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マリーさんのお店にやってきました。
「おや、いらっしゃい」
「アイラさんはいらっしゃいますか?」
「今日は来てないよ。畑仕事は祭りの間、お休みにしたからね」
「そうですよね……」
店の奥からジョージ先生が現れました。メイベールを見つけ口の端がニヤリと上がります。
「おや、メイベール嬢。また何か聞きに来たのですか?」
「いえ、そういう訳ではありませんの」
「本番は明後日だが、練習の方はしなくてよろしいのかな?試し打ちがしたいのなら私が付き合ってあげてもよいが」
「結構です。」
即、お嬢様が応えました。
「本番で皆さんを驚かせたいので」
「そうですか。私も楽しみにしていましょう」
先生が分厚い本を抱えているのが目に付きました。
「それは魔導書ですか?」
「ええ、これから図書館へ返しに行くところです」
「図書館の本は貸出禁止ではなくて?」
「そうですよ。あそこの本、全てに私が魔力を付与してあるので、貸し出すどころか今は持ち出すことも不可能です。私以外はね」
「絶対に?」
「ええ、絶対に。」
「なぜ言い切れるのです?」
「ふーむ……私と魔力量で勝負してみますか?相手に魔力を流し込む簡単な遊びです」
先生は両手を出し胸の前で開きました。
「適性の違う魔力は反発しあいますから、押しあいっこしましょう。魔力が尽きて体に流された方が負けです」
朝日は首を横に振り、手を後ろに隠しました。
「フフ、あなたの魔力量ならもしかしたら勝てるかもしれませんよ。他にこの学校で勝てる者がいるとすればエミリー様とアイラ嬢、もう後2人くらいでしょうか。魔力量で劣るのに私の結界を破る事は出来ません。魔法とはそういうものです」
「けどルイス殿下が心配しておられましたわ。こんな簡単に図書館へ侵入を許すなどと」
「その事もあって本を返すついでに、今後の対策を考えようと見に行くところだったのです。一緒に行きますか?」
『嫌です』と言いそうになったのを飲み込み、朝日は頷きました。
図書館に向かいながら質問します。
「先生は今朝の事件、どう思われます?兄は確かに図書館の中に人がいたと言うのです。けど、ガードが周りを囲んで見張っていたのに中に人はいなかった」
「そうですねぇ、固定観念をまずは取り払ってはどうでしょう?」
「どういう事ですか?」
話しているうちに図書館へ着きました。中に入り、カギを取り出した先生が保管庫の扉を開けます。
「わたくしも入っていいのでしょうか?」
「特別ですよ?」
先生はニヤリと笑いました。背中に悪寒が走ります。どうしてもこの人とは生理的に合いません。二人だけでいるのは怖いのですが、朝日は事件の手掛かりを求め中へと進みました。
そこは廊下になっていました。奥へとズラリ扉が並んでいます。どうやら館の西側は改築しないで当時のまま部屋を残してあるようです。
一つの部屋の前まで来ました。
「ガードからの報告ではこの部屋に侵入していたようです」
扉を開けた室内には当時の調度品がそのまま残されています。どの家具も木製で装飾など無く、質素な作りです。
壁際には作り付けではない後から運び込まれたのだろうと分かる本棚が並べられ、魔導書がびっしり収められていました。部屋をそのまま保管庫としているのでしょう。




