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10-8

広場を回るうち、ガード達に囲まれるジャスパーを見つけました。向こうもこちらに気付いて駆けよって来ます。

「お兄様、何かやらかしたのですか?」

「そんな事あるわけないだろう?久しぶりに会った先輩がいたから話していただけさ」

彼はポケットから何か取り出すと差し出してきました。

「今のうちに渡しておこう。明日のお小遣いだ。考えて使うんだよ」

屋台で売られている物がいくらかは知りませんが、渡された革の小袋はズシリと重く、朝日でもお小遣いで受け取る様な額ではないことは直ぐに分かりました。

「お兄様、コレ……」

「明日は一緒に祭を愉しみたかったが、僕はあいさつ回りに忙しいんだ。けれど、夕方の打ち上げは必ず見に行くから、」

兄は足早に戻っていきました。ガード達とまた親し気に話しています。彼は学校生活でこうして交友関係を広げてきたのでしょう。ケステル家の為に。ひいては妹の為に。


広場を巡っていると建物の前でたたずむテオを見つけました。彼はなぜかその建物の屋根を見上げています。

「おにぃ、何してるの?」

呼びかけに気付いた明星が屋根を指さしました。

「あの星の飾り、教会の印だよな?」

彼が指さしている先には星を模した金属の飾りが付いています。

「あ~ぁ、ステラだっけ?確かこの国の宗教の印だってアイラが教えてくれた気がする」

「入ってみるか?」

教会の扉は開け放たれていました。

「勝手に入っていいの?」

「教会なら大丈夫じゃないか?日本の神社とかと同じだろ?」

明星が入口に向かっていきます。彼も観光気分でいるのでしょう。朝日はその後を付いて行きました。


中には明日のお祭りで披露するのか、讃美歌を練習している人達がいます。彼らの邪魔にならない様、二人は一番後ろの席に腰掛けました。

「はーぁ……すごい、」

教会の中はそれほど広くはなく、こじんまりとしています。けれど古い時代の作りの様で、歴史を積み重ねてきた荘厳さを醸し出していました。

正面中央に位置する講壇、礼拝に来た人達が座る長椅子、全ての壁を埋め尽くす宗教画、虹色に光の差し込むステンドグラス、どれもが朝日のイメージする教会そのまま。そこに讃美歌の心地よい音色が響き渡り、本当にヨーロッパを観光している気分です。暫し、時間を忘れてその空間に浸ってしまいました。


朝日はボーっと考えていました。

(こんな所で結婚式挙げられたら素敵だろうなぁ、)

『誰と?』彼女は首を振りました。それは叶わない願いなのです。けれど、この世界でなら……

「あのさぁ、おにぃ……もしも、もしもの話だよ?このまま日本に帰る方法が見つからなかったら……どうする?ほら、アタシ達いちおう婚約している訳だし」

隣の彼が肩へと寄りかかってきました。

「お、おにぃ⁉」

「すぅ……すぅ……」

明星は穏やかな寝顔で眠っています。その寝顔を見るうち、朝日は気付きました。

(そっか……分かっちゃった)

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