第2話
俺の前を、やつらが通っていく。一番隊だ。庄内藩の敵はむちゃくちゃてごわい。他の隊はもうみんなやられてしまって、いよいよ一番隊の出番というわけだ。
一番隊のやつらの服装は上も下も紺色。けれど忍者装束じゃない。上はマルテン、下は跨と呼ばれる筒型の袴にわらじ履き。そうして元込め銃を肩に担いでいる。なんでも外国の軍隊をまねて天朝様の軍はこういう恰好になっているらしい。けれど一番隊の連中は、俺たちは誇り高い甲賀古士だと言いたいのだろう、全員の額には真っ白いさらし布に金ぴかに輝く鉢がね、左肩には、これもお揃いの真っ白いさらし布を巻いていやがる。
この隊の隊長が望月家の若棟梁だ。こいつが、まあなんというか……、俺にはうまく言えないのだが、ようは、役者絵、歌舞伎の役者を描いた絵のような顔をしていやがる。けったくそ悪い。忍者なら忍者らしく顔のどこかにむこう傷でも作らんかい!
まあ傷ナシの俺が言うことじゃないか。
役者絵の若棟梁、隊の先頭で、歌舞伎役者が見得を切るみたいにぐっとあごをあげ、ただ前だけを見つめていやがる。ああ、こういう横顔や、こういう横顔におなごは弱い、
向かう先にはてむちゃくちゃ強い敵が待ち構えている。とうていかなうわけがない。けちょんけちょんにやっつけられて、命を落とすだけだ。けれどそんな敵に対して前だけを向いて行くしかない。
そんな姿が、けなげだの、いさぎよいだの、なんだのかんだのと、きっとおなごは、目をキラキラさせて、その後で涙をツーとこぼしやがる。
ああ俺様もキラキラ、ツーをされてみたい……
一番隊のやつらが、俺の前を通りすぎ、そうしてやぶに挟まれた狭い坂道を登っていく。坂道はずっと上まで続いているが、すぐそこは芝居の幕に覆われて先がまったく見えない。その幕には色がついていない。色はないのに、やたら重さばかりが感じられる。そんな幕にむかって一番隊は登っていく。
そういえば、望月の若棟梁だけは、役者絵のようだったが、他の隊員のやつら、顔がひきつっていたり、中にはブルブル震えて満足に歩けないやつもいたな。
まあ仕方がないことか。他の隊があれほどやられたというのに、性懲りもなくい、同じように敵の正面からぶつかっていくというのだから。芸のないこっちゃ、忍者の末裔なら、もっと工夫の仕方もあるだろうに。
まあ傷ナシの俺がそんなことを考えても仕方がない。俺はここ暖かい火の元で、昼間集めた薬草の整理でもするとするか。




