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第十二章 「帰省」 12-1

翌朝、エミリーの荷物を沢山詰め込んで馬車は魔法学校を出立しました。

王家から迎えに来た豪華な馬車には、荷物を載せるスペースなどありません。そこでエミリーはわざわざ別に荷馬車を調達しました。持っていく荷物のほとんどはマリーさんから借りた畑の作業に使う道具ばかりです。いつも制服が汚れないようにと着ているエプロンまで積み込んでいます。

特訓とはいえバケーションだと聞いていた朝日には、なぜこんな物が必要になるのか見当が付きません。中でも分からないのが、ホウキ。どこにでもある様なありきたりなホウキまで積み込んでいるのです。しかも3本も!

『エミリー様……いったいこの荷物は何ですの?』

『ホウキは必ず必要になるから、絶対よ。忘れちゃダメ!』

荷物の積み込みに忙しいエミリーは、不思議がる朝日の事など取り合ってくれませんでした。


ぎゅうぎゅう詰めなのは荷馬車だけではありません。豪華な馬車の中にも人がすし詰め状態で乗り込んでいます。

ルイスがフッと笑って言いました。

「ちょっと狭いな、」

乗り心地を重視して作られている王家の馬車は、余裕をもって座れるよう4人乗りです。けれどそこに6人がくっつき合って乗っているのです。

「申し訳ありません。ルイス様。わたくし達まで乗せてもらって」

メイベールが謝ります。

「いや、いいんだ。そんなつもりで言ったのではないから気にしないでくれ、フフ」

彼は楽し気に笑いました。

「そうです。皆で乗った方が楽しいじゃありませんか。途中まで道のりは同じなのですから」

同じくエミリーも楽しそうに笑いました。


笑い合うロンド兄妹を横目に、ケステル兄妹の表情は沈んでいます。特に今朝になって補修の話を聞いたジャスパーは釈然としない様子。

「ジャスパーお兄様はうちの馬車に乗ればよかったじゃありませんか」

「妹よ、そんな寂しい事を言わないでおくれ。冬休みは二人で狩りに出かけようと思っていたのだから、せめて今だけは一緒に居ても構わないだろう?」

彼は一人で迎えの馬車に乗るのは嫌だと、強引に乗り込んできたのです。メイベールだって狩は楽しみにしていたはずです。朝日だって4週間も明星あきとと離れるのは心細いのです。それが顔に現れていました。


(確か、ゲームの冬休みでは一番仲のいい相手のお屋敷にアイラがお呼ばれするんだよねー)

なのに、向かうのはメインキャラの誰のお屋敷でもありません。強いて言えばエミリーのお婆さんが居るらしいので、エミリーのお招きという事になるのでしょうか。確かにエミリーとアイラは随分と気が合う様で、ゲームで言えば親密度のパラメーターは高そうです。朝日は変なルートに進んでいるのではないかと、それも気掛かりでした。


ムスッとしていたジャスパーの恨みは隣のテオに向けられます。

「テオ!キミは人より図体がデカいんだ。キミこそ自分の馬車に乗ればいいだろう?」

「……」

窓の外を見つめたまま彼は応えようとはしません。彼もまた、冬休みに妹がどことも知れない地へ赴くと聞いて心配しているのでした。

反応のない相手に怒りをぶつけるのも馬鹿らしいと、ジャスパーはため息をつきます。

「まあ、いいけどね。ケステルの街まではそれほど遠くはない。窮屈だが昼過ぎには着くはずさ。皆、昼食はうちで摂るといい。くつろいでいってくれ」


街道を行く馬車は人々の注目を集めました。王家の紋章があしらわれた豪華な馬車に続くのは、ケステル公爵とベオルマ公爵の紋章があしらわれた馬車です。それぞれに護衛の騎士が馬を駆って横に並び、更に後ろから身の回りの世話をする使用人を乗せた馬車もズラリと付いて来るのです。

長く連なった一行は否が応でも人目を引きます。それは人々に次の王を想起させるものでもありました。

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