第十章 「誤認」 10-1
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朝日はまだ暗いうちに起きました。目覚まし時計など無いので起きられるか心配でしたが、昨晩は早くに寝たのでその分、早く目を覚ますことが出来ました。明星と二人暮らしの頃は夜遅くまでゲームをして、生活は乱れていたので自分で起きられるなんて信じられません。
制服に着替え準備します。窓の外を見ると今日も霧が出ていました。フォグウォーカーが現れるには絶好の条件でしょう。もしかしたら今朝も生徒の何人かはフォグウォーカーを見ようと早起きしているかもしれません。
そっと自室を抜け出し、三年生の部屋がある階までやって来ました。廊下の陰に隠れて待っていると案の定、エミリーが姿を現しました。扉の前で辺りの様子を伺ってから部屋を出て、爪の先に魔法で小さな明かりを灯し歩いていきます。こんな朝早くに部屋を抜け出すなんておかしい。彼女はまたイタズラをしに行くはずです。フォグウォーカーとして、いえトリックプリンセスとして。
ジャスパーには黙っておくように言われたので、正体をバラすつもりはありません。ただこの前、尻もちをつかされたお礼にイタズラの現場を押さえて朝日はビックリさせてあげるつもりなのです。ただの子供の仕返しです。
朝日がニヤニヤしながら後を付いて行くと、エミリーはある部屋に入って行きました。そこは監督生に与えられる部屋です。問題を起こした生徒が呼ばれ指導を受けたりします。生徒の間では近づきたくない場所でした。
その部屋の外で耳をそばだてていると、中から何かゴソゴソ音が聞こえてきました。かと思えば音は止み、何も聞こえてこなくなってしまいました。
(うーん、どうしよう)
イタズラの現場を押さえるつもりでしたが、こんな朝早くに何をしているのか?ここで問い詰めるのも悪くはありません。フライングブックのトリックをいま明かしてやるのです。
見つかってもいいつもりで、扉を開けます。ですが、そこにエミリーの姿はありません。中に入り、朝日も指に明かりを灯して隈なく観察します。テーブルを挟みソファーが向き合って置かれています。他に目に付く物もありませんが、壁に大きなタペストリーが垂れ下がっていました。
(ここかな?)
不自然に置かれた椅子をどかし、魔法陣がデザインされた豪奢なタペストリーをめくります。
(あたり!)
壁には小さな扉が付いています。開けると階段が現れました。
地下へと降ります。そこは真っ暗です。既にエミリーは先へ進んで行ってしまったのでしょう。奥は暗闇で何も見えません。指先のライトに魔力を込めて、明るくします。
洞窟の様な場所をイメージしていたのですが、明かりに照らされた床や壁はレンガ敷になっていて、意外にちゃんとした作りです。ただ、幅は人一人分しか無く、狭い通路が真っすぐ伸びていました。
空気はジトジトといかないまでも、少し湿っぽさを感じます。地下のおかげか寒さは感じません。温かいくらいです。
通路を進むうち、朝日は少し後悔し始めました。最初は軽いノリでお姫様の悪事を暴いて笑い飛ばすつもりだったのです。しかしこんな朝早くに人の秘密をバラす為だけに早起きして何をしているんだろう?と、暗くて狭い通路を進むうち孤独に駆られて臆したのです。
周りの景色が見えないので、どれだけ進んだのか分かりません。その事も不安を煽ります。今からでも引き返そうか?そう思い始めた時、通路が壁に突きあたりました。左と右に分かれています。
女子寮から図書館は北東の方角なので、保管庫の扉は右にあるはずです。右の通路を進み、暫くすると階段が現れました。登って小ぶりな扉を押してみますが、開きません。カギがかけられているようです。エミリーが用心深く、かけていったのでしょう。仕方なく引き返します。
イタズラを暴くつもりでいましたが、朝日は少しホッとしていました。やはりやり過ぎた気がします。通路は見つけたのだし、この事を園芸クラブの時にでも言って、笑い話にすればいいと考えました。
分かれ道の所まで戻り、ふと、気になりました。
(この先はどこに繋がってるんだろう?)
興味本位で先へと進みます。暫くして階段が現れました。登った先には今度は押上げ扉ではなくちゃんとした扉が壁にありました。ノブを回すと開きます。
「しつれいしまーす……」
そこは物置の様でした。いったいここはどこなのだろうと、部屋を出て朝日は見てしまったのです。
(え?なんで⁉)




