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10-2

◇◇◇


彼はいつもの決まった時間に目を覚ましました。外は暗く、まだ日の出には時間があります。

彼が所属する乗馬クラブの朝は早いのです。それは馬の生活リズムに合わせているからです。馬は暑さが苦手な動物なので、夏場は涼しい朝の内にトレーニングを終えてしまわねばなりません。だから日の出前から馬の世話に起きなければいけないのです。

しかし、寒くなったからと言って世話の時間を遅らせる事は出来ません。馬は決まった生活のリズムを崩されるのを嫌います。冬の暗いうちであろうといつものように起きて、人間が世話をしにやって来るのを待っているのです。

それに馬の睡眠時間はとても短く、うたた寝をする程度の睡眠を何回か繰り返すだけです。だから人間の都合で暗い冬は睡眠時間を長くするなど出来ません。


彼は作業着に着替え、寒くなったのでマフラーと手袋をして寮を出ました。厩舎きゅうしゃにやってくると、いつものようにクラブのメンバーが馬の世話を始めていました。

馬の世話は2組に分かれます。騎乗組と給仕組です。

騎乗組はまず馬の体調を確認します。呼吸が早くなっていないか?落ち着いているかどうか?触ってみて体温が異常に高くなっていないか?変に発汗していないか?糞の量は適正か?毎日している世話なので、慣れてくるとおかしな点があれば気付くようになります。

問題が無ければ鞍を付けて騎乗し、馬を外に連れ出します。軽く運動させる朝のウォーミングアップです。馬は体の大きな動物です。その割に心臓は大きくないので、適度に運動させてやらないと血行不良を起こしやすいのです。


騎乗組が馬を外に連れ出している間に給仕組が馬屋の掃除をします。汚れてしまったワラを取り換え、エサと水の準備もします。

夏場は放牧によって青草を食べるので水分摂取に気を遣う事はそれほどありませんが、冬場は乾燥飼葉を与えるため水に気を付けなければいけません。冬の冷たい水では飲んでくれないこともあるので、火球で温めたぬるま湯を与えます。

こうして2組の仕事は1週間おきに交代して進めます。馬に乗ることの出来る騎乗組の方が、やはり人気がある為です。


乗馬クラブはこの学校の伝統です。古くは250年前、戦場で使う為にリード城でも馬の飼育がされていました。城内には飼育の為の厩舎と放牧地があり、それが今も使われ続けています。

平和な世となってからは乗馬は貴族の嗜みとされました。この貴族の学校でも、乗馬をしたい生徒は沢山いますが、クラブでは馬の世話もしなくてはいけないので、そこまでしてでも馬と触れ合いたい生徒しかクラブに入りません。


彼の今日の当番は騎乗組です。軽くブラッシングして馬と触れ合い、体調がいい事を確認してから騎乗しました。

騎乗のコースは隣接する牧草広場や近くの訓練場、時には校内も巡って馬が人を怖がらない様に慣らします。

最近、フォグウォーカーの噂が広まっているので校内は回らないようにしようと、クラブ内で話していました。彼は訓練場へと向かいました。

夜目の効く馬は僅かな星明りを頼りに、暗い中でも進んでいきます。訓練場に到着し、広場を歩くよりは気持ち早めのペースで回りました。しかし日の出が近づいてくると霧が出始めました。これでは視界が悪く、馬も怯えてしまいます。無理は出来ません。他の騎乗組も厩舎に戻るはずです。


彼は馬を降りると近くの柵に手綱を繋ぎ留め、霧の中に消えていきました……


◇◇◇

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