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9-6

「フゥー……」

今日のティータイムもジャスパーのため息で始まりました。

「また何か問題でも?」

「聞いてくれるかい?妹よ。実は図書館のフライングブック騒ぎは終わっていなかったんだ」

「あら、そうなのですの?」

朝日はどう応えようか戸惑いました。犯人がエミリーなら黙っておくようにと言われたからです。ジャスパーもトリックプリンセスから目をそらせるためなのか、訓練場のスパンキーの噂を流した様で、既にその噂話は生徒達の間に広まっていました。フォグウォーカーの噂も相まって今朝は何人もの生徒が朝早くから窓の外を眺めて幽霊が現れるのを待っていたらしいのです。実際に見たという生徒もいて、その話で校内は盛り上がっていました。


「昨日から十一月だろう?図書館の管理を任される先生が交代したんだ。最近のフライングブック騒ぎの事もあって、その先生は館内を隈なく見回ったそうだよ。カギのかけられた保管庫もね。そしたら保管庫の一室で本が散乱していたらしい」

「ぶっ!……ゴホゴホ」

ルイスが驚いて、飲んでいた紅茶でむせてしまいました。すぐに近侍が駆け寄りハンカチを渡します。

「ゴホッ!……大丈夫だ……失礼した」

近侍は戻っていきました。


「そんなに驚くなんて、よっぽど危ない魔導書でも保管されているのかい?」

「……そんなところだよ。そもそもリードは昔から鉄壁を誇ってきた街だ。ここならば禁書も安全だろうと、王都ではなくこの図書館に保管されている物も多い。なのにこうも簡単に侵入を許すとは、」

「そこら中に魔導士もいてガードまで警備しているんだから、鉄壁であることに間違いはないよ。一般人からしてみればね。やれやれ、イタズラ好きの誰かのおかげで僕も今夜から見回りにかり出される羽目になったんだ」

「それは災難ですわね。わたくしもお付き合いしましょうか?」

「夜に女の子は部屋から出ちゃいけないよ。そうだ、代わりにテオが付き合ってくれないか?」

彼は紅茶を見つめたまま視線を合わせようとしません。ボソッと呟きます。

「スパンキー……」

「フフ、これじゃあ戦力にはなりそうにないな」


その夜、ジャスパー達による見回りが行われました。寮の門限である9時前から校内を回り、生徒が残っていないことを確かめていきます。続いて寮では点呼が行われ、全員揃っている事が確認されました。いつもなら点呼の後は自由時間ですが、寮長が部屋から生徒が出ないよう暫く見回っていました。

これだけ警備が厳しいと訓練場のスパンキーを見に行こうかと話していた悪ガキも諦め、代わりに早起きしてフォグウォーカーを見るために備えようと眠りについていきます。その夜は静かに更けていきました。


◇◇◇


冬の訪れを告げる濃い朝霧は、ミルクを垂らしたようにリードの街を包み込んだ。街のすべてが柔らかくぼやけ、現実と幻想の境界が曖昧になっていく。石畳の道、古びた建物、歴史が刻まれてきた広場。すべてを霧が包み込む。


まだ日の差さない朝の時間、魔法学校は静まり返っていた。生徒達は深い夢の中に漂い、眠っている。動いているのは一番に朝を告げる小鳥ぐらい。


白いベールがゆらゆらと揺れた。

一直線の渡り廊下を右に左にゆらゆらと何かが揺れている。美しい彫刻が施された大理石の柱の間をすり抜けて、霧と同化して、闇と朝日の合間に隠れている。


フフフ……


その影は霧の中に笑い声と共に消えていった。


◇◇◇


ジャスパーは朝の見回りの為、早くに起きました。

霧が立ち込める中、ガードの先輩と一緒に見回りに向かいます。そこで発見したのです。図書館の一室から明かりが漏れているのを。まだ先生がやって来る時間帯ではありません。すぐに駆け寄りました。すると駆けつける足音に気付いたのか、明かりは消えました。暗くなった部屋を窓の外から確認すると、影が揺れたようです。

「入口を抑えるぞ!」

先輩が駆けだしました。

「僕は窓を見張ります!」

ジャスパーは東側にある、あの窓に来ました。窓の格子は外されていません。この前まであったイスも無く、ここから侵入した訳ではなさそうです。

ジャンプして窓の淵に手をかけ、中を見ました。そこには人が立っていました。暗くてよく見えませんが、長髪の後ろ姿は女性の様です。

彼は呼びかけました。

「なにしてる⁉僕だ!ジャスパーだ!早くこっちへ!」

「フフフ……」

人影は闇の中へと消えていきました。


パッと空が明るく光りました。

先輩が合図の照明を魔法で打ち上げたのです。すぐに他のガードも気付いて集まり、図書館は包囲されました。

「誰か出てくるのを見たか?」

「いえ……出てくるのは見ていません。おそらくまだ図書館の中にいるハズです」

「袋の鼠だな。どこの誰だ?こんな時間に悪戯しやがって」

「先輩、その事なんですが……いえ、何でもありません」

「とりあえず先生にカギを開けてもらうまでオレ達は待機だな。キミは授業の準備もあるだろう。戻っていいぞ」

「はい、」

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