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「ふむ……アナタはとても優秀だ。この先も魔導の高みを追い求め続ければいずれ気付く事なので特別に今、秘術をお教えてあげてもいい」
「威力を上げる別の方法があるのですか⁉」
「ええ。しかし、教える代わりに交換条件があります」
メイベールはためらいました。この先生を信じて関わっていいものかどうか……
その表情を読んで先生が笑います。
「ムリをしなくてもいい。あなたのボムは十分大したものだ。きっとお兄さんも喜んでくれるでしょう」
威力を上げる方法があるのなら今、知りたい。ここで諦めてしまえば、この先ずっと後悔しそうな気がします。方法があったのに、自分は妥協したのだと。そんなのはケステル家の令嬢として許されません。兄の為にも!
「その、交換条件とは……なんでしょう?」
先生がニヤリと笑います。
「キミの秘密を教えてください。」
背中に悪寒が走って、思わず逃げ出したくなるような笑顔でしたが、彼女は踏みとどまりました。
「秘密、とは?」
「魔法に関する秘密です。あなたは何かを隠している様に感じるのです。アイラ嬢と魔力交換をした事件。あれほどの魔力を受け止めるには自身も相当な魔力を持っていなければいけない」
「わたくしはケステル家の令嬢ですのよ?この赤い瞳は伊達ではありませんわ」
「あなたのお兄さんもケステル一族です。気を悪くしないで欲しいのですが、あなたの魔力量はお兄さんをはるかに超えていますよ?」
「そんなはずは!……兄は誰よりも、」
「私は魔法を教える教師です。彼の事はずっと見てきた。間違いありません」
メイベールは一考すると、観念したように息を吐き言いました。
「分かりました。お教えします……わたくしの体の中には精霊が宿っているのです」
「ほう、精霊が」
ジョージ先生は腕を組み、興味深そうに彼女の体を上から下までじっくり観察しました。
「……気づいたのはつい最近。そう、この魔法学校に入学する前あたりです」
(あれ?入学前って)
朝日はお嬢様に体の占有権を全て譲って話を聞くことにしました。
「わたくしはケステルの血を引く者として魔力量に関しては自信を持っていましたわ。けれど、おかしいのです。以前にもまして魔力が増えている様に感じるのです。適性を計る時、いい機会だと思い全力でボムを放とうとしました。先生に止められはしましたが、ボムの魔法を使ってもまだ魔力に余裕があるのです。こんなのはおかしい……きっとわたくしの体の中に火の精霊が宿ったのだと思いますわ」
(もしかして、精霊ってアタシの事?)
朝日は考えていたのです。お嬢様は自分の体が勝手に動いて変に思わないのかと。
「時々、感じるのです。自分が自分で無いような感覚。このひと月余り、まるで夢を見ている様で記憶もハッキリ致しません」
(お嬢様、気付いてたの⁉)
「そうですか。なるほど、なるほど、興味深い」
先生の狂喜を宿した瞳がメイベールを捕らえて離しません。彼女はたじろきました。
「わ、わたくしの秘密は話しましたわ!魔法の威力を上げる方法を教えてくださいまし!」
「そうですね。その前に私の秘密も教えましょう。アナタだけに秘密を語らせては不公平だ」
先生は足を組み替えると、ゆっくり話し始めました。




