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7-6

「せっかくだ。婚約相手の家の事を僕が少し教えてあげよう。テオはこの通り、話すのが得意ではないようだからね」

コホンと咳払いしてジャスパーが話し始めます。

「彼のベオルマ家は戦場で名を馳せてきた。歴代当主は雷帝と呼ばれ、その赤髪を見たらすぐさま撤退しろと言われた程なんだ」

「そんなに強かったのですわね」

「強いなんていうモノじゃない。雷の魔法は反則の様なものだ。卑怯と言ってもいい」

「なぜですの?」

「僕達が得意としている火球で考えてごらん。火球を放たれたらシールドはどう張る?」

「飛んでくる方向へ向けて張りますわ」

「そうだね。雷の場合は?」

「雷は……上から?だったら傘の様に張りますわ」

ジャスパーは首を振りました。

「雷はどこからでも飛んでくるんだ」


テオが捕捉します。

「雷は流れやすいところに流れていく性質がある。例えば水とか」

「そう。人の体には水分、血が巡っている。戦場で雷の魔法を使われると、人から人へ雷が伝わって全員感電する。一瞬の事だからどこから飛んでくるなんて見当もつかないよ」

「だったら全体を覆うようにシールドを張れば、」

「戦っている間ずっとかい?全体にシールドを張るのはそれだけ魔力の消費も大きい。警戒してシールドを張り続ければ、消耗したところを突いて雷の魔法を放たれるだけだ」

「そんなに強い雷の魔法なら、魔導士が全員覚えるのではなくて?」

「そうだね。今でこそ、魔法はそのすべてが明るみにされ、能力の差があるにせよ誰でも好きな魔法を使えるけど、ケント1世が統治する前は雷の魔法はベオルマ家の秘術とされてきたんだ。それにベオルマ家は雷の適性を持っている。適性に合った魔法を使う事が威力に影響を与えるのは分かるだろう?たった一人で戦況をひっくり返してしまうほどなんだ。そんな反則技の魔法だから雷の適性は外に出さぬよう、ベオルマの一族だけで受け継いできた」

「雷の魔法は一般的ではなかったのですわね」

「ケント1世の功績は国の統一に目が行きがちだけど、魔法を一つにまとめ公表したことも大きな業績だよ。力の一極集中を防ぎ、均衡が図られたことは争いの抑止につながった。だから雷の魔法がベオルマ家だけのものとされていた時代なんて、戦場での無双ぶりは凄まじいものだったんだ。ある戦いでは千人以上の兵士を雷帝一人で全滅させたと伝えられている」

「そんなっ!テオ様、酷いですわ」

「オレじゃない」


ジャスパーが笑って言います。

「ヒドイだろう?ベオルマ家は。更にヒドイ歴史を教えてあげよう。元々ベオルマ家はカンロ王国の出なんだ。ケント1世とは敵対関係だった。そのケント1世も中々に酷くてね。遠くから敵味方関係なく火球をバカスカ撃つものだから、流石のベオルマも降伏して寝返ったんだ。仲間を見捨ててヒドイだろう?雷帝も接近戦なら負け知らずだけど、絶大なる魔力にものを言わせた遠距離攻撃にはかなわなかったようだよ。だから魔力の総量は魔導士の素質として重視されるようになった」

「知ってますわ。魔力至上主義というものでしょう?」

「そう。ケステル家が台頭できたのも、そのおかげだね。そしてケントの血筋は総じて魔力量が高かったから国の統一後、一族は栄華を極めた。今度はそれを良しとしないロンド家がベオルマ家と手を組みケントの血筋を根絶やしにすると、ブリトン王国を乗っ取ったんだ。2度も寝返ってヒドイだろう?テオは」

「おい、オレじゃない」

「妹よ、ベオルマ家には気を付けるんだよ」


ジャスパーが呆れるテオを笑って言います。

「ヒドイ歴史の授業はこれくらいにして、引き上げようか」

「あら、犯人を捜さなくてよろしので?」

「言っただろう?雷の適性を持つ者は珍しいんだ。それはベオルマ家がほとんど身内の中だけで婚姻関係を結んできた事に由来する。ほんの一握りしかいないんだ。だからあの子の様に……」

ジャスパーは言葉を止めました。さっきまで笑っていたテオが睨んでいるのです。

「失礼した、テオ。悪気があった訳じゃない。ふざけすぎたようだ」

(あの子?)

メイベールに、ある人物の顔が浮かびました。

「お兄様!テオ様!わたくし急用を思い出しましたので、ここで失礼いたします!」


走り去っていく彼女を見送ってジャスパーが言います。

「ベオルマ家も血筋にはこだわらなくなったからこそ、妹の婚約を受け入れたのだろう?いや、逆か?炎か雷、どちらの適性を持って生まれてきても才能溢れる子に育つだろう。けど、兄として言わせてもらえば妹には家がどうとか背負わせたくはないな。僕だけで十分だ」

「妹に苦労させたくない気持ちは分かる」

「そうか、」

ジャスパーは歩き出しました。

「紅茶でも飲みに行こう。今日は冷える」

「ああ」

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