15.人に任せた方がいいときだってある
カノンとアレクが帰らないと言い出してしまった。
まあ、なんとなくカノンはわかる。怜王に戻って来てほしくてこっちに来たとの事だし、そうおめおめと帰れないのだろう。問題はアレクである。一人で帰ることが出来ないにしても、せめて帰ろうとする意思を持ってほしい。勇者が行方不明とかシャレにならないだろう。
私が怜王を倒すとか言い出したから訳わからないことになってしまったのか…?いや、正直に言ったところでアレクが納得するとは思えない。
さて、どうしようか…。
頭を悩ませながら怜王の方を見上げると肩を震わせて笑いを堪えていた。…この状況を楽しんでいる…だと…?
「ねえ、この状況を上手く収める方法ってないかな…?」
怜王にだけ聞こえる声で問いかけた。楽しむ余裕があるなら、もう任せてしまいたい。正直私は今日色々な事が起こりすぎて疲れてしまった。早く帰ってダラダラしたいんだ。
すると、怜王は一瞬考える素振りをして「…じゃ、抵抗しないでね。」と胡散臭い笑顔を向けてそう呟くと、私の頬に手を当ててキスをする…フリをした。
「「は…?」」
カノンとアレクから唖然とした声が聞こえる。
お互いの唇の間に指をいれて触れないようにしている…が、二人の角度から見ると実際にキスをしているように見えるだろう。
唇は触れ合っていないのに今までになかった顔の近さに心臓の音がうるさくなる。実際は数秒だったのだろうが、体感としては永遠とも思える時間を耐えて怜王がゆっくり顔を離すと、そのまま顔が見えないように私の頭を抱えた。
「…とまあ、私達はこういう関係でね。瑠々がこちらにいる間は向こうに戻る気はないし、もちろん悪さをする気もない。だから邪魔をしないでもらいたい。」
語尾を強めて放たれた言葉に、二人から息をのむ音が聞こえた。
「…あ、…諦めませんわ!行きますわよっ!」
「は!?…え、俺もっ!?」
カノンが捨て台詞を吐くと、アレクの驚いた声を最後に二人の遠ざかっていく足音が聞こえた。どうやらカノンがアレクを連れてどこかへ行ってくれたようだった。
「…帰った?」
「とりあえずこの場からは居なくなった…が、また来そうだな。」
「そしたらもう離してもらえれば…。」
「んー…、」
「いや、だから、離し…、ち、力強いな…。」
そう、今も抱きしめられた状態のままなのだ。そろそろ心臓がやばいことになるので一度離れたいのだが、離してくれない。力を入れてもびくともしないのだ。
どうしよう、と悩んでいると階段を上ってくる足音と、話し声が聞こえた。
「ちょっと、人!人来るって!」
こんなところを他の人に見られるなんて恥ずかしくてもう学校に行けなくなる。必死で訴えると、やっと腕の強さを緩めてくれた。
上を見ると拗ねた表情をした怜王と目が合った。
「そろそろ帰ろっか。」
二人が去ったことと、怜王との距離ができたことの安心感で笑顔になると上から「ン゛ッ…、」という呻き声が聞こえた。
「え、何…。」
なんかまたおかしなことを考えている気がする。慌てて出て来たから教室に鞄が置きっぱなしだ。そう思って階段を下りたが、怜王は階段の上に座って頭を抱えている。…さっき立っていたのになんでまた座っているのだろう。帰らないのだろうか。…とりあえず少し放っておいてもいいかな。
そう判断して「怜王の分の鞄も取ってくるね~。」と声を掛けると、ようやくピクリと動いてよろよろと階段を降りだした。
一緒に教室に向かってお互いの鞄を回収して帰路に着いた。
今までは何ともなかったのに怜王が隣に並んで歩いているというだけで緊張している。チラッと横目で怜王を見るとキラキラと輝いて見える。…なんだこれは。かっこいい。え!?すごくかっこいい。この人が私の彼氏か、と思うと感慨深くなる。…ん?かれ…し…?え、というか付き合って…る…?
…そういえば告白とかしていなくないか、私…。




