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外に出たジャスパーは呟きました。
「さて……どうしたものか、」
どうも兄の様子がおかしい気がします。何かを隠している様な……妹の勘ですが聞いてみる事にしました。
「お兄様は犯人の目星がついているのではなくて?」
「……妹よ。さっきの巡回ルートを散歩しないか?」
兄が歩き出したので、妹は黙って付いて行きました。渡り廊下を北の図書館へ向けて歩き、途中で右へ曲がって東の男子寮の方へと進みます。
「メイベール、学校生活には慣れたかい?」
「ええ、だいぶ慣れましたわ。メイド達がいない分、こちらの方が気が楽で合っている様です」
「ハハハ、そうか。僕も魔法学校の生活は嫌いじゃない。多くの生徒もそう思っているんじゃないかな?それぞれの領地に帰れば、その家のしきたりや義務が待っているからね」
男子寮の前まで来て、今度は北の方角へと曲がりました。屋根のある渡り廊下はここまでです。図書館を左手に望みながら、レンガ敷の道を訓練場へと向かいます。
「それで、犯人の事なのですけれど……」
「メイベールはどう考えているんだい?」
「浮遊や跳躍をしたのが事実なら、風魔法を使ったのですわ。風魔法の操作が難しいのはお兄様も知っていますでしょう?犯人はきっと風の適性を持っている人物です。おそらく……トリックプリンセス。あの椅子も彼女が乗せたそうです」
「イタズラ好きのお姫様か、」
「もしかしたら図書館でのイタズラも彼女が起こしたものかもしれませんわ。窓の外からなら魔法が使える事はこの間、証明されましたでしょう?彼女の魔力操作なら風を起こすことで本を棚から出すことも可能ではないでしょうか?」
「そうか……メイベール、今回の件は黙っていてくれないだろうか」
「なぜですの?」
「あの兄妹には残り少ない学校生活を楽しんでほしいんだ」
歩いて話しているうちに訓練場に着きました。
そこはただの広場です。何か設備がある訳でもなく、殺風景な景色が広がっています。クラブ活動などに使われるグラウンドは校舎の南側にあるので、こちらは誰かが来ることはめったにありません。
「こんな所で何をしていたんだろうね?」
「……さあ?」
「ガードはここで明かりを見たと言っていた……こんなのはどうだろう?夜な夜な浮遊する、訓練場のスパンキー」
「スパンキー?」
「収穫祭に現れるという火の玉さ。死者の魂をその明かりで冥界へ案内すると言われている。丁度ここは昔、兵士たちが訓練していた場所だから雰囲気があっていいじゃないか」
「また噂話を広めるおつもりですか?」
兄が真面目な顔になりました。彼は広場をゆっくり歩いていきます。
「キミはロンド兄妹の事をどれだけ知っている?」
「子供の頃に遊んでいたようですけれど、わたくしは年も離れていたのでほとんど覚えておりませんわ」
歩いている地面には馬の蹄と思われる跡が付いていました。
「そうです、思い出しましたわ。確か、お馬さんごっこをしたのですわよね?」
「懐かしいね。ルイスがキミを乗せ、僕はエミリーを乗せて競争させれたよ。エミリーはキミより二つ年上だろ?女の子の2歳はだいぶ体重に差があるから僕が負けてばかりだった」
「フフ、昔の事は全然覚えていませんわ」




