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21.本人に直接は言えない

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怜王を除いた三人で近くのファミレスに入って話をすることになった。

「それで、カノンの話は怜王の事…でいいんだよね?」

「ええ、魔王様の事です。口止めをされましたがあなたには言っておいた方がいいと思って。私たち魔族の寿命は五百年程であなたたち人間と大きな差があります。向こうの世界に戻れば魔王様はあなたよりも長く生きていくでしょう。

しかし、魔王様はあなたのいる世界で生きていくことを決めたのですわ。こっち世界に居すぎると魔王としての権限を失って身体が人間と同じものに変異していきます。この世界にいる種族で最も近いものに変わることで、適応していく…とも言うでしょうか。魔王様は元々の魔力量が多いので変異するまでに少々時間は要しますが、おそらく後一年程です。その一年で魔王様の寿命はあなたと同じ人間の寿命の長さになってしまうでしょう。今は普段通り魔力を扱えていますが、それも時間の問題です。

魔王様はご自分の寿命を削ってまであなたと同じ時間を生きていくという決意をされたのですわ。」

真剣な表情で話すカノンから目線を逸らせない。今までそんなデメリットを考えたこともなかった。でも、そうか。世界を渡るのにリスクが無い訳ないのか。

怜王の人生を私が左右しているという事実に冷汗が流れる。嫌な気持ちと焦りがどんどん湧いてきて、頭の中が負の感情に支配されそうになる。怜王の事を考えるならこれ以上一緒に居ない方がいいのではないか、という考えに至った時カノンが私の手をそっと握った。

「これを伝えたのは、あなたと魔王様を引き離したいとかそういう意味ではありませんわ。…ただ、知ってほしかったのです。あの方がどれほどあなたを思っているのかを。」

言うことを聞かない子どもを見守るような優しい瞳を向けられると喉が張り付くような感覚に陥った。鼻がツンとして、胸が苦しくなったときカノンがおもむろに目線を逸らした。

「…というより引き離そうとしても離せないというか…。…あなたも大変なのね…。」

「ああ、逃げようとしても無理だよな…、あれはすげえ執着だよな…。」

今までハンバーグを美味しそうに食べて、話に参加していなかったアレクまでもが気まずそうに目を逸らしだした。なんなら引いてるように見える。…一体二人は私の知らないところで私の何に同情しているのだろう…。

「…ま、まぁそれは置いといて。こちらからの話は以上ですわ。それで、あなたは一体何を聞きたいんですの?」

何を見たかは教えてくれないらしい。え、もしかして人生の選択間違えたのかもしれない。さっきまでのもやもやがすっと晴れていくようだった。とりあえず寿命については今日に変わるわけでもないらしいから、明日以降でいいだろう。明日にでも怜王と話し合おう。

とりあえず、カノンが居るうちに怜王の事を聞いておきたい。

「ん~、じゃぁカノンは幼少期から怜王といるんだよね?昔はどんな感じだったの?」

「そうね…、遊んでくださる優しいお兄様って感じだったわね。面倒見も良かったのではないかしら。…でも何に対しても無関心な印象が強かったわね。」

「無関心?」

「すべての物事に対して、というわけではないのでしょうけど…。何事があっても冷静で、一定の興味を持つことがないような…。そんな掴み所のないような魔族でしたわ。」

「…誰だ、それは。」

お、おお、私の代わりにアレクが突っ込んでくれた。食べ物に集中していると思っていた。追加でミートソーススパゲティも注文していたようだ。流石勇者、よく食べるなぁ。

「そう…。だから…!あんな…!あんなおかしなことになっているなんて知らなかったのですわ…!いや、確かに後々考えたら変だとは思っていましたの。あなたたちが魔王城に来た時何故か休息地で可愛らしいクッションを置き始めたり過ごしやすい小屋を設置しだしたりして…!!」

わなわなと震えるカノンは昔を思い出して何かと戦っているようだった。

そう言われてみると思い当たる節があった。アレクも心当たりがあったようで、目が合うとお互い苦笑いを零した。

「…私の初恋でしたの。頼りになって、すごく格好良くて優しかった。そうね、憧れとも言いますわね。…それが…!あんな風になっているなんて誰が予想出来ました!?」

カノンは落ち着いた様子を見せたと思ったら不満を爆発させるように机に突っ伏した。

なんだか申し訳ない気持ちになりつつ、出会ったときの事を思い出すと私も言いたいことがむくむくと浮かんできた。

「あー…、私も魔王城で一瞬だけど見た雰囲気と全然違うと思ったよ。…っていうか聞いてよ!こっちの世界に戻ってきたとき私の両親に彼氏だって嘘ついてたんだよ!?家知ってるのも普通に怖いし、私の知らないところで彼氏面してるの怖すぎない!?魔王城であんな睨んできた人がだよ!?」

「なぁ、この飲み物に酒でも入ってんのか?」

怜王の事情を知っている人が周りにいなかったから、今まで言いたくても言えないことが溜まっていた。予想外の行動をする人(怜王)と一緒に居ると私の常識が間違っているのかもわからなくなる。共感してくれることに安心感を覚えてしまったので仕方がないと思うことにしよう。

「…魔王様の思考はわかりませんけれど…、それでもあなたは魔王様の事を受け入れてくださるのね。」

ひとしきり話してお互い落ち着くと、カノンは切ない表情でそう言った。

「うん、そんなところも好きになっちゃたんだよね。」

なんでこうなったかな…、と、遠い目をして答えると「まぁ、あの様子ですと逃げることは出来ないと思いますわ。」と同情するような顔で告げられた。カノン、怜王の事好きだったんじゃないのか。

目が合うとなんだかおかしくなってお互い笑い合った。前まで敵だったのになんだか不思議な感覚だ。

「なんかこう見るとただの仲が良い友達みたいだな。」

微笑ましい目でアレクに言われて二人でアレクの方を向いた。そこでふと思い出したことがあった。そういえば高校生になってから友達を作っていないな、と…。

「一緒に居られるのは今日一日しかないけど、良かったら友達になりたいな。」

実際話してみるとすごくいい子なのだ。…まぁ、昔は殴ってしまった記憶があるけど…それはそれだ。うん。

「しょ、しょうがないですわね。そこまで言うのでしたらわたくしで良ければなってあげても良くってよ。」

ツン、と顎を上げたカノンの頬はうっすら桜色に染まっていて、それがとっても可愛らしい。

アレクとつい目が合ってしまってつい笑ってしまうと、「な、なんですの!」とカノンが焦った様子で耳まで真っ赤に染めた姿が面白くて余計笑いが止まらなくなってしまった。

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