33.そうして未来は続いていく
これで最終話となります。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
「ぼくの おとうさん。
ぼくのおとうさんは かっこいいです。いろいろなことを しってるし、わからないことは なんでも おしえてくれます。しごとで いないひがあって さびしいけど そのぶん いるひに たくさんあそんでくれます。そんな かっこいい おとうさんは、おかあさんに よく しかられてます。かわいい とか すき ってほめることが だめみたいです。でもおとうさんは しかられて うれしそうだし、おかあさんも まんざらでは なさそうです。ぼくはそんな おとうさんが だいすきです。おかあさんも もっとすなおに なればいいのにって おもいます。
さとう はる」
教室内にくすくすと笑いが起きる。その微笑ましい視線を受けて、お母さんは恥ずかしそうにしながら、お父さんは得意げに笑いながら〈はるくん〉に手を振った。他の子が発表している間も〈はるくん〉はチラチラと二人を見て様子を気にしている。振り向くたびに小さく手を振り合っていた。
「おかあさん!おとうさん!ぼくの はっぴょう ちゃんと きいてくれた!?」
授業が終わって、帰る時間になると二人に駆け寄る〈はるくん〉。
「波瑠、すごく良かったぞ!お父さん感動した!」
そう言って波瑠を高い高いするお父さんと、そんな二人を優しそうに見つめながら波瑠を褒めるお母さん。幸せそうなその三人は同じクラスの父母と先生に挨拶をして、ゆっくりと家に帰って行った。
「…波瑠はもう寝た?」
そう言ってソファーに座っているお父さん…、もとい怜王の横に座る。
「ああ、今日ははしゃいで疲れたみたいだ。」
「まさか、波瑠に指摘されるなんてね。」
そう苦笑いをするお母さんである瑠々はどことなく嬉しそうだ。
「ははっ、子どもはよく見ているって言うからな。」
「本当にびっくり…、まぁこうして怜王と結婚して子どもも居るなんて出会った頃は想像もしなかったけど。昔の私が聞いたら絶対信じないだろうなぁ。」
昔を思い出すようにしてくすくすと笑う瑠々を見て怜王は得意げに話し始める。
「私は瑠々を見た瞬間からこうなると信じていたけれどな。絶対一生傍にいると決めていたし。」
「ついてきたくらいだもんね。」
そんな穏やかな会話に二人は幸せを噛み締めていた。
「…瑠々と一緒に居られてこれ以上の幸せはないと思っていたけど、波瑠が生まれてもっと幸せになれた。…昔はこんな気持ちになる日が来るとは思わなかったな。」
怜王はうわ言のように目を細めて呟いた。今日は波瑠に振り回されていたし、そろそろ眠くなってきたのだろう。
「…もう一人生まれたらもっと幸せになれるかな?」
瑠々のその言葉に、怜王は目をカッと開いた。その言葉の意味を瞬時に理解したようだった。
「…え、え!?ほんとうか…?」
その表情を見ていたずらが成功したかのように笑う瑠々は、怜王の手をとって自らのお腹に当てた。そこには新たな命が芽生えていた。
「ふふ、波瑠みたいに健康に生まれてくるといいなあ。」
ぐすっ…っと鼻をすする音が聞こえる。ぽたぽた、と落ちた涙が瑠々の肩を濡らした。
「涙もろいなあ。まだ生まれてないんだからね。」
そう言ってくすくすと笑う瑠々は慣れたかのように怜王の頭を抱いてあやしていた。
「…っ、本当、瑠々と居ると幸せな事しか起こらないな…っ。」
「ふふ、私も怜王と一緒に居ると幸せだよ。」
そう言って満ち足りたように笑い合っていた。何度も交わした言葉は褪せることはないだろう。
二人は同じ速度で歩んで老いていく。それが二人で選んだ道だった。…とはいっても怜王は他の選択肢を持っていなかったようだが…、まぁそれは置いておいて。
冒険なんてなくても、特別な存在じゃなくなってもこれからも二人の物語は続いていく。きっとそれが二人にとってかけがえのない日々になっていくのだ。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今後も何かを書いていこうかと考えているので、機会があればまたお会いしましょう。




