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7-7

急いでやってきたマリーさんの畑に、人の姿はありませんでした。アイラは今日も園芸グラブに向かったはずです。まだ夕飯の時間までは暫くありますし、帰ったとは思えません。

人を探して納屋の中に入ってみると、マリーさんがいました。こちらが声をかける前に彼女が気付いて言います。

「おや、久しぶりに来てくれたんだね。ちょっと待っておくれよ……」

「あの、今日は畑の手伝いに来たのではなく」

「あぁ、見に来ただけかい?それでも構わないよ……おかしいねぇ」

マリーさんは何かを探しているようで、こちらの話は半分に納屋の中を見渡しています。


そこへエミリーが入ってきました。

「何か探しているんですか?」

「ああ、探してはいるんだけど……嫌だねぇ、どこかで使ってそのまま置いて来ちまったみたいだよ。悪いんだけど、そこの棚の上にある箱を取ってくれるかい?」

小柄なマリーさんが背伸びをして、棚の前で目的の箱を指をさします。

「……」


スラリと背の高いエミリーが言われた箱を取ってあげました。

「ありがとよ。それで?」

マリーさんのにこやかな顔がこちらに向きます。

「今、アイラさんはどこに?」

「テラスの方で花壇の後始末をしてくれてるよ。もうすっかり寒くなってきたからね。春までは殺風景なもんさ。アンタも……」

話の途中でしたが朝日はテラスへと向かいました。


そこではアイラがいつものエプロン姿に着替えて作業していました。どう声をかけようか迷いましたが、彼女の方が気付いて言いました。

「メイベールさん、どうしたんですか?今日も図書館に行ったんじゃ」

「……」

朝日の疑念は確信へと変わっていきます。

「あのさ、アタシ今日図書館に行くって言ったっけ?」

「え?……ええ、ティータイムの時に今日も幽霊騒ぎの事件を調べに行くと言ってませんでした?」

「そう……かもね。ならさ、アタシがここ最近、図書室で本を読んでること何で知ってたの?教室で言ったよね?アタシが眠そうにしてたら、本を読んでいるからだって」

「あの、なんの事を言ってるんですか?えっと、よく分からない、」

彼女は明らかに動揺し始めました。目が泳いでいます。


テオが見せてくれたトリックは雷の適性を持っていないと出来ません。ジャスパーの話によれば雷の適性を持っているのは、ごく限られた一部の者のみです。それはベオルマの血を引く者。アイラはテオと血の繋がった兄妹なので、あのトリックが使えるハズです。雷公女と呼ばれている彼女ならば!


朝日はゆっくり語りました。

「アタシは放課後に、図書室で調べものをしてた。あの窓の下で」

「……や」

「窓の外には小さな椅子が置かれてた」

「…や…て、」

「アレってここの納屋に置かれていたものじゃない?」

「お…が…い」

「なんでこんな事……」

「……クッ!」


がばっ!


アイラがいきなり抱きついてきました。

「ちょ!ちょっと⁉」

「おねがい!この事は黙ってて!お願いします!お願いします!」

抱きついたまま崩れ落ち、膝をついた彼女はすがるようにメイベールを見上げてきます。その顔は紅潮して、今にも泣きだしそうでした。

「どうして、あんな事を?」

「出来心なんです!私はただ見ていただけで、」

朝日は彼女の肩に手をかけました。

「もう分かってるんだよ……本が散らばってたトリックは」

「え?トリック?」

彼女はハッとして言い訳しました。

「違います!私はお兄さんが図書室で本を読んでいる姿を覗いていただけで、事件とは関係ありません!」

「は?イタズラをしてたんじゃ……お兄さん?」

余計な事を口走ってしまった事に気付き、アイラの顔が更に真っ赤になっていきます。


彼女は力いっぱい抱きついて来ました。

「お願いします!今のは聞かなかった事にして!なんでもしますから!お兄さんにだけは言わないで!そ、そうだ!コレ!」

彼女はポケットに手を突っ込むと、ワシ掴みにしたチップを差し出してきました。

「お願いします!これで無かったことにして!」

「ちょ!ちょっと待って!落ち着いて!」


取り乱すアイラをなだめ、ベンチに腰掛けて話を聞きました。どうやら彼女は園芸クラブの仕事が早く終わるとテオの居る図書館に行き、あの窓から読書する彼をコッソリ覗いていただけのようです。

「本当に本の事は関係ないの?」

「ハイ。窓から覗いてただけです」

「なんでそんな事」

「読書の邪魔したら悪いかなって。それに一緒に夕飯食べたかったから、終わるまであそこで待ってたんです」

(なにこの子、かわいい)

アイラは顔を真っ赤にして恥ずかしがりました。どうやら嘘は言っていないようです。


「妹を迷惑に思うお兄ちゃんなんていないよ。これからは一緒に本でも読んだら?」

「いいんですか?」

「アタシに聞かないでよ。本人に聞いてみれば?」

「はい、そうします」

取り乱したアイラでしたが、落ち着いたようです。照れ笑いしてくれました。

(だったら、誰があんな事してるんだろう?)

謎はまだ終わらないようです。


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