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9-10

保管庫の廊下を歩く途中、窓の外で影が動いた気がして立ち止まりました。外は日が沈み、黄昏時の僅かな明かりしかないので、よく見えません。窓に張り付きます。手で廊下の明かりを遮り、目を凝らしました。やはり何かがいます。窓は北側なのでその先にある訓練場で時折、青白い炎が揺らめいている様に見えます。

先生も朝日と同じように窓に張り付いて見ていました。

「ふーむ、幽霊というものは本当にいるのかもしれませんね。フフ」

「スパンキーでしょうか?」

「スパンキーは火の玉でしょう?雷の火花を出したりしませんよ。フフフ、」

「雷?プラズマ現象ですか?」

「プラズマではなく、魔法によるものです。ごく微量ですが感知しました」

(雷の魔法……あ!)

朝日は慌てて走り出しました。走り出してしまってから気付いて振り返り、お辞儀します。

「先生、ありがとうございました!」


暗くなった訓練場で、時折見える僅かな光を頼りにその人物へと近づきます。

「アイラさん」

「ひゃい⁉」

彼女はうずくまっていた状態から飛び跳ねる様に立ち上がりました。青白く光る手を明かり代わりにかざし、こちらの顔を認めると安心したのか息を吐き言いました。

「メイベールさんかぁ、びっくりしたぁ」

「こんな所で何してるの?」

アイラは光っていた手を、今頃になって後ろに隠してしまいました。

「な、なにもしてません……よ?」

暗闇でもその表情は動揺しているのだろうなという事が言葉から分かります。

「今更、隠さないで。今日、畑の手伝いにも行ってないでしょ?マリーさん、祭りの間はお休みにするって言ってたから。まさかアイラさんがエミリー様とグルだったなんて」

「グルってなんですか?」

暗くて表情は読めませんが、彼女の声は動揺しているのが伝わります。

「アナタがここで火花を出してガードを引き付けているうちに、エミリー様はフォグウォーカーを演じていたんでしょ?スパンキーはアナタよ」


「ち、違いますぅ!」

アイラは詰め寄って、光る手でメイベールの顔を挟みました。ビリビリと静電気をともなった魔力が流れ込み、髪の毛が逆立つ感じがします。

「やっ、やめぇでーぇ!」

アイラは手を放してくれません。

「私、ここで魔力操作の練習をしてただけです!イタズラなんてしてません!」

放してくれないので、朝日は彼女の腕を掴み火の魔力を流し込みました。

「んっ!」

彼女がビクンっと体をこわばらせ、手は放れました。


「ねぇ、ウソはよくないよ」

「ウソなんて言ってません。本当に魔力操作の練習をしていただけです」

「畑に行くってウソをついて?」

「そこは……ウソですけど、」

「魔力操作の練習なら図書室でやればいいじゃない」

「お兄さん、調べものしてて忙しいみたいだし、邪魔しちゃ悪いかなって。それに上手くなったのを見せて褒めて欲しくて、」

(なにこの子、カワイイ……この前もこんな事あったな)

「もうっ!メイベールさんは、何でいつも私の邪魔するんですかっ!」

「オホホ!なぜかしら?勝手に体が動いてしまいますの!オホホ!」

朝日は初めて悪役令嬢っぽく、ヒロインに向けて高笑いをしてしまいました。

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