23.睡眠は大事
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「…無事に帰れたかな。」
「カノンは優秀だからちゃんと帰れているさ。」
後ろから怜王に抱きしめられながら空を見上げた。最初来た時は早く帰ってほしいと思っていたのに、いざ会話をして同じ時間を過ごすともう帰ってしまったことへの悲しみが湧いてくる。
寂しくて仕方なかったが腕の中にあるぬいぐるみを抱きしめて少しでも気持ちを落ち着かせた。
「私達も帰ろうか。」
そう言って怜王の手を取って歩き出そうとすると、私の腕の中にあるぬいぐるみを見て怜王は顔をしかめた。
「…それは?」
「カノンから貰ったの。数回なら会話ができるだろうって。…高校で初めて友達が出来たんだ。」
怜王を見上げて微笑むと、怜王は眩しいものを見るように目を細めた。
「瑠々はすごいな。…カノンとも打ち解けられるのか。」
「めちゃくちゃいい子だったよ。可愛い人だった。なんかあのツンデレは癖になるね。」
「ツン…?」
首を傾げる怜王はツンデレを理解していない様だった。
「んー、まあカノンみたいな性格の人かなあ。」
「なるほど…?…でも遅かったから正直心配した。」
こまめに連絡はしていたのだが心配させてしまったようだ。
「ごめんね。遊んでいたら時間経つのがあっという間でこんな時間になっちゃった。」
「そうか。まあ、楽しめたなら良かった。」
カノンに言われてずっと考えていたことがある。怜王はここに留まるつもりなのだろうか。聞きたくても聞くのが怖くて、つい今日の遊びに行った場所や食べたものの話をしてしまう。怜王は私の話を嬉しそうに聞いてくれてこの反応が変わってしまうのが怖い。そんな時間稼ぎをしている間に家についてしまいそうだ。
「瑠々、カノンから私の事を聞いたのだろう?」
いきなり聞かれて、つい頷いてしまった。
「え…、う、うん…。ごめん…。」
「いや、口止めしたとしてもカノンの事だ。どうせ話すとは思っていた。今日はもう遅い。誤解されるのも嫌だから明日にでも話そう。」
そう言って繋いでいた手を離されたと思ったら、家に着いていた。
「それじゃあ、明日また。…ついでにそのプリクラの話も聞くからな。…私とも撮った事ないのに…。」
「ふふっ、今度一緒に撮ればいいでしょ。うん、また明日ね。」
拗ねた表情をする怜王がなんだか可愛くて緊張していた気持ちが解れた。
手を振って別れを告げた後家に入ると、玄関からいい匂いが漂ってきた。
「ただいまー。なんかカレーのいい匂いがする…。」
「お帰りなさい。すぐ準備するから手を洗ってきなさい。」
今日は私が好きなカレーを作ってくれたらしい。言われた通り手を洗ってから食事にありついて私の大好きなカレーの美味しさに舌鼓を打った。
その日の夜は、怜王がこっちの世界に居たら寿命を縮めてしまうという話が頭の中をぐるぐるとまわって中々寝付けずにいた。
怜王はこのまま居て後悔しないのかな。今は後悔しなくてもこれから先後悔するかもしれない。それならいっそのこと私から帰るように言ってあげた方がいいのだろうか。もし怜王が向こうの世界に戻ることがあったらどうなるのだろう。もし付いてきてほしいと言われた時、私はどうしたら良いのだろう。怜王とは一緒に居たいけど、家族との日常が無くなってしまうのは辛い。
こんな風にいくら考えても答えは出ないまま布団の中で眠れぬ夜を過ごすのだった。




