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8-6

約束通り、放課後は皆でマリーさんのお店に向かいました。

先に来ていたエミリーを見つけ、ジャスパーがわざわざ胸に手を当て挨拶します。

「ごきげんよう。エミリー殿下。」

「嫌ですわ、そんなかしこまって。ジャスパーお兄様ったら」

(お兄様⁉)

朝日の耳がピクピクと反応しました。それだけではありません、メイベールも同じく動揺して脈が速くなっています。二人とも妹の座を脅かす気配をビンビン感じているのです。


ジャスパーが柔らかな物腰で応えました。

「いくら幼馴染とはいえ、この国のお姫様に失礼な態度はとれませんよ。それにもう子供の頃とは違って美しいレディになられたのだから、それ相応の礼儀をとらせてください」

「まぁ、美しいだなんて、フフフ。ルイスお兄様はそんな事、一度も言ってはくれませんのよ?」

エミリーの視線にルイスが苦笑いします。

「ジャスパー、キミは皇太子である私に礼儀ある行動をとってくれたか?」

「いつもキミの事は立ててあげているじゃないか。それが分からないなんて、あぁ、やはり次にこの国を治めるのは女王様の方がいいんじゃないか?」

「笑えないな」


笑い合う3人にメイベールが割り込みます。

「オホホ、皆さん仲がよろしいのね」

割り込んできたメイベールを見て、皆が顔をほころばせました。

「この4人が揃うと昔の事を思い出しますわね」

「ああ、小さなメイベールはいつも私達が何かしているとズルいといって割り込んできた」

「ダンスでも乗馬でも、同じようにやらせてと言って、手のかかる妹だったよ」

「構って欲しくてしょうがなかったのね」

「少し歳が離れていたからな」

「あれは小さな女王様だったね。けど、どこにでも付いて来て可愛かった」

ハハハ!とみんなが笑っています。

いつの間にか自分を中心に話が盛り上がっている事に、物凄く恥ずかしくなったメイベールは声を張り上げました。

「お、おしゃべりはこれくらいにして、飾り付けをいたしましょう!さあ、ジャスパーお兄様も!」


用意してくれていたカボチャをくり抜き、ランタンを作りました。お化けの顔に見立てたランタンが店の入り口やテラスに並べられます。

「上手にできたねぇ」

満足そうに頷くマリーさんが小さなイスを入口の目立つところに置きました。その上に人形が座らされます。

「それはなんですの?」

「明日の主役だよ。迷わず帰って来れるようにってね。目印に置いておくのさ」

その人形は手作りの様で、このリード魔法学校の制服にローブをまとった姿です。

(あぁ、そうか……)

マリーさんの私生活はほとんど知りませんが、その人形に込められた意味を感じ取りそれ以上聞くことは出来ませんでした。


不意にアイラが声を上げました。

「あ、ネコ」

マリーさんの後ろからのっそのっそと歩いて、店の外へと出てきます。朝日も思わず素に戻って声を上げました。

「でっか⁉」

その猫は犬ほどの大きさがあります。長毛の黒猫で、胸からアゴにかけては白く、まるでタキシードを着ているかの様。猫の紳士といった見た目です。体の大きさも相まって、とても貫禄がありました。

その子がマリーさんの足に体をこすりつけながら通り過ぎていきます。

「うちで飼ってるのさ」

人に慣れているのか、それとも人の事など気にも留めていないのか、皆の足元も悠々と通り抜けていきます。

「遠くに行っちゃダメだよ」

マリーさんの言葉を理解したかの様にテラスまで来ると、その巨体をコテンと倒し寝転びました。

明星がボソッと呟きます。

「ネコがねころんだ」

「プッ!」

「フッ!」

ギャグの不意打ちを食らい、朝日とアイラは思わず吹き出しました。


エミリーが猫の側へ行き、まるで人に接するかのように声をかけます。

「お久しぶりですね。ケットシーさん」

テラスに膝をつき撫で始めました。

「ケットシー?」

「あの子の名前だよ。猫の妖精という意味さ。ほとんど塔から降りてこないんだけど、気が向いた時だけこうして姿を現すんだよ。滅多に見られない妖精みたいだろう?」

ルイスが頷きます。

「私もこの学校で5年間過ごしてきて、数回しか見た事ないな。ケットシーという名前だったのか」

ジャスパーが応えます。

「僕は初めて見るよ。噂は聞いていたけどね。確か、塔の上の猫とか、猫の王様とか勝手に呼ばれていたはずだ」

「明日はお祭りだから降りて来てくれたんだね。お祭りの間は動物たちの中に死者の魂が宿って家族と一緒に過ごすと言われてるだろう?だから妙に近くに寄ってくる動物はぞんざいに扱っちゃいけないよ」


「わたくしも撫でていいかしら?」

朝日がケットシーの頭に手を伸ばした瞬間、カプリ!と嚙みつかれました。

「きゃ!」

甘嚙みなので痛くはありませんでしたが、驚いた朝日は尻もちをつきました。マリーさんが笑って言います。

「ハハハ!耳を触られるのを嫌がるんだ。背中とかなら大丈夫だから撫でておあげ」

恐る恐る手を伸ばすと今度は撫でさせてくれました。

「わぁ!フワフワ!」

アイラも一緒になって撫でます。

「気持ちいい」

ケットシーは大きく伸びをして、女性陣に撫でられるがままです。

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