表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

4: ~Sidestory~遊都&巴1

 パチンコ屋で再会した俺たちは喫茶店で今までの冒険について語りに語り、トントン拍子にその仲が改めてこちらの世界でも接近していく。

 何せ異世界で共同生活すらしてたんだ、延長線上なので当たり前といえば当たり前だが、でもそんな俺も巴のおじいちゃんに挨拶に行く話が出た時はテキサスホールデムファイナルテーブルのような緊張をした。

 巴のところに行くには九州新幹線から山陽新幹線、東海道新幹線そして東北新幹線と乗り継いで行く。西のどこにいるかがわからなかった巴は陸路で九州まで来ていた。その復路となる途中下車も含めた長旅だ。

 テキサスホールデムのことを考えると本当のテキサスホールデムを異世界に広めるんだと息を巻いていた気の良いカナダ人であるグレイソン・コートのことが頭に浮かぶ。元気にしているかなグレイソン。地球に戻る時まだ療養中でハタゴの丘でいなかったが、元気にやっているだろうかと思う。


「あいつが死ぬとこなんて想像できないし」と思わずこぼせばなになに? と巴が聞いてくる。グレイソンのことを話せば「そうそう。死んでも死ななそうよね。テキサスホールデムをするまでは!って」と共感してくれる。話が途切れた。思わず窓の外を見たからだ。


――沈黙。だが、嫌な沈黙ではない。


 山口広島間では田や山の自然情景が流れてはすぐにトンネルをくぐり窓の情景が真っ暗になんどもなる。


 新幹線の電光掲示板で今日のニュースが流れる。国会を法案が通過した情報を見て世の中は通常運行だと思い疑問が出てきた。


「そういえばニュースにならないな」

「ニュースって?」巴が聞き返す。

「異世界から帰還する人がいっぱいいてちょっとしたパニックになっててもおかしくないと思うんだが。静かなもんだなって」

「情報を止めてるのかもよ。もう一つ世界があるなんてすっごいことだから」

「そう……」トンネルが闇を作り出す。「いうものか」

 窓枠に映る自分の顔に不安が貼り付いていたことに俺は気がついた。


 景色が変わる。トンネルを抜け出たのだ。緑いっぱいの田園風景が広がる。


「そういえば私気になることがあるのよね。こんな自然みたいな。そうよ、ゴブリンよ、ゴブリン。最初のゴブリン。石を投げてた! でも遊都はスキルを使ってた。ただの石のはずなのに」


 ハーデスとの最後のやりとりも含めて俺のスキルは乱数支配(ランダム・オーダー)だが、実は元はハーデスの存在をかえるもの(エーテルシフター)だと俺は巴に話していた。


「ああ、それか。それは単純な話しだよ」


 石ころがエーテルだった。

 エーテルに侵食された石だった。


 その瞬間、巴の背景から色が消える。

 

 トンネルの中を行く新幹線の風切り音が響く中で。


 巴は窓に振り返り自分の表情を見て再度ぞくりとしていたことがわかったようだった。心なしか顔色が悪い。

「ねえ遊都」巴が話しかける。


 新幹線に光が差し込み、見()れていた巴の綺麗な横顔に、次の瞬間。闇が射す。


「エーテルってなんだと思う?」


 線路の軋む音が不協和音のように俺の心を(さいな)んでいた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ