6:~Sidestory~遊都&巴2
広島からエーテルのことを黙って考えていた。
自身を纏う空間の把握……全能感……違うな、あれはなんて表現していいのか。
断続的に聞こえるレールの音に耳を傾け、窓を見る。巴が面白い顔をあーでもないこーでもないと百面相していた。
新神戸から大阪に新幹線は向かう。
窓から見える街並みにビルが溢れてくる。
大都会が広がっていく。
世界が違っていた。
そうだエーテルとは……
「「世界だ」」
二人同時に声が重なった。
テキサスホールデムで自身の練ったエーテルをぶつけ合うあの感覚。
それはまさしく世界と世界のぶつかり合いだった。
「万能感じゃないわ。私の生きてきた世界。そのものがせめぎ合う感じだ。うんそうよ、それだわ」
「ああなんかすっきりした。いいようのない感覚だけどぴたりと当てはまるものがあるとスッキリするな」
「そうね! うーんスッキリしたわ。まだなんか頭の片隅にあるけど」
大阪のなんて呼ぶのか知らないでかい建物が空に向かってそびえているのを見て。
目線を上にやる。青空が広がっていた。
「空、大気」
巴が窓の外を見ながら誰にいうでもなく呟く。
あの世界の空は異常だったな。
「なあ巴、エーテルが地球人の持っている世界観、世界のぶつけ合いだとして……大気中のエーテルは誰の何だろうな」
なんとなしに呟いた俺の言葉に巴があっけにとられる。そうだよな、そんな冗談ないよな。
「え、遊都。そんな冗談」
「でもあの世界はそこかしこを侵食していたよ。大気中のエーテルが建物や人に侵食していて、亜人なんかはエーテルの固まりだった。そして俺は怖くなって。自然といつの間にか見るのをやめていたんだ」
自分の目頭を揉みしだく。
そう、あの世界はエーテルに犯されていた。
「なあ巴、エーテルは人が持つ世界だとして……大気中のエーテルは誰のなんだろうな。なんてな」
表情が一瞬で消え、真顔になった巴が言う。
「あ、待ってなんか繋がりそう」
新幹線の座席のリクライニングを倒した巴がゆっくりと語りかけてきた。
「ねえ遊都」
ずっと喉に引っかかってた小骨を差し出すかのような顔で徳川巴は切り出した。
「そう、一度考えて欲しいハンドがあるの」