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第八章 「収穫祭」 8-1

「アナドリ」第1巻が電子書籍で販売中です。投稿サイトでは発表していないエピソードも書き下ろしてますので、よろしくお願いします。


ブックウォーカーにて販売中「https://bookwalker.jp/ded45f596f-2f02-49c6-be84-f0f5ff44f2e0/?acode=2uTaWsKT」



「もう少し強く、」

「こうですか?」

「まだ足りない、もっと」

「こ、こう?」

「まだ、まだ、オレに遠慮しなくていいから。ちゃんと受け止めてやる」

「は、はい!」


(アタシ、なに見せられてるの?)

朝日が見せつけられていたのは、アイラの魔力操作の訓練です。教えているのはテオ。図書室のいつもの場所で二人がテーブルを挟んで向き合い、手を合わせて魔力をコントロールしているのでした。

最初は朝日が教えてあげようと思ってやってみたのですが、アイラの雷を帯びた魔力が流れると思わず変な声が出てしまい、静かな図書室に響いてしまったのです。ガードに睨まれました。

仕方なく明星に任せる事にしたのです。こうなる事は分かっていたけど。


「結構、難しいですね」

「まだこの前魔法を使い始めたばかりならしょうがないよ。ゆっくり練習しよう」

「はい。お願いします……お兄さん」

(確か、ゲームでも同じようなイベントがあったなぁ)

それはテオがアイラにテニスを教えてあげる場面です。元々テオはテニスクラブに所属している設定なので、テニス初心者のアイラと仲良く練習するイベントが起こります。ここでパラメーターを上げておくと、その後開催される建国際でアイラを誘いに来てくれます。

(確かにイベントは重要だけどさぁ……図書室に誘ったのもアタシだけど……これも強制力ってやつ?)

朝日には明星がアイラとイチャイチャしている様に見えて面白くありません。


我慢できなくなった彼女は本を閉じ、席を立ちました。

「どこに行くんだ?」

「うん……本だけ読んでても分からないところがあるから、ジョージ先生に聞きに行こうかと」

「一緒に行こうか?」

「いいよ、一人で行くから」

魔導書だけでは行き詰っていたのは本当です。けれど、自分が嫉妬している事を兄に知られるのが嫌で逃げました。


研究室のあるマリーさんのお店に入ります。朝日はついでに持ってきた小さな椅子を返しました。

「昨日、探していたのはコレではなくて?」

「おや!そうだよ!どこにあったんだい?」

「図書館の側に置いてありましたわ。きっと誰かが見つけて勝手に使っていたのね」

「わざわざ、ありがとうね。何かお礼をしないと、」

「いえ、結構ですわ。それより、ジョージ先生はいらっしゃるかしら?少し魔法についてお聞きしたいのだけれど、」

「ああ、研究室にいるよ」


元牢屋を通り過ぎ、地下にある研究室へと暗い階段を下ります。やっぱり付いて来てもらえばよかったと後悔しながら研究室の扉をノックしました。

コン、コン、コン、

「ジョージ先生、いらっしゃいますか?メイベールです」

「ハイ、空いてますよ」

「しつれいし……」

バタン!

朝日は目の前の光景に驚いて、反射的に扉を閉めてしまいました。

(なに⁉今の⁉)

見たのは薄暗い部屋に溶け込むような黒いローブを着た人物が、おそらくあぐらをかいている姿でした。確信が持てないのはあぐらをかいているのにその体が宙に浮いていたように見えたからです。

「どうしました?」

中からの呼びかけに恐る恐る扉を開き、隙間から覗きます。そこはもう灯りがともされ、ジョージ先生が立っているだけの部屋でした。


「……何をしていらしたの?」

「瞑想ですよ。魔法とはイメージの力ですからね。強いイメージは魔法を強固なものにしてくれますが、とらわれすぎるのもよくない。だから暗い部屋で瞑想し、固定観念を一度取り払っているのです」

言っている事は至極まっとうな気がしますが、人が宙に浮いているのを突然見せられては心臓に悪い。朝日は息を吐き心を落ち着かせてから部屋に入りました。

「今のはフライの魔法ですか?」

「いえ、純粋な魔力放出です。一度魔力が空になるまで放出すると、自分の魔力の総量というものが把握できるのです。総量を把握する事はどの魔法をどれだけ使えるのか分かるという事です。鍛錬の一環ですよ」


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