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24.正解など人それぞれ

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昨日は怜王の寿命について考えていて全然眠れなかった。

頭がうまく働かないまま授業を受け、そうして迎えた放課後。私の部屋に着いて怜王の言葉を待つ。緊張した面持ちのまま怜王は口を開いた。


「二百年程前のことだ。瑠々がこちらに来るまでずっと心の奥底にいて、忘れられなかった人だったんだ。」


…なんだか全く想像もしていなかった話題を出されてしまった。


「え?…ちょっと待って。何の話?…待って、もしかして私振られる!?」

今、忘れられなかった人って言わなかった!?ということは、その人に会いたいからやっぱり向こうの世界に戻るってこと!?つ、付き合ったばっかりなのに!?

予想もしていなかった話題にショックで頭の中が混乱して余計な事を口走ってしまいそうだ。そんな私の様子でお互いの要件の食い違いを察したのか、怜王は「私が会いに行っていた人間との話ではないのか?」と首を傾げた。

「違う違う!…いや、その話も正直すごく気になって仕方ないけど、私が聞いたのは…、あの…、こっちの世界に居続けると寿命が私と同じくらいになっちゃうって…。」

「ああ、私はこっちの世界で生きていくつもりだ。」

なんて事ないような態度で即答されて、言葉に詰まった。

「…っ、でも、こっちに居たら魔力も扱えなくなるって…!」

「理解している。その上で決めたのだ。」

玲王に帰っては欲しくない。けど、ここに居るのがそれが正解かと言われるとそれは違う気がする。

「…それは私がここにいるから?」

聞いておかないといけないと思った。自惚れかもしれないけれど、私を中心として人生の選択をしているのなら、私はそのことをきちんと理解しなければならない。正直言って私自身に人生を捧げてもらうような価値があるとは思えない。

「そうだ。君が居るから私はここに居ることを決めた。」

「…もし、私が向こうの世界に行くって言ったら怜王も帰るの?」

そうしたら怜王はまた魔王として私よりも永い時間を生きていくことが出来るだろう。それこそ私と出会う前のように。

おそらく私の感情を抜きにしたら一番の解決方法はこれなのだろう。けれど私はこれから先の人生で怜王と一生を共にする覚悟はまだないのだ。もちろん遊びで付き合っている訳ではないけど怜王の為だけに家族や友達、故郷を捨ててもう一度あの世界に行くのには抵抗がある。それこそ何をしたら良いのかわからないまま手探りで生きていくことになるだろうし、怜王に嫌われでもしたら生きていくことすら出来ないかもしれない。だからこそ本当は怜王がどう思っているのか知りたい。

…だって、私が怜王を一生この場所に縛りつけてしまうということなのだから。

どんな返答になっても納得が出来ないような気がして手に汗をかいていた。

「うーん…、なんだか瑠々は難しく考えすぎだと思う。向こうで暮らすとなると君と同じ時間を生きていけないだろう。…もちろん、瑠々が向こうに行きたいのであれば他の方法も考えるが…。そうではないのだろう?」

「それは…、そうなんだけど…。」

怜王は私と生きていきたいと本気で思ってくれているのか。お互いの気持ちに差がありすぎるのは不公平だと思ってしまう。その気持ちに私は答えることが出来るのだろうか。

「怜王の寿命が短くなるのはいいの?」

そこまでの価値が自分に見いだせない。

「…ああ、瑠々が気にしているのは私の事だったのか。それこそ永く生きたところで何の意味もない。旅立つものを何度も見送るのはもう十分なのだ。…私の生き方はちゃんと自分で決める。だから瑠々は気にすることではない。」

私を安心させるように頭を撫でた怜王は幸せそうな微笑みを浮かべていた。そんな笑顔を向けられると、嬉しいと同時に切なさが胸の奥を支配した。

「…もし、怜王が私と別れることになったり、私のことを、き、嫌いになったりしたときに後悔しない?」

「それ、は…、「別れたいってことではないからね。…ただ、将来的にそうなる可能性はゼロではないでしょう?万が一そうなった時に怜王に後悔してほしくない…。」

肯定されるのが怖くて、下を向いて絞り出すように出した声は震えていた。

中々返事が返ってこないことが怖くて堪らない。それでも向き合わなくてはならないのだ。息を吐きだしてから怜王を見上げると、怜王は上を向きながら手で目元を覆っていた。

「…聞こえてた?」

「…瑠々が可愛すぎて私の命日は今日かもしれない。」

「…なるほど、何も聞こえてなかったと。」

こんなに真剣な話をしているのにふざけているのか。最近は変な言動もなく控えめになってきたと思っていたけど、気のせいだったらしい。呆れたような私の目線を感じたのか、怜王は咳払いをしてから表情を引き締めた。

「まず、私が瑠々を嫌いになることなどない。瑠々が別れたいと言っても今更離すつもりはない。」

「こっちで他の人と関わっていく内に目移りする可能性も…」

「有り得ないな。ずっと…、ずっと見てきた、それこそ…。」

苦しそうに話しながら、私をきつく抱きしめた。

「…それこそ?」

転移させられた時のことだろうか。なんだかもっと前のことのような言い方に疑問が生まれた。

「あー…、そうだな。昔話になるのだが、聞いてもらえるだろうか。」


ゆっくりと私の体を離すと、怜王は静かに語り始めた。

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