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18.友達と恋人は全然違う

甘い雰囲気が去って行ったと思って、つい油断してしまった。ふと横に座っている怜王の顔が近づいたと思ったときには首筋に痛みが走った。

「いっ…!」

首筋に噛みつかれていると理解すると同時に柔らかい唇の感触とぬるりと濡れたような感覚に襲われ、背筋にぞくりとしたものが走った。

「…っ、」

思わず口から声が漏れそうになり、そんな私の反応を楽しむかのように怜王は目尻を緩めると満足そうに体を離した。

勢いよくバッと距離をとって首筋に手を当てながら怜王を睨みつけた。今気づいた事だが、いつの間にかシャツのボタンを二つ外されていたようだった。おそらくキスしていた時にでも外したのだろう。どうしていきなり嚙まれたのか理解できなくて頭が混乱する。


「どうやら私は独占欲が高いようだ。気を付けるといい。」

「…どく、せんよく…?」

独占欲で噛みつくものなのか…?そんなことで噛みつかないように気を付けて欲しい。

そんな事を考えていると噛みつかれた場所に怜王の指先がゆっくりと伸びてきて優しく触れられ、そのくすぐったさで身体がピクリと震えた。

「…っ、」

「うん、これなら丁度良いだろう。」

…何が…?そんな疑問が浮かんだが、あることが頭に過った。素早く怜王に背中を向けてポケットから出した手鏡で状態を確認する。血こそ出ていないものの、そこにはくっきりとした歯型が残っていた。丁度ボタンを留めるとギリギリ見えるか見えないかの絶妙な位置に付けられている。


「~~~~なにこれっ?」

「あからさまに跡が見え過ぎると瑠々に嫌われてしまいそうだからな。虫よけ代わりだ。…ま、これからは寄ってきたところで燃やすが。」

ぼそっと告げられた言葉につい凝視してしまう。燃やすって…なにを…。いや、物騒な言葉が聞こえてきたが、聞いたら負けな気がする。

「寄って来ないよ。…それよりも痛かったんだけど。」

不満げに言うと、怜王に呆れた表情を向けられた。

「え、なにその顔。」

「いや…。気付いてないなら気にしなくて良い。…痛くしてしまったのはすまない。」

なんとなく怜王にその顔をされるのは心外だ。なんだか腑に落ちないけど謝ってくれたしよしとしよう。

「じゃあもうしない?」

「…、」

「聞いてる?」

「…聞いては、いる…、が、自信はない。」

「別にこういうの付けなくたって離れていかないのに…。」

「…瑠々…!」

怜王は口に手を当てて感動しているようだが、私は自分の口から出た言葉に恥ずかしくなってじわじわと顔に熱が籠った。こ、こんな彼女みたいなことを言うなんて…!いや、まあ彼女、ではあるのだが…。

もうだめだ!もう私は限界かもしれない!これ以上ここにいたら私らしくない変な事を口走ってしまいそうで「もう帰る。」と言っておもむろに立ち上がった。

怜王はいきなりの私の行動にきょとんとした顔をしていたが、私の真っ赤になった顔を見ると恥ずかしがっていることを察したのだろう。ふっと口元を緩めると「送っていこう。」という言葉と共にいつもの人間の制服姿に戻った。身支度を整えて外に出ると夕日が沈むところだった。


怜王が自然に私の手を取るとそのまま指を絡めて歩き出す。そんな些細な事でいちいちうるさくなる心臓を恨めしく思いながら他愛のない話をしているとあっという間に私の家に着いた。

「そしたら、また明日ね。」

「あぁ、また明日。」

繋いだ手を持ち上げられると、手の甲にキスを落とされた。こちらを向く射貫くような視線に目が逸らせられない。怜王は私の表情に目を細めて満足そうな表情を浮かべると、そのまま手を離して帰路に戻っていった。


今まで隣にいたからか、繋いだ手を離されるとなんだか寂しくなって引き留めてしまいそうになったのは私だけの秘密だ。ちなみに夜になって冷静に考えると初めてのキスや抱きしめられたことを思い出して悶絶していたのも私だけの秘密である。


そんな恋愛モード全開の私は今日あった出来事など頭の中からすっかり抜け落ちていたのである。

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