます? 

 4人部屋にしてくれたし、少しサービスするよ」


 料金を受け取りながらアリヤは説明を始める。

 それをベルギオンはすまないが、と言って遮った。


「聞きたい所だが、すぐ出るんだ。荷物だけ置かせてくれ」

「そうなんだ。じゃ部屋は二階の端ね。カギはこれ。出るとき返してね」

「わかった。行こう」


 アリヤからカギを受け取ると、二階へ向かう。

 部屋について中を開けてみる。


「中々良いな」

「綺麗ですね」

「寝れればいいんじゃない?」


 掃除が行き届いており、花も置かれていて清潔感を感じる。

 ラグルとキリアが着替えなどを詰めた麻袋を置く。

 ベルギオンはポーションを一つだけ取ると、布袋を置いて端へ寄せた。


「よし、行こう。待ち合わせは扉の外だったな」

「分かりました」

「無事だと良いんだけどね」

「隠れているやつの運がいいのを祈るしかない」


 宿から出ると、扉のある場所へ向かう。

 ラグルは弓と矢を、キリアはハルバートの刃に布をかぶせて背中に付けている。


「今回はなるべく戦わないで終わらせたい所だが」


 移動の疲れもある。楽できるに越した事は無いとベルギオンは思った。


 約束の場所に着くと、クラゼル達が居る。


「来たか。早いな」

「出来るなら助けたいからな」


 クラゼルともう一人は鎧を着込んで剣を装備している。

 もう二人は布のローブなどで軽装備だ。


「二人は魔法使いか何かか?」

「左のやつは僧侶のリッキン。右は魔導師のケレムだ。見習いだがな」

「見習いか。何が出来るんだ?」


 ベルギオンの問いに、少しばつが悪そうに二人が答える。


「簡単な傷なら直せる」

「風が少し使えるだけでな……」

「何かあれば頼むぞ。強いに越した事は無いが、要は使い方だ」


 フォローとも言えない言葉だが、少しは効果があった。

 リッキンとケレムはなんとかやってみるよ、と笑う。


「それで場所は? 歩いていくのか」

「ああ。1時間もあれば着く」

「歩きながら話そう。まだ聞いてなかったな。助ける相手は男か?」


 話しながら移動を始める。


「いや、女だ。俺の妹でな……」


(だから全額と言ったのか)


 分の悪い賭けに出たクラゼル達が不思議だったが、これでハッキリした。

 切り捨てなかった理由もだ。


「容姿は?」

「茶髪で髪は首位までだ。

 歳は15で、そのお穣ちゃんと同じ位の背丈だな。顔はまあまあ良い。

 目付きがちときついがな。後はそうだな……首にネックレスをしている。

 緑色の石で出来たやつだ」

「名前はなんと言う?」

「マナ・ホイットだ」


 そうしている内に件の洞窟に到着する。

 洞窟なら暗いと思っていたが、中は月明かりより明るい。

 ベルギオンは珍しそうにそれを見た。


「随分明るいな」

「この洞窟の石は魔石がまじってるからな。

 密度が低すぎて売り物にはならないが、中で作業するには十分だ」

「魔石があると明るくなるのか」

「モノにもよるがな。洞窟は余り経験無いのか?」

「ああ。だからなるべく手早く片付けたい所だ」

「同感だ。俺たちが前に立って道案内をする。

 後ろからやられないように気をつけてくれよ」


 そういうとクラゼル達は先に洞窟に入った。

 ベルギオン達も武器を構えながら洞窟に入る。

 火を焚いているほどではないが、松明無しでも十分前が見えた。

 土色のゴブリンや大きいアメーバの敵が出てくるが、数の暴力もあり相手にならない。

 何度か分かれ道を進み、しばらく進んでいく。

 すると先頭のクラゼルが止まる。


「この先の行き止まりで隠れてる筈だ。やつ等も此処から見える。どうする?」


 ベルギオンの目にも見えた。

 少し進んだところで、黒いサルのモンスターが3体うろついている。

 此方には気が付いていない。


「行き止まりは広いのか?」

「ああ、そこのねーちゃんの獲物が振り回せる位には広い」

「なら……、俺とキリアでやつ等を行き止まりに押し込む。

 でクラゼル。その後あんたが大声で妹を呼べ。

 生きていれば反応があるだろう。

 ラグルはもし敵が此方に着たら弓で撃て。他の三人はラグルを守ってくれ」


 ベルギオンが分担を決める。

 皆特に異論は無い様子だった。


「分かりました」

「分かった。頼む」

「出番ね。よっし」

「オーケーだ」


 特に張り切っているキリアに、ベルギオンが少し釘を刺す。


「魔法は無しだ。いいな」

「こんなとこで魔法使ったら、こんがり焼けた味方死体が出かねないわね」

「やつ等はこっちに気付いてない。とはいえ奇襲は足音で無理だな。まず大声で威嚇して驚かせるか」

「あ、それなら私に任せて。魔法が使えないし、いい一発になるわ」


そう言ってキリアは先頭に立つと、此方に聞こえるほど大きく息を吸う。


「おい、何をやる気――」


次の瞬間、キリアが大きく口を開いた――。




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