ブラウン管
掲載日:2026/03/10
私が小学校に上がる前、家に一台のテレビがやってきた。
やたらと大きく、重厚なブラウン管テレビだった。
居間にどっしりと鎮座したそのテレビは、幼い私にとって、家族がまだ幸せだった頃の象徴だった。
けれど、小学校を上がる頃、両親は離婚した。
昔気質の父の気性と暴力に、母は耐えきれなかったのだと思う。
あのテレビは、その後も部屋の片隅に置かれ続けた。
友達のいなかった私にとって、十年以上のあいだ、孤独をやわらげてくれる存在でもあった。
十八で家を出てから、あのテレビがどうなったのかは知らない。
家族のことは、もうあまり思い出さない。
けれど、あのテレビのことだけは、ときどき不意に思い出す。




