22.ツンデレと人たらしの今後が気になるところ
短い時間だったとしても少しでもカノンと仲良くなりたかった。それに折角こっちに来たのだから、二人にも色々楽しんでほしいと思って街に出て色々なお店を見て回った。その途中でアレクがゲームセンターに興味を持ったので入ることにした。いろいろなゲームに二人は目を輝かせて、クレーンゲームやプリクラを撮りながらすごくはしゃいでしまった。傍から見たらただの高校生にしか見えないだろう。プリクラを撮るときにアレクも一緒に撮ったのだが、現像されたものを見ると女の子にしか見えないくらい加工されていてカノンと吹き出してしまった。それを見て恥ずかしそうにしていたアレクだが記念に取っておくことにしたらしく、三人で分け合った。色々なアーケードゲームをしたけれど、意外にもカート系ではカノンが圧勝していた。負けず嫌いなアレクは何度もカノンに挑んでいたけど、毎回バナナをぶつけられて追い抜かされていたのが印象的だった。散々遊んだ後はゲームセンターを出て街並みを見て回るついでに買い物もした。歩き疲れるとカフェでケーキを食べてくだらない話をした。お互いの立場とかも関係なくすごく楽しい時間を過ごせたと思う。
「もうこんな時間かー…。」
そろそろ家に帰らなければいけない時間が近づいてきていた。カノンとは思った以上に気が合って、普通に学校で会っていたら仲の良い友達になれていただろう。
仕方がないことだけど、仲良くなれたのにすぐにお別れなんて寂しいな。そんな風に思って中々お別れの挨拶が出来ない私に、カノンはツンデレを発揮してくれた。
「全く、仕方ないですわね!こちらを差し上げます。何かあったらこれに話しかけてくださる?数回ならこちらでも使えるはずですから大事な用があるときにでも使うといいですわ。わ、わたくしが暇だったらお相手してあげますわ!」
手渡されたのは可愛らしい手のひらサイズのぬいぐるみだった。頭には小さな角があって、耳はうさぎ、顔は猫、身体には小さな羽が生えていて、こちらでは見たことのない生き物だった。
「ありがとう、嬉しい、大切にする…。それにしてもカノンは可愛いものが好きなんだね。」
そういえば洋服を見ている時もいつも着ているような大人っぽい服ではなく、可愛らしい服をよく見ていた気がする。ぬいぐるみを胸に抱いて微笑むと、カノンは「に、似合わないとでも言うつもりかしら!?」と顔を背けてしまった。
「違うよ。カノンは可愛いものも似合うよ、ねえ?アレク?」
いきなり話を振られたアレクは一瞬肩を揺らして驚いた様子だったが、すぐにカノンに向かって微笑んだ。
「あぁ、カノンは美人だからな。笑顔はすごく可愛いと思うし、可愛い系統の服でも似合うと思うぞ。」
「な…、な…!」
褒められた上、キラッキラな笑顔を向けられたカノンは顔を真っ赤にして狼狽えてしまっている。…まずい、もしかしたらカノンは下心がない態度には慣れていないのかもしれない。
「そういえば、俺の分はないのか?」
アレクは少し不満そうな、拗ねた表情で私が持っているぬいぐるみを見ながらカノンに問いかけた。
「あ、あなたは一緒の世界に帰るでしょう!」
「けど一緒に帰ったとしても一緒にはいられないだろ。」
アレクに押されて顔を赤く染めたカノンの様子を見ていると、向こうに居た時にアレクに玉砕していく女の子の姿を思い出して頭を抱えた。
アレクはこう、無意識に人を口説くというか…、天然の人たらしというか…。そういう厄介な部分がある。それはもう男女構わず次々と虜にしていくほどだった。…まあ、だからこそリーダーシップを発揮する勇者という立場になったのかもしれないけれど。
そうこう考えている間にカノンはアレクに少しデザインが違うぬいぐるみを渡してしまっている。
個人的にはいい組み合わせだとは思うんだけど、カノンが悲しむところは見たくないな。もう既に遅いかもしれないが、一応忠告しておいた方がいいかもしれない。
私はカノンを呼んで小声ではアレクに聞こえないような位置に行った。
「カノン、アレクは正義感も強くて性格もいいし、見た目も格好良くて、地位もあるけど…!けど…!人たらしな部分があるから気を付けてね…!個人的には二人が上手くいってくれたら嬉しいけど…!」
「は、はあ!?いきなり何をおっしゃるの!?別にわたくしは何とも…!」
「いや、まだ気になってないとかならいいんだ、別に。でも今後…!今後好意を寄せることがあって、両想いかも…ってなった時に他の人への態度とかも見てほしい!」
「え、それはどういう…、」
「あ、そうだ、瑠々、ちょっといいか?」
こそこそとカノンと話してるときにアレクが気まずげに話しかけて来た。
「あ、ごめん、大丈夫だよ。」
「会うのがこれで最後かもしれないから言っておこうと思ってな。」
「ん?」
「俺、実は瑠々の事気になってたんだ。だから今回は会えて本当に嬉しかったし、敵だと思ってたカノンとも遊べてすげー楽しかったよ。」
「そ、そうだったんだ、ありがとう。私も会えて嬉しかったし今日は本当に楽しかった。会う機会があればみんなにもよろしく言っておいて。」
いきなりの告白に驚きながらもお互い笑顔でお礼を言うと、私は横に居るカノンに小声で忠告した。
「…ね?アレクは結構サラッとこういうこと言うし、好きになったらちゃんと言わないと伝わらないから!一回じゃだめだからね!チャラい訳ではないんだけど…、本気かわかりづらいというか…、鈍感というか…、邪気がなさすぎるというか…!」
言葉では上手く言い表せなくてやきもきしてしまう。この告白もきっと付き合いたいというような感情で言ったわけではなさそうなのがまたもやもやしてしまう。
「な、なるほど…なんて紛らわしい…!いや、違いますわ。わたくしは別に気になってるとかじゃありませんし…!」
カノンと頭を抱えてこそこそと話しているとアレクは何かを察したのか、苦笑いを向けて来た。
「なんか…、失礼な事言われてないか?」
「…あなたは少し自重したほうがよろしいですわ。」
「これに関してはカノンに同意するわ。」
「え、何が!?」
おそらく説明をしても理解ないであろうアレクに、カノンと目を合わせた。なんなら「んー、じゃあ、こういうことはカノンだけに言えばいいのか?」とか言い出す始末だ。そんなやりとりを見せられるとこちらが赤面してしまう。なんでこんなことを恥ずかしげもなく言えるのか…!
…でもこんなことを言うってことはアレクってカノンのこと気になってたりするのだろうか…?いや、アレクの事だからわからないな…。
「ま、まぁ、それはそうと、あなた、家に帰る時間じゃなくって?魔王様にも連絡しなくてはならないのでしょう?」
二人の行く末を考えていると咳払いをしたカノンに思考を遮られた。
「そうだね、カノンとアレクは明日帰るんでしょう?」
「いや、今ここで帰りますわ。他の人の記憶からは私たちの事は消え去りますし。もう十分楽しみましたから…、良ければこのままお見送りしてくださるかしら?」
そう微笑んだカノンに頷くと、もらったぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
カノンとアレクの足元に大きな魔法陣が浮かび上がると、そこから風が吹きだした。
「それでは魔王様に…、あぁ、いらっしゃいましたね。それではお二方ともお元気で。またお会いできる日を楽しみにしておりますわ。」
「二人とも、元気でなー!また会えたら怜王も遊びに行こうな!」
ぐいっと肩を引き寄せられて、その人物を見上げると怜王が優しい表情で二人を見ていた。
「あぁ、元気で。向こうのことは任せたぞ。」
「カノン、アレク、またね!会えて本当に嬉しかった!」
二人の笑顔を最後にして眩い光に包まれると、次に目を開けた時には姿形も残っていなかった。




