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そこにAIはあるんか?信じられるAIは? 3

この話の登場人物は全員18歳以上です。

「…っ」

「カペルコさん、どうかされましたか?」


カペルコ達は四天王にあてがわれている執務室に移動し待機していた。

執務室は玉座の間程の大きさは無いものの、全体的には木製を主としたインテリアで統一されており落ち着いた空間となっている。

そんな装飾の施された部屋の窓には大粒の雨が叩きつけられており、室内には時折稲光と共に轟くような雷鳴が響いていた。


不貞腐れるように机に突っ伏すアネエルに対し、モナは残った自分の書類仕事に取り掛かっている。

だが2人とも、こちらに来てからずっと表情を曇らせているカペルコの事を気にかけていた。


「いえ、今…叫び声というか、雄叫びのような音が聴こえた気がして…」

「玉座の間の方からですか?」

「なんとなくですけど…」

「カペちゃん心配し過ぎだよぉ。あんなダサメガネに魔王様はどうこうされないって」

「それは…そうですよね。すみません、ご心配をおかけしてしまって」


2人に対して強張った笑みを浮かべるカペルコだったが、その柔らかな耳は周囲の音に過敏に反応するように忙しなく動いている。


「……カペルコさん、大丈夫ですよ」


モナはカペルコに寄り添うように近付くと、その手を優しく包み込むように握った。


「魔王様を信じましょう。あの方はとても優しくて芯の通った方ですわ。不義理や非道には決して(なび)かない。それは私なんかよりも、カペルコさんがよくご存知のはずです」

「モナさん…」

「大丈夫よ…信じましょうね…」

「……」

「大丈夫、大丈夫…」

「あ、あの、私の顔に何か付いてますか?」

「…カペルコさん。ちょっとだけそのお耳触ってみてもいい?」

「えっ…嫌です」

「大丈夫よちょっとだけ、ほんの先っぽだけだから。痛くしないから。咥えたり(ねぶ)ったりなんて決してしないわ安心して」

「何なんですかその前提条件逆に不安になるんですけど。…えっ力つよっ…。…目こわっ!ちょっ…一旦離れてください」

「落ち着いて。フェザータッチするだけだから。思わず気持ち良くなっちゃうフェザータッチするだけだから落ち着いてちょうだい」

「落ち着くのはそっちの方ですよね?何なんですかこの力?聖職者の握力じゃないんですけど!?」



まあ難しい顔をしているよりはマシ…かな?


騒々しい2人のやり取りを聴きながら、アネエルは窓の外に目を見やる。

そこには数刻前とは打って変わった荒れた空模様が広がっていた。


「嫌な天気だなぁ…」


幾度となく身をもって『体感』してきたその天気。


憂鬱な気分のまま2人に視線を戻すと、鼻息を荒くして迫るモナとコーナーに追い詰められて青ざめるカペルコの姿がそこにはあった。





――――――――――





「うおおおおおおおおお!!!」


その頃。

不義理や非道に靡かない優しき魔王は、エッチな事に靡いていた。


「ミミちゃんだ!ミミちゃんが目の前におる!まるで本物だ、スゲ〜…!」

「ナヴィの肉体再現率は条件にもよるが9割を超える。概ね本物と言っても差し支え無かろう」

「…?」


魔王とアサヒの目の前には、『ミミちゃん』と呼ばれた獣人が現れていた。



ミミちゃん。

本名ミミレド・ホロップ。

そのあどけなく愛らしい相貌には似つかわしくない程の豊満なわがままボディを兼ね備えた魔界でも有名なアイドルである。

足元はレースの付いた白のソックス、上は淡いピンクを基調としたワンピースを着ており、パニエ入りのふわりとしたスカートにはオレンジ色のステッチが入っている。

紺色のリボンで結ばれた伽羅(きゃら)色のツインテールは足元まで伸び、その髪と同じ色のウサギ耳もまた肩口辺りまで伏せるように垂れている。

太い眉に大きな目、低めの鼻は彼女に幼げな印象を与えており、その目は不安げにこの部屋にいる二人の間を行き来していた。


デビュー作は『貴方のキャロットββ(ベータベータ)にしてあげる』。

飛び跳ねながら歌唱する彼女の胸部にはこの世の多くの殿方が釘付けになった。

かく言う魔王もその一人であった。



「うおお…うわっなんか背徳感すごいな。ちょい似とかならまだしもここまで再現度高いともはや犯罪臭すらするぞ」

「俺の故郷でもAIによる性被害は問題になっていてな…。だがしかし、ここは魔界だ…!」

「いや別に魔界なら何してもOKという訳ではないぞ。…まあしかし、据え膳食わぬはなんとやらか…!」

「あ、あのぉ…」


二人の会話に、ミミが消え入りそうな声で割って入る。

怯えるようなその表情は庇護欲をかき立てるようでもあり、加虐心を煽るようでもある。


「こ…ここはどこですかぁ?」

「うん?」

「わ、私、気付いたらここに居てぇ…。私、どうしてここにぃ…?」

「ふう〜む、それはだな…ワシが呼んだのだ。君を、おさわりしようと思ってな…!」

「え…えっ…?お…おさ、おさわりぃ…?」

「うむ…ゴクリ。で、では早速…!」


手をわきわきとさせてミミににじり寄る魔王。


「…ヒッ…!」


魔王の様子を見るや、ミミは凄まじい勢いで後ずさった。


「い、嫌ぁっ…!こ、来ないで下さい!来ないでぇっ…!」

「…うん?」

「だ、誰かぁっ…!マネージャーさんっ!誰かぁっ!誰かいませんかぁっ!?助けてください!」

「あ、あれ?あの、ちょっと…」

「嫌あぁぁぁ!!ヤダぁっ!!犯されるぅぅぅ!!誰か助けてぇぇぇ!!!」

「ちょちょちょ、ちょっと待って!ストップストップ!」


半狂乱になり涙目で喚くミミを必死に宥める魔王。

玉座で寝ていたフェレスも騒々しかったのか起き出し、ミミの元に行って寄り添っている。


「あ、アサヒくん?なんか思ってたのと違うんだけど…」

「…俺もお前という漢には心底がっかりだ…」


ミミを落ち着かせようと広げた手はそのままに首だけを向ける魔王に対し、アサヒは目頭を押さえて深くため息をついた。


「よく考えてみろ。突然目の前に現れた男に『お前を今からお触りするぞ』と言われたら相手の女の子はどう思う?」

「ええ…?いやそう言われたら確かにとんでもなくヤバいやつだけどさ…。こういうのってそもそもお触り前提で調整してあるもんじゃないのか?」

「バカ野郎…!初対面の女の子とはまず様々なイベントをこなし、その合間に(たゆ)み無い努力で自分を磨き、時には他の攻略対象を巻き込んで好感度を上げる、その先にお前が待つ真の『お触り』が待っているのだ!ときメモを思い出せ…!」

「いやいらないよそんなリアリティ、ってか恋愛シミュレーションゲームだけどもそれ!前回ラストなんてもう今からまさにお触りするぞって雰囲気だったじゃん。ジャスト・ナウ・お触りだったじゃん!」

「誰か助けてぇぇぇ!警察呼んでぇぇぇ!二人の男に拉致されてジャスト・ナウ・犯されそうなんですぅぅぅ!」

「待ってくださいお願いしますあまり大きな声出さないで下さい!こんなとこ誰かに見られたら魔王もうお終いなんです!」

「なお〜〜〜ん?」


騒然とする場の中、フェレスが一際大きな声を出して鳴いた。

パニックになり泣き叫んでいたミミだったが、ハッと傍らの存在に気付くとおずおずとその小さい身体を抱き上げる。


「…ね、猫ちゃん?」

「お、おおっ…でかしたフェレス!これがアニマルセラピーというやつか」

「にゃん!」


ふみふみふみふみふみふみ


「あっ、猫ちゃん。ダメだよぉ、そんなとこ…」

「…!見ろロムレクス!あの猫はファーストコンタクトでπへの接触に成功したぞ。お前も自分の選択の何が間違っていたのか考えるべきではないか?」

「ワシはあれを見て現状の何を省みて何を改善すればいいんだよ。転生して愛玩動物にでもなればいいんか?」


そのまま二人は猫と兎獣人が戯れる微笑ましい光景を遠巻きに眺めていた。

一先ずの危機は乗り越えたが、依然としてお触り出来ていない状況に変わりはない。


「アサヒ」

「なんだ?」

「チェンジで」

「お前という男は…たった一度の失敗で攻略を諦めるというのか?効率厨か?」

「いや無理だろもうこれ、ルートで言ったら性犯罪者ルートに入っとるもん。高校生活3年間でどんなに努力しても巻き返し出来んだろ」

「仕方のない奴だ…」


アサヒが端末を操作する。

ミミの輪郭がブレたかと思うと、その身体を消失させ後には宙を漂う光球が残された。

支えを失ったフェレスは軽やかに地面に着地すると、恨めしげに魔王達を一瞥して玉座に戻っていった。


「アサヒくんさぁ…ちょっとユーザーが求めている物を正しく理解出来てないんじゃないの?もっとこう、オンデマンドと言うか、目的を簡潔に達成出来る方がウケるんじゃないか?」

「はっ…自分の思い通りになる女を触ってなんになる?昨今のお触りゲームですらそれなりの手順を踏んでから本番に突入するぞ?」

『こういう男がつい魔が差したとか言って性犯罪に手を染めるのよね。ホント不潔、この世の汚物、今すぐに捕まってくれれば万事解決』

「何なのこのラッパー気取りのAI?ワシが泣いたら満足して黙ってくれるの?」


そう言う魔王の瞳は若干潤んでいる。


「…で、どうするんだロムレクス?このまま諦めるのか?」

「くっ…抜かせ、ワシの夢はこんな所では終わらん!今度こそ成し遂げるぞ、ラブラブお触りを…!」

「くく…よく言った。だがしかし、さっきのミミちゃんはお前のリクエストだろう?」


アサヒが端末を操作する。

ナヴィの周囲にノイズが走った。


「次は俺の番だ」





――――――――――





「…悲鳴?」


アネエルは机に突っ伏したまま、しかし顔だけは上げて周囲の音を探るように耳をそばだてた。

外は土砂降りで、間断なく続く雨音と時折響く雷鳴が窓を通して執務室の中に響いている。

その中に微かに、鋭い悲鳴が混じったようにアネエルは感じた。


「アネエルさんも聴こえましたか?」


見ると神妙な面持ちでモナと目が合う。

そうしている間にもまた一つ、悲痛な叫び声が聴こえたような気がした。


「…また聴こえた!?ねえカペちゃん。カペちゃんも何か聴こえた?」


アネエルはカペルコに振り返る。

この3人の中で聴力に関しては恐らくカペルコが頭一つ抜けて高い。

彼女ならよりハッキリと音の正体を掴んでいるだろう。


「…んっ…わ、私も…っ…。な、何か聴こえたような…気がっ、ぁっ…。します…っ」


息も絶え絶えに答えるカペルコ。

潤んだ瞳はとろんと蕩け、喘ぐような吐息は熱を帯びており、その着衣はふしだらに乱れていた。


「だ…大丈夫?なんだか随分センシティブな感じになってるけど」

「うふふ…少々ハッスルし過ぎてしまいましたね」

「モナさあ…」


何故かツヤツヤとしているモナ。

今後はこの人の事をさん付けするのはやめよう。

そう思っていると、カペルコが立ち上がりふらつく足取りで扉に向かって歩き出すのが見えた。


「か、カペちゃん?」

「…やっぱり私、魔王様の所に戻ります」

「え…で、でも大丈夫?魔王様はボク達に出て行ってほしいみたいだったし…」

「それでも…今何が行われているのか、やはりこの目で見ておくべきだと思うんです」

「カペルコさん、待ってください」


モナがカペルコの前に立ちはだかる。


「今、玉座の間で何かが起こっているのは確実かと思います。或いは魔王様は私達の知りえぬ、何か(よこしま)な悪に飲み込まれているのかもしれません」

「さっきまで邪な欲望に飲み込まれてた人ならこの部屋にもいるけどね」


アネエルの横槍には反応せずモナは続ける。


「失礼ですが、一介の秘書である貴女がそこに向かったとしても出来ることなど限られていると思いませんか?それにもしそんな魔王様を目の当たりにして、それでもなおカペルコさんは魔王様にお仕えし続ける覚悟はありますか?」

「…確かに、力も何もない私に出来る事なんて…ほとんど無いのかもしれません」


未だ身体に力が入らないようで、視線を落としたまま、諭すようなモナの言葉にカペルコは答える。


「でも…たとえ何を考えていて、どんな事をしていても…。もしも、もしも魔王様が情けない姿を見せていたなら、すべき事を見失っていたなら…。一言言うのが私のお役目だと思いますので」


ゆっくりと顔を上げ、モナを見据える。

疲弊した表情でこそあれその瞳には意思が込められ、口元には微笑みが浮かんでいた。


「だから、傍に居たいんです。私は魔王様の秘書ですから。どんな魔王様であっても精一杯お仕えいたします」

「…そうですか」


カペルコの微笑みにつられるように、モナもまた微笑んだ。


「では、それをサポートするのも私達の役目ですよね?アネエルさん」

「…モナ!」

「行きましょうカペルコさん。さ、私に掴まってください」

「アネエルさん、肩を貸して頂けませんか?」

「もちろん!」

「あら〜」


三人は執務室を出て魔王の元へと向かう。

数刻前まで不安に揺れていたカペルコの瞳から、迷いの色は見えなくなっていた。





――――――――――





「…な、なんじゃ?ここは…」

「キターーーーーーーーーーー!!!」


玉座の間には、カペルコ達の知りえぬ舌っ足らずな狐耳の幼女が顕現していた。


「アサヒくん」

「なんだロムレクスぅ!」

「テンション高っ。あのさ、今からワシ女性をお触りするって話だったと思うんだけど」

「ああ」

「どうすんのこんな幼女召喚して。犯罪なんだけど」

「くく…ロムレクスよ。彼女はただの幼女とは違うぞ!」


アサヒはズビシと目の前の幼女を指し示した。


「銀色の髪に透き通るような色白の肌、ややつり目がちの緋色の双眸、筋の通った鼻は10人見れば10人が美少女と答える顔立ち!


紅白の巫女服の上には黒い腰帯を巻き、頭の上にはピンと凛々しく立つ狐耳。その脇に赤い紐で結ばれている二組の鈴もとってもキュート!


毛先がやや黒く染まった見事な毛並みの三本の立派な尾は、yogiboのクッションよりもふかふかですべすべで柔らかい!


彼女はジパンヌでカルト的人気を誇る合法系のじゃロリババアVTuber、マツリビ・タマモちゃんだ!」


「うん…説明ありがとう」

「御年120歳でありながらその可憐な風貌と慈愛ある寛容な御心で世間から爪弾きにされてきた多くの悲しき男性達を救済してきた女神だ!さあ、触れロムレクス!さもなくば俺が触る!」

「のう、おぬし達?」

「いや触れ!じゃないよ。悲しき男性達ってそれ多分ただのロリコンだろ。実年齢とか関係無しに絵面がアウトなんだよ」

「ここは魔界だ…!『登場人物は全員18歳以上です』とすれば何の問題も無い…!」

「のう」

「問題あるわ!魔界にだって未成年保護の精神は存在するわ!大体その理屈で言ったら見た目がババアでも中身は10歳って設定付けたらアウトになるだろうが!」

「おい」

「なんだその悍ましい逆コナン的設定は?一体どの層に需要があると言うんだ…!?」

「おいハゲ」

「いや需要があるとかの話では…ん?」


魔王とアサヒは同時に振り返る。

そこには腕を組み不機嫌そうにこちらを睨み付けるタマモの姿があった。


「ハゲ、おいこらハゲ」

「あの…すみません二人で盛り上がって。えっハゲってワシのこと?」

「この部屋には(わらわ)以外にお主ら二人しか居らんように見えるが?お前以外に居るか?」

「いやあの何と言うか、ごめんなさい。でもワシハゲてません。かきあげてるだけです」

「はっ。ハゲは皆そう言うわ。現状を素直に受け入れられないその気構えからしてお主らはハゲておるのじゃ」

「いやホント勘弁してください。ワシ作中描写少ないんです。これだとワシただの中肉中背のハゲたおっさんになるんです」

「意味の分からん事を…まあ良い。おい、椅子」


そう言うと、一体何処にそんな力があるのかフェレスが玉座をズリズリと押して運んできた。

タマモはそこに飛び乗るようにして座ると、身を委ねるように片方の肘掛けに無造作に肘を付いた。


「お主らも座れ」

「はあ、じゃあ椅子持ってくるんで…」

「妾と同じ目線で会話するつもりか?地べたに座っとれ」

「そうだロムレクス。俺達は正座だ」

「ええ…?」


言われるがままに魔王は腰を下ろして正座をする。

隣を見ると、とっくに姿勢を正して正座しているアサヒが何故か不適に笑っていた。


「あの…アサヒくん。何この状況?なんで初対面の幼女を前にして男二人が正座させられてるの?」

「タマちゃんは傲岸不遜で傍若無人、高飛車で居丈高、平たく言ってドSなんだ…!」

「ドSなんだ…!じゃねえよ。ってかそれこの子のファンがドMのロリコンって事だろ。救済じゃなくてこの世から隔絶すべきだろ」

「くく…しかしなロムレクス。タマちゃんはほんの少しだけ脇が甘い」


タマモを凝視するアサヒ。

その視線は彼女の袴から覗く珠のような太腿に注がれている。


「俺たちの目線は丁度彼女の座面と一緒。そして彼女が着る巫女服の袴はかなり短いつまり…見え――」

「お前も隔絶されてくれ」

「…またお主らだけで内緒話か?」


青筋を立てるタマモからその可憐な見た目とは相反する凄まじい圧が放たれる。

魔王とアサヒは同時に口を(つぐ)んだ。


「で?妾を召喚できる程の輩じゃ。ただ者では無いのじゃろう?お主らは何者じゃ?」

「はあ、ワシは一応魔王軍を統べる魔王をやっているのですが…」

「虚しくならないか?」

「はい?」

「いい年こいて魔王だなんだと、言ってて恥ずかしくないのかと言っておるのじゃ」

「いやあの、ごめんなさい。でもワシ魔王なんです。本当なんです」

「はっ。ハゲはみな口を揃えてそう言うわ。自分のありのままの姿を認めたく無いが為に突飛な妄言を吐く。本当に嘆かわしい存在じゃ」

「いやハゲは関係無いから!少なくともワシ魔王を自称するハゲ見た事ないから」

「特に顔が脂ぎっててやたらと体毛の濃いハゲにそういう輩が多いのう」

「やめてよ本当に!この話ただひたすらにキモいおっさんが主人公になっちゃうよ!」

「くく、お前にはお似合いの見た目だなロムレクス」


余裕のある笑みを浮かべてアサヒが割って入る。


「タマちゃ…タマモ様。私はアサヒと言います。貴女様を召喚する機械を作った天才マッドサイエンティストです」

「自分でマッドを自称するあたりがシンプルに痛々しいのう」

「有難きお言葉…!」

「一片たりとも有難くねえよ」

「で?何の用があって妾を召喚したのじゃ?」

「麗しきタマモ様をこの汚れた手でお触りする為です…!」

「何なのお前?さっきワシに説教垂れた時間返せよ」

「ほう~?妾をお触りとな?」


タマモが口角を歪に吊り上げ笑みを浮かべた。

その表情には挑発的で扇情的な色が込められている。


「本当にキモいやつらじゃのう~?」

「へへ…」

「なんで笑ってんの?」

「どうしようかのう~?まあ触らせてやらん事もないがのう~?」

「ほっ…ほほほ本当ですか!?」

「だが当然何も無しで触らせる訳にはいかんのう。妾を楽しませる事が出来たら考えてやらんでも無い」

「楽しませる…」


魔王から嫌な汗が吹き出す。

どう考えても嫌な未来しか想像出来ない。


「そうじゃのう。全裸で嵐の曲を熱唱しながらサ行の単語が出る度にアキラ100%のお盆芸を完璧にこなす事が出来たら考えてやろう」

「ええ…何それ常人の発想じゃないんだけど。『次の新年会の宴会芸でネタが他と被ったらお前の家族を殺す』って脅されてる奴の発想なんだけど」

「この妾のコネクションを持ってしてもなおチケットが取れんでなぁ…」

「知らないよ。ワシらで嵐の穴はまかなえないよ」

「ふっ…なら俺が埋めてやる。嵐の穴も、タマちゃんとの距離もな…!」


魔王が隣を見ると、不敵に笑いながら全裸で仁王立ちするアサヒの姿があった。


「いや脱ぐまでに多少は躊躇えよ、てか隠せよ!!もうこの時点でお盆芸失敗だろ!」

「ほ〜?マッドサイエンティストのくせにソッチは随分お利口さんじゃの〜?」

「………」

「何照れて赤くなってんだよ。フルチンで。どういう心理状態なのそれ?」

「なんじゃさっきからうるさいやつじゃのう…文句があるなら向こうに行っておれハゲ」

「いや文句と言うか…まずそもそもこの部屋にお盆が無くないですか?あとハゲてません」

「ふむ…確かに盆は無いが、そこに丁度おあつらえ向きの物があるじゃろう。ほれ」


そういってタマモが指差したのは、アサヒ。

その男が手にする一辺15センチ程の端末であった。


「お主らのちっぽけなカイトならそれで十分じゃろ」

「いやちょっとあのこれではちょっと~~~~~。あまりに小さいっていうか、一応彼が知力の髄を尽くして作った代物なんで~~~~~」

「………」

「ちょっ何してんの…やめろよ。あてがうなよ!前向きな検討をするなよ!」

「あと失敗したら全裸のまま部屋を出て行ってこの建物の中を練り歩いてもらおうかのう」

「リスクたけぇ~~~~~」

「ロムレクス」


自身を呼びかける声に魔王は振り返る。

そこには意思を固め、魔王を真っ直ぐな瞳で見つめるアサヒの姿があった。


「俺に何かあったら端末(こいつ)を頼む」

「嫌だよ」


どこから持ってきたのか、フェレスがスピーカーのスイッチを入れる。

流れてくるイントロに身を委ねるアサヒを魔王は黙って見守る事しか出来なかった。





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