7-5
図書館の外に出ました。テオがブルっと震えて言います。
「寒いな」
(そうだ!)
朝日は先ほど教えてもらったばかりの魔力操作で手を温めました。
「おに……テオ様、手を出してくださる?」
「なんだ?」
出された手を繋いで歩き出します。
「あったかいでしょ?」
それを見ていたジャスパーがすかさず二人の間に割って入って、繋いでいた手を切ってしまいました。
「メイベール……こんな事の為に魔力操作を教えたんじゃないのだけれどなぁ……」
手を温める為に教わったはずですが、兄の迫力に押されて言い返せません。
彼女は誤魔化しました。
「そ、そういえば、魔力操作でも体外に放出すれば魔法には変わりないのでしょう?校内は魔法禁止なのでは?」
ハァと息をつきジャスパーが応えます。
「魔法が使われたかどうか魔導士なら感知できるだろう?だが、皆が皆、同じように感知できるとは限らない。鈍い者もいれば敏感な者もいる。けれど敏感な者だって、ごく少量の魔力なら目の前で使われない限り魔法が発動したかどうかは分からないよ。それに、火球や水球といった放出系の魔法は魔力が特徴的だから感知しやすいが、それ以外だと気付くのは難しい」
「へー、知りませんでしたわ。やっぱりお兄様は物知りですわね」
「フフ、キミも魔法の授業でこれから本格的に習うだろう」
兄の機嫌をとりつつ、例の窓まで来ました。
「テオ様、お願いします」
頷いた彼がそこにあった小さな椅子に登り、図書館の中を覗きます。長テーブルに誰もいないのを確認して、人差し指を立てました。指に意識を集中させると棚に仕込んできた帯電している本がビビビッっと細かく振動し始めました。彼の指に反応しているのです。十分反応がある事を確認して、人差し指をこちらへ向けてクイっと倒します。本は引っ張られるように飛び出し、見事テーブルの上に乗りました。
「上手くいった」
朝日に椅子を譲ります。彼女が倒れないように明星は支えようとしましたが、伸ばした手がジャスパーにはたかれました。
「どこを触ろうとしている!」
「……」
テオは呆れて一歩下がりました。代わりにジャスパーがメイベールの腰を支えて聞きます。
「どうだい?妹よ、」
「え、ええ……ちゃんと本はテーブルに乗っていますわ」
椅子を降りたメイベールをジャスパーが抱き寄せました。そしてテオから離れる様に後ろへと下がり言います。
「やはりキミが犯人だったんだな!」
「お兄様!何を言っていますの⁉」
「だってそうだろう?今、彼自身がトリックを実演してみせたじゃないか」
テオが呆れて言います。
「どこの世界にわざわざトリックを教えてやる犯人がいるんだ」
「フフ、キミはお人好しだから自首してくれたのかと思ったよ」
「探偵ごっこはやめてくださいまし!」
妹は兄の胸から逃れました。
「冗談は置いておいて、まさか結界の外から魔力操作出来るなんて、思ってもみなかったよ」
「でもこれでまた生徒全員に犯人の可能性が出てきましたわ。最初に逆戻りですわね」
「全員とは限らないよメイベール。雷の適性を持つ生徒に絞ればいいんだ」
「あ、そうでしたわ。なら、その適性を持っている生徒に一人ずつ話を聞きます?」
「うーん、その必要はないかな。実は雷の適性を持つ魔導士はごく限られているんだ。適性は親から子に受け継ぐものだからね。親が雷の適性を備えていなければ、子にも現れない」
「そうなのですか?」
メイベールの問いにテオは頷きました。




